調査研究事業の概要

平成11年度
 当研究所は今年10周年目を迎え、研究所として本来の調査研究である「自主研究」を重点に3件について取り組み、市町村、農協からの要望に基づく、地域農業振興計画などの「共同研究」が4件、関係機関・団体からの「受託研究」16件、「提案企画研究」4件で合計27件にのぼり、所内の専任および特別研究員と共に、大学・試験場などの「協力研究員」約80名の参加協力をいただくことになった。
 第一に「自主研究」については、「地域活性化研究」、「共同研究の総括」、「農協問題研究」について取り組んだ。「地域活性化研究」については、地域活性化の研究活動が地域農業や個別経営に対してどのような意味を持つかを明らかにするため、初年度は美唄市の水稲直播研究会の現地研究活動や別海町のマイペース酪農研究会および美瑛町の北瑛バーク堆肥生産組合など地域で生産活動をしているグループを選定するとともに一部調査を実施した。「共同研究の総括」は、今までに地域農業振興計画策定に取り組みした全道31ヶ所のうち10ヶ所(知内町、八雲町、厚沢部町、静内町、東川町、豊富町、清水町、訓子府町、音別町、白糠町)を選定し、その後の実践経過の追跡調査を踏まえ、今日、農業・農村が変貌する中にあって、今後の地域農業振興計画のための基礎調査および振興計画策定に関する市町村・農協と地域農研の共同研究のあり方について総括し、今後のあるべき姿を明らかにした。その研究成果は報告書として会員に配布する。「農協問題研究」についてはWTO体制下のもとで、農協運営の厳しさを反映して、農協の合併など現実的な対応を余儀なくされているが、当研究所では、これらの状況を鑑み、地帯別に全道28ヶ所を選定、経営実態調査を実施し、今後の農協のあるべき姿を検討するため、今年度の調査に引き続き、次年度も取り組んでいく。
 第二に「共同研究」については、平成10年度から継続して地域農業振興計画策定の基礎調査を「新生JAオホーツク網走」、「根室管内における酪農振興計画策定」について取り組みし、農家調査や関係機関の補足調査等を行い報告した。また、平成11年度から新規に地域農業振興計画の策定に取り組んだ「網走市」については「新生オホーツク網走」との整合性を取り報告した。「千歳市」についての取り組みは、初年度は、機関調査、アンケート調査を踏まえ、中間報告を実施したが、次年度も継続して取り組んでいく。
 第三に「受託研究」については、北海道開発局、北海道、北海道農業開発公社、日本草地畜産協会、ホクレン、北海道てん菜協会などから16件に及ぶ多様な調査研究の依頼を受けて着手し、それぞれ中間結果を含め報告した。その主なものは「農業関連貨物の流通形態に関する調査」は、道東地域の農業関連貨物の物流実態を調査解析するとともに農業物流の効率化の視点から考えた港湾の活用方策を検討し報告した。「平成11年度農業経営管理高度化支援事業」については、経営体質の強化に当たっては農業者が自らを取り巻く環境や経営実態から判断して「最適な経営の姿」を見つけだし、経営改善を進めるべく指導することが重要である。今年は簿記記帳者を対象に経営概況、経営収支状況等の調査結果の集計や各種経営分析を実施し報告したが、次年度も継続して取り組む。「コントラクター事業に係る活動実態調査業務」については、委託者、受託者とも農作業に深く関わることから、双方ともに事業採算が取れずに苦慮している実態にある。こうしたことから現在活動している事業者の実態を調査し、中間報告を実施したが、次年度も取り組む。「新世紀対応酪農基本構想等検討業務」については、長期的展望に立った地域酪農の発展のため、居住環境および畜舎周辺環境の整備、離農跡地の活用促進等に配慮しつつ、法人化・協業化等を通じた合理的かつ体系的な草地・畜産関連施設の配置および運営方法についての調査並びに基本構想を策定するが、今年はそのフレームを検討し中間報告をおこなったが、次年度も継続して取り組む。「肉牛経営に関する調査」については、特に乳雄子牛肥育経営は酪農経営から派生する問題で避けて通れない現状にある。このため乳雄子牛の肥育経営実態調査を実施し、赤字と黒字の原因を比較分析するとともに乳雄子牛肥育経営が成り立つ可能性および経営成立必要条件を明らかにし報告した。
 第四に「提案企画研究」については、北海道立中央農業試験場と共同で取り組んだ「産消交流型産直の発展方向と産地対応のあり方」については、取り組み主体の組織化の度合い、取り扱う農産物の特質などにより類型化、類型毎の課題と発展方向を示し、消費者の期待とそれに対応した生産体制、農家・農協・自治体の役割分担のあり方について調査した。「先導的農業技術展開調査」については、水稲・畑作・酪農生産者に普及可能な先導的農業技術についての確立が生産現場での喫緊の課題となっており、これら新技術の導入事例調査と新技術導入による規模拡大経営モデル(稲作、畑作、酪農)を作成し報告した。「てん菜を基幹とした大規模畑作経営の確立条件」および「てん菜直播栽培の導入・定着条件」については、今年アンケート調査と農家経営実態調査を行い中間報告を実施したが、次年度も継続して取り組む。
 第五に「会報の発行」については、農業の置かれている問題を重視し、時の話題として、機関誌「地域と農業」を年間4回発行した。また、講演会・シンポジウムについては、総会時の特別講演において「農村の福祉事業と農協の役割」をテーマに、北海道大学教育学部教授鈴木敏正氏を招き講演をいただいた。
 第六に「研修会・研究会・講演会」については、当研究所主催の研修会では昨年より稲作、畑作、酪農の3部門に分けて実施し、基調講演として「地域農業振興計画の進め方」と題して、酪農学園大学酪農学部講師吉野宣彦氏を招き講演、実践報告として稲作部門はJAひがしかわ営農部長村瀬慎治氏から「JAひがしかわにおける米・野菜の生産・販売戦略」および、美瑛町農林課課長補佐高橋純一氏から「美瑛町における地域農業支援システム」を、また、畑作部門については、JAようてい青果部第二青果課長石崎克典氏から「JAようていにおける野菜振興と販売戦略」および、清水町農林課長阿部一男氏から「清水町における地域農業支援システム」を、更に、酪農部門については、JA雄信内営農部長井上常光氏から「雄信内農協にける酪農振興とその実践について」および、豊富町農林水産課参事岡田俊夫氏から「豊富町における酪農振興計画の意義と役割」と題して具体的実践事例の報告を願ったあと、多くの参加者から地域が抱えている問題だけに、活発な意見交換が行われた。なお、この結果については、「地域と農業」特集記事(36号=平成12年冬号)として一部を掲載した。また、研究所役職員による自主的なテーマ研究の発表の場として「月例研究会」を開催し、自己研鑽を図るほか、各地で開催された研修会・講演会などへの講師の派遣、学会・研究会での研究所員の報告など当初計画を上回る事業を実施することができた。