調査研究事業の概要

平成20年度
   本研究所は、地域農業の振興を支援するなど北海道の基幹産業である農業の安定確立等を図るための実践的な研究機関として、産・学・官が結集して平成2年12月に設立され、本年19年目を迎えております。調査研究事業にあたりましては、大学、試験場などの「協力研究員」の参加協力を得ながら、テーマごとに専門プロジェクトチームを編成し研究活動を行っています。
研究区分としては4区分あります。平成20年度では、自ら課題を設定し進めている「自主研究」が2件、農協などからの要望に基づく地域農業振興計画策定協力・支援などの「共同研究」が1件、また、関係機関・団体から課題を委託された「受託研究」が15件、さらに、助言・アドバイス・講師派遣などコンサル業務的な「診断事業」が2件など、合計20件の事業に取り組んで参りました。これら事業の概要は次のとおりです。
 
     
  1.「自主研究」
 次の2つの課題に取り組みました。
 1)「飲用牛乳の食味(美味しさ)評価要素に関する調査研究」
 昨年ホクレンの受託事業で進め得られた一定研究成果を更に掘り下げる狙いで自主研究で進めました。理化学的特性と食味との相関、さらには、殺菌方法や乳脂肪分の調整による食味への影響などを、道産と関東近県産の市販牛乳を試料として、パネルを使ったブラインド官能試験によって得たデータを分析・検証し、食味判定影響要素を同定しました。
 2)「農業構造の変動と地域・地域農業の維持・発展の検討」
 本研究は3カ年を目処として、平成22年春までに総括し、研究叢書の発行を目指しています。平 成17年に「経営所得安定対策」の担い手要件が明らかにされました。水田地帯や「限界地」を含む中山間地域においては、この要件を満たす経営が必ずしも多いとはいえない中で、地域農業の再構築をはかり、近年の農業危機を乗り越えようと作業受委託組織、農地合理化法人、農業生産法人といった様々なシステムを構築し、地域農業ひいては地域維持に努力している地域が見受けられます。本研究は、こうした取組に着手している地域の動向に着目し、その意義と課題について整理し、北海道の地域及び地域農業の維持・発展方向について考察するのを狙いとしたものです。
 
     
  2.「共同研究」
 農業振興計画策定に係る業務は、JAびえいの「第8次地域農業振興計画策定支援」の1件のみです。組合員の経営の現状と5年後の意向等をアンケート方式で把握、集計・分析を行い、その結果をもとに提言を行いました。
 
