調査研究事業の概要

平成10年度
 当研究所も9年目を迎え、研究所として本来の調査研究である「自主研究」を重点に5件について取り組み、市町村、農協からの要望に基づく、地域農業振興計画などの「共同研究」が2件、関係機関・団体からの「受託研究」13件、「提案企画研究」2件で、合計22件にのぼり、当研究所員と共に、大学・試験場などの「協力研究員」約80名の参加協力をいただくこととなった。
 第一に「自主研究」については、「農地問題研究会」、「農村の高齢化問題研究」、「共同研究の総括」、「農協問題」、「農業・農村の多面的機能に関する市町村の取り組み状況調査」について取り組んだ。「農地問題研究会」については、10カ所にわたる現地調査を実施し、北海道における農地問題について、一定の方向を明らかにした。その研究成果は書籍として出版する。「農村の高齢化問題研究会」については、基礎調査と農村福祉のモデル町村として空知管内栗山町を選定し、地域の実態調査と課題を整理し、中間報告を取りまとめた。更に、平成9年度は高齢農家を対象にアンケート調査および農家調査を実施したほか、リタイアした高齢農家の状況も調査した。今年度は栗山町の補足調査をはじめ、新たに5ヶ所(帯広市、東川町、長沼町、南富良野町、士別市)の市町村及び農協を調査し、高齢化対策の実態と農協の果たすべき役割を明らかにした。「共同研究の総括」については、今までに地域農業振興計画策定に取り組みした全道31ヶ所のうち6ヶ所(知内町、厚沢部町、東川町、清水町、白糠町、訓子府町)を選定し、その後の実践経過の追跡調査を踏まえ、今日、農業・農村が変化する中にあって、今後の地域農業振興計画策定のための基礎調査に関する共同研究のあり方について今年度は検討したが、次年度もこの取り組みを継続する。「農協問題」については、WTO体制下のもとで、農協運営の厳しさを反映して、農協の合併など現実的な対応を余儀なくされている。当研究所では、これらの状況を踏まえ、今後の農協のあるべき姿を提示するため、今年度の調査研究に引き続き、次年度も引き続き取り組んでいく。「農業・農村の多面的機能に関する市町村の取り組み状況調査」については、先に北海道農政部の委託を受けて実施した「農業・農村の多面的機能の評価調査」に関連して、全道212市町村にアンケート調査を実施した。そのねらいは、それぞれの市町村が「農業・農村の多面的機能」をどう捉え、その機能の維持・拡大に関して現在どのように取り組みしているか、今後新たに計画している取り組みなどの現状認識に関する基礎データを収集する目的で調査した。
 第二に「共同研究」については、平成10年度から新規に地域農業振興計画策定の基礎調査を「JAオホーツク網走」、「根室管内における酪農振興計画策定」の2件について取り組み、初年度は、機関調査、アンケート調査を踏まえ、中間報告を実施したが、次年度も継続して取り組んでいく。
 第三に「受託研究」については、北海道開発局、北海道、北海道農業開発公社、JA北海道中央会、ホクレンなどから13件に及ぶ多様な調査研究の依頼を受けて着手し、それぞれ中間報告を含め報告した。その主なものは「新時代酪農ファーム確立調査事業」は、高齢化による飼養戸数の減少、多頭化にともなう環境問題の顕在化などに対応した草地酪農のあり方について、事例調査をもとに報告した。「農業関連物による港湾整備事業効果検討事業」については、本道の基幹産業である農業を対象に、港湾と農業との関わりについて調査し、「北海道農業と港湾の関連性」と「北海道農業の物流効率化」を検討した。今年度は、その第一段階として道東地域の農業関連貨物の流通実態を調査解析し、次年度は将来的な物流関連基盤のあり方について調査する。「平成10年度農業経営管理高度化支援事業委託業務」については、URの農業合意により2000年までの農業保護水準の引き下げが決定され、本道農業も変化に対応した経営体質の強化が求められている。経営体質の強化に当たっては農業者が自らを取り巻く環境や経営実態から判断して「最適な経営の姿」を見つけだし、経営改善を進めるべく指導するが、次年度も継続して取り組む。「公益的・多面的農地の利用調査」については、北海道の総耕地面積は減少傾向にあり、その耕境後退の実態分析を明らかにし、農用地の保全と利用に関する調査を行い報告した。「地域水田農業活性化方策検討支援事業」については、米の価格下落、産地間競争や生産調整が強化される中で、全国及び北海道の稲作潜在生産力を推計し、北海道における今後の水田農業の進むべき方向について提言した。「乳雄子牛肥育経営に関する調査」については、乳雄子牛は酪農経営から派生するもので、避けて通れない問題であることから「乳雄子牛肥育経営」の黒字と赤字経営の実態を調査し、比較分析してその要因を明らかにすべく取り組みし中間報告書を提出したが、次年度も継続して取り組んでいく。
 第四に「提案企画研究」については、北海道立中央農業試験場と共同で取り組んだ「産消交流型産直の発展方向と産地対応のあり方」については、取り組み主体の組織化の度合い、取り扱う農産物の特質などにより類型化、類型毎の課題と発展方向を示すべく検討しているが、消費者の期待とそれに対応した生産体制、農家・農協・自治体の役割分担のあり方についても、次年度継続して取り組む。「大規模経営を支える農業技術の特徴と展開方向」については、水稲の湛水直播体系、野菜・畑作物の収穫等作業の機械化体系、畜産の環境負荷低減技術等の確立が生産現場での喫緊の課題となっており、今年度の調査で、これら新技術の導入事例等を調査し報告した。なお、次年度も継続して取り組む。
 第五に「会報の発行」については、農業の置かれている問題を重視し、時の話題として、機関誌「地域と農業」を年間4回発行した。また、講演会・シンポジウムについては、総会時の特別講演において「福祉事業と農協・行政の役割」をテーマに、栃木県塩野谷農協総合対策室長斉藤栄一氏を招き講演をいただいた。
 第六に「研修会・研究会・講演会」については、当研究所主催の研修会では今年度より水稲、畑作、酪農の3部門別に分けて実施し、基本テーマとして「北海道農業と新しい基本法の制定に向けて」と題して、北海道大学農学部教授太田原高昭氏を招き講演、水稲部門のテーマでは釧路公立大学教授長尾正克氏を招き「北海道の稲作経営問題」を、また、酪農部門では、北海道立根釧農業試験場の岡田直樹科長を招き、「酪農経営と家畜糞尿処理問題」を、更に、畑作部門については、北海道立十勝農業試験場の浦谷孝義科長を招き「コントラ事業の経済効果」について具体的な取り組みの考え方と事例報告のあと、多くの出席者から地域が抱えている問題だけに、活発な意見交換が行われた。なお、この結果については、「地域と農業」特集記事(33号=平成11年春号)として一部を掲載した。また、研究所役職員による自主的なテーマ研究の発表の場として「月例研究会」を開催し、自己研鑽を図るほか、各地で開催された研修会・講演会などへの講師の派遣、学会・研究会での研究所員の報告など当初計画を上回る事業を実施することができた。