     
  3.「受託研究」
 北海道、北海道開発公社、JA北海道中央会、ホクレン、全共連、農産物協会などから次の15件の課題研究の依頼を受けて取り組みました。
 1)「北海道農業を切り開くJAルネッサンスの道」
見出しを基本課題とした北農5連の委託研究であり、本年度以降3カ年で6つの課題研究について取り組むことになっています。本年は(1)「地域経済活性化策としての産業観光の創出」、(2)「地元密着型の『食と農』に対する意識啓発の展開」の2つの課題に取り組みました。
 2)「経営形態別経営動向分析」
 これは、道の委託研究です。平成10年度から「農業経営管理高度化支援事業(定点観測)」として道内農家300戸を選定し、経営データを把握し経営形態別に経営概況および各種経営指標の分析を行っています。本年度からは、昨年からスタートした水田・畑作経営所得安定対策の影響分析も行いました。
 3)「支援システムによる担い手育成・確保対策」
 これは、北海道担い手育成総合支援協議会の委託研究です。前掲の自主研究に関連するテーマです。調査は担い手の育成・確保対策としても効果が高いと考えられる取組にいち早く着手している地域の動向に着目し、その実態把握、類型化、更に当該地域及び地域農業の維持・発展の方向について考察、提示し、全道各地域への波及を目指すものです。
 4)「モデル経営体意向調査」
 これは、担い手育成総合支援協議会の委託調査です。当協議会は、担い手育成・確保アクションプログラム実現のために必要な活動などを地域の実情に応じて取り進めています。
その事業の内容は「担い手アクションサポート事業」と「担い手経営革新促進事業」の2つの事業から構成されています。その中で本研究内容は、後者の「担い手経営革新促進事業」に係る「モデル経営体等における経営動向把握調査」および「水田・畑作経営所得安定対策導入等に係る影響分析と課題整理」を担当しました。
 5)「稲作最適規模の試算と稲作生産コスト低減の方向に関する調査・研究」
 本研究は北海道農産物協会の委託研究です。昨年からの2カ年継続事業です。水田地帯の地域農業を維持・向上させ、将来展望を見通す上から、生産コスト格差の要因とそのコスト低減の可能性の検討、米生産規模(専業農家下限規模と耕作限界規模)と規模別コストの考察を行いました。
 6)「長沼町における営農集団組織化及び農地流動化等の方向性に関する検討・提言」
 これは、JAながぬまの委託研究で、昨年からの2カ年事業です。長沼町では、平成22年度から「南長沼地区」の国営農地再編整備事業が実施されます。そこで、今後の担い手育成にあたって、営農集団のあり方や農地保有合理化事業の推進方向を検討することが求められるため、昨年は課題の抽出を行い、本年は町内外の補足調査や事例調査等を行い、今後の営農集団の運営および合理化事業の支援方策、基盤整備が果たすべき役割などについて整理しました。
 7)「農林水産物・食品地域ブランド化プロデュース事業」
 これは、JAオホーツク網走の委託研究です。当管内農業振興策の一環として、黒毛和牛を対象とした「農林水産物・食品地域ブランド化支援事業」(国の補助事業、3カ年事業)の取組を開始し、この事業を軌道にのせることにより他農産物への波及効果を狙いとしています。本研究所は、JAが当該事業に取り組むにあたりプロデュースを担当しました。引き続き21年度も担当します。
 8)「重点農協における自動車関連部門の利用状況に関する調査業務」
 これはホクレンの委託研究です。原油価格の高騰は、インフレの誘発、消費者の買い控えの発生などガソリンスタンドを取り巻く情勢は、価格転嫁できにくい環境下にあって業績悪化を招く中、コスト低減策としてのセルフ化の波と相まって厳しい局面を迎えており、経営改善の打開策として関連商品の販売強化が喫緊の課題となっています。ここでいう関連商品とは、オイル交換、洗車などをはじめとして、自動車販売、ローン、保険など自動車に関連する商品すべてを指しています。そこで、これら関連商品の販売強化に取り組もうとしている重点農協を対象として、SS、JAバンク、JA共済利用者などへアンケート調査を実施し、それらの利用状況や利用率がどのような指標と関係しているのかを明らかにし、販売強化策の方向性について検討しました。
 9)「農業(酪農・ハウス栽培施設)におけるエネルギー利用実態調査」
 これもホクレンの委託研究です。昨年、調査設計と調査対象農家の選定、予備調査を行ったのに引
き続き本調査を行い、エネルギー利用の実態を明らかにしました。地球温暖化問題や化石燃料枯渇問題などから、世界的に石油に代わる新エネルギーの開発が急ピッチで進められています。実用化・普及にはまだ期間を要しますが、新エネルギーの農業分野での効率的な利用方策の検討も平行して検討することは重要です。それには、現状のエネルギー利用の実態把握が不可欠です。そこで、当研究は、酪農およびハウス施設栽培における石油・電気などのエネルギー利用実態を調査し、新エネルギーへの転換にあたって効率的なエネルギー利用を推進する上での課題を整理しました。
 10)「組合員次世代へのJAおよびJA共済の情報提供に係る意向調査研究」
 これは全共連の委託調査です。近年顕著に現れている農協離れのなかで、組合員次世代対策に取り組む必要性が高まっています。先に進めた研究では、推進体制に焦点をあてて、組合員次世代の情報蓄積と活用がさしせまった課題であることが明らかになりました。そこで、情報提供と仕組みの開発が必要であるとの観点から、組合員次世代を対象としたアンケート調査を行い、得られたデータから情報提供に係る評価や要望を把握し、その方向性を考察しました。
 11)「都市型農協における組合員次世代への共済推進の状況とその対策に係る調査研究」
 これも全共連の委託研究です。共済推進では、保有契約が伸び悩んでいる中核世代(20〜50歳代)へ推進強化が柱となっています。しかし、これまでの研究は、組合員次世代の意向に焦点をあて分析が行なわれてきましたが、それではJAとして組合員次世代に対し実際にどれほど推進がなされてきたか、JA推進員からみた推進課題が把握・整理されているとは言い難いことなどから、本研究は札幌市農協を事例として、その推進体制や実態をアンケート・ヒアリング調査から問題の掘り起こしを行い、その対策に関しても考察しました。
 12)「バイオエタノール生産におけるLCAと地域経済効果の計測」
これは、北海道バイオエタノール(株)の委託研究です。十勝清水町にエタノール生産プラントが建設され、平成21年3月操業開始となっています。この操業は、単なる余剰農産物の解消ではなく、環境改善や耕作地の利用率向上のほか、産業連関的な地域経済活性化につながるものとして期待されています。本研究は、生産工場の操業計画データをもとにエタノール生産フローの詳細なトレースにより、原料生産から製品の輸送にいたるまでの投入されるエネルギーと副次的生産物と主産物として排出される物量とエネルギーとの総合収支をライフサイクルアセスメント手法により対比的に検証することと、加えて、費用の投入と産出価値を地域の「産業連関表」に導入・付加して地域産業に及ぼす波及効果を明らかにしました。
 13)「北見自治区内地域担い手・農地実態調査支援」
これは、「北見市農業振興会議北見自治区部会」の委託研究です。農地流動化対策を今後どのように進めていくかは喫緊の課題であり、北見自治区内の経営体における経営規模及び農業後掲者確保の現状及び将来(5年後)動向について組合員の意向調査を行い、将来予想される農業後継者確保の見通しと農地流動化への課題について整理しました。
 14)「水田・畑作経営所得安定対策と農地保有合理化事業に関する調査」
北海道は都府県に比較し、生産組織化・法人化が進展していません。しかし、後継者のいない高齢農家が多く中核的な担い手が限定される地域もあり、そのような地域では耕作放棄が懸念される農地を複数の農家が結集して、農地の受け皿となる組織が求められています。そこで本研究では、地域農業の維持・発展に寄与している組織・法人の実態調査を行い、それが果たす役割、とりわけ農地の流動化や集積に貢献する可能性について検討しました。
 15)「固体発酵を用いたオカラの家畜飼料化可能性調査(部分委託)」
 これは、(株)新聞協同運輸の委託研究です。豆腐製造過程で発生するオカラ(豆腐糟)は、副食材として、あるいは家畜飼料として利用されていますが、近年は食生活の変化等により、その多くは産業廃棄物となっています。そこで、これを低コストで発酵・乾燥させ家畜飼料化するプラント開発を行うため、試作製造品の市場性や家畜の嗜好性確認の調査を要請され、養豚農家、肉用牛飼養農家を対象として、ヒアリング調査を行いました。
 
     
  4.「診断事業」
 次の2件に取り組みました。

 1)「農業・農協問題懇話会」への支援
 北海道農業協同組合学校が運営するみだし懇話会に関するコンサルテーションを主とし、要請に応じて研究者の斡旋や研修会への講師派遣等を継続事業として行っています。
 2)「空知管内の農業振興と健全なJA運営の展開に向けた取り組みに係る情報提供並びに助言・指導業務」
 平成18年度に実施した「空知農業の現状とその課題」に係る調査研究の成果を基軸として、管内農協組合長会の諮問機関である「空知の農業経営と農協運営を考える会」(以下「空知農業を考える会」)が行う振興方策の策定・実践の取り組みに対し、要請に基づき情報提供並びに研究者紹介や研修会講師派遣等のコンサル業務を19年、20年と継続して行いました。   
 
     
  5.「会報の発行、研修会・研究会・講演会の開催」
 機関誌「地域と農業」は4回発行しました。総会時の特別講演では、酪農学園大学の長谷川豊教授により「担い手育成に関する私の提言―実践的教育体験から―」をテーマにご講演をいただき、また、本研究所主催の農業総合研修会では、宮田勇新篠津村農業協同組合代表理事組合長(前全国農業協同組合中央会会長)により「わが農協運動を振り返って―北海道農業への提言―」と題してご講演をいただくなど、それぞれに多くの参加者がありました。
 さらに、各地で開催された研修会・講演会などへの講師の派遣、学会・研究会での研究員の報告など、多くの事業を実施いたしました。 
 
     


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