調査研究事業の概要

平成21年度
 
 本研究所は、地域農業の振興を支援するなど北海道の基幹産業である農業の安定確立等を図るための実践的な研究機関として、産・学・官が結集して平成2年12月に設立され本年20年目を迎えています。調査研究事業にあたりましては、大学、試験場などの「協力研究員」の参加協力を得ながら、テーマごとに専門プロジェクトチームを編成し研究活動を行っています。 研究区分としては4区分あります。平成21年度では、自ら課題を設定し進めている「自主研究」が2件、農協などからの要望に基づく地域農業振興計画策定協力・支援などの「共同研究」が3件、また、関係機関・団体から課題を委託された「受託研究」が14件、さらに、助言・アドバイス・講師派遣などコンサル業務的な「診断事業」が2件など、合計21件の事業に取り組んで参りました。これら事業の概要は次のとおりです。
 
     
 
1.「自主研究」
 次の2つの課題に取り組みました。
1)「農業構造の変動と地域・地域農業の維持・発展の検討」 
 本研究は3カ年を目処として、平成22年に総括し研究叢書の発行を目指しています。北海道の農業は農産物の輸入自由化、それに伴う農産物価格の下落の影響を受けて、農家数の激減、過疎化の進行、農地面積の減少などといった厳しい局面に直面しています。その中にあって、こうした危機を乗り越えようと作業受託組織、農地保有合理化法人、農地の受け皿となる農業生産法人などといった様々な支援システムを構築し、地域農業ひいては地域社会を維持しようと努めている市町村が散見されます。この研究では、こうした地域農業支援システムの構築に着手している市町村ならび農協に着目し、その意義と課題について整理し、後退局面にあり、かつ「限界地」を含む北海道における地域および地域農業の維持・発展方向について考察しています。
2)「北海道農業の軌跡にみる発展へのベクトル研究」
 北海道の農業史につきましては、昭和35(1960)年まで「北海道農業発達史」(1963年 北海道立総合経済研究所編)で整理されていますが、それ以降の全体総論的な歴史を記したものについてはみられません。そこで、今後3年以内の発刊を目指しその続編の編纂を自主研究として進めているものです。
 
     
 
2.「共同研究」
 次の3課題に取り組みました。
1)「岩見沢市農業実態基礎調査」
 これは、岩見沢市の委託調査研究です。岩見沢市は市町村合併後3年を経過し、岩見沢農業を取り巻く情勢は、高齢化、後継者不足などに加え、水田・畑作経営所得安定対策を始めとする農政改革の進展、生産資材価格の高騰、農地政策の転換など、大きな転換期を迎えていることから、市としては、今後、適切な地域農業振興策を実施するための基礎データを得て、農業振興ビジョンの策定をすすめる予定であり、本研究所はその基礎調査(農業者意向調査、経営実態調査等)を担当しました。
2)「(仮称)千歳市新農業振興計画策定業務(事前調査)」
 本調査研究は、千歳市の平成23年度を初年度とする「(仮称)千歳市新農業振興計画基本構想・基本計画(平成23年度〜平成32年度)」の策定に向けた事前調査として、千歳市農業の現状と課題整理、農家経営の現状と将来に向けた意向調査等の実態基礎調査をすすめ分析を行いました。
3)「農業振興計画策定支援」
 本調査研究は、JAこしみずの中期3カ年(平成22年度〜平成24年度)農業振興計画策定のため、その基礎調査を行い、農家経営の現状と将来に向けた意向調査・分析により課題整理し、「新たな地域農業の展開方向」を提言しました 。
 
     
 
3.「受託研究」
 北海道担い手育成総合支援協議会、JA北海道中央会、ホクレン、全共連、農産物協会などからの委託事業として次の14課題に取り組みました。
1)「北海道農業を切り拓くJAルネッサンス」
 これは、見出しを基本課題とする北農5連の委託研究です。平成20年度〜22年度の3カ年にわたり、次
の6課題を設定し鋭意取り組んでおります。
〔調査研究課題〕
  (20年度)
    地域経済活性化策としての産業観光の創出
    地元密着型の食と農に対する意識啓発の展開
  (21年度)
    田・畑作経営所得安定対策の組合員経営に及ぼす影響と行動対応
    個別経営体を支援するシステムの組織的展開とJAの役割
  (22年度)
    新販路開拓と流通戦略の再構築
    組合員・家族の高齢者福祉の構築方向とJAの役割評価
 本年は、前掲(21年度)の2課題に取り組みました。
2)「北海道産農産物の新たな需要創出(輸出拡大)に関する調査研究」
 本課題は一般社団法人北海道農産物協会の委託調査研究です。 世界の食料需給は人口増加とBRICSなどの新興国の経済成長を背景として緩和から構造的な逼迫に急転換する情勢下にあります。一方、我が国をみると、将来的には人口の減少による需要減退の方向へと移行することが予測されています。こうした環境を踏まえるならば、今後、道産農畜産物の生産基盤の維持・拡大による増産をはかるためには海外輸出など新たな需要を創出し販売指定席を確保することが必要不可欠です。本調査研究では、今後3カ年を目処に調査対象地域(候補:台湾、香港、シンガポール、タイ等)の輸入検疫条件等検査手続き・手順や売買取引上の法的規制・要件など、既往の関係資料・データを収集するとともに、現地大手流通業者等へのヒアリング調査による求められる品目(商品)とその期待量、売買取引に関する取引要件と阻害要因等を把握・精査することによって販路開拓・拡大の可能性を探り提言するものです。なお、本年度は調査対象地域を台湾としました。
3)「3Q訪問プロジェクトの活用事例と次世代対策としての有用性」
 これは、全共連の委託研究です。昨今の農業を取り巻く情勢が厳しさを増すなかで、JA共済は特色でもある「ひと・いえ・くるま」の充実ラインアップを充実させ、生活総合保障を提供し、保障提供活動を通じて地域社会づくりに寄与し、組合員・利用者をはじめとした地域の人々との信頼関係を構築しようと努めています。この信頼関係をさらに強くし、また次世代層などのニューパートナーとの仲間づくりを積極的にすすめる方針は、農協のLAを中心とした3Q訪問活動にみられ、新規契約・新規加入を獲得、あるいは准組合員対策や組合員次世代対策を大いに意識した取り組みであると考えられます。しかし、地域間、あるいはJA間における取り組みの格差など、いくつかの課題が指摘されています。本調査では、JA共済において昨今取り組まれている、3Q訪問プロジェクトの次世代対策としての有用性を検証することを課題として、LAへのアンケート調査や昨年度の目標達成農協へのヒアリング調査から接近を試みました。
4)「平成21年度北海道担い手育成支援協議会委託事業」(地域農業支援システム調査)
 我が国の主要な食料生産・供給地域である本道においても、農業従事者の高齢化や後継者不足による担い手の減少が急速に進みつつある中で、耕作放棄地の発生、集落機能の低下などから、「今後の地域の維持が可能なのか」、あるいは自家労働力の限界、機械・施設への過剰投資、赤字部門の存在、新規投資への余力がない、飛び地による非効率などの課題から、「今後の経営の発展が可能なのか」といったことが懸念される地域がみられています。本調査事業は、担い手の育成・確保対策としても効果が高いと考えられる取り組みにいち早く着手している地域の動向に着目。その実態を把握、類型化、さらに、地域及び地域農業の維持・発展の方向についての考察、提示によって全道各地域へのその波及を目指すものです。
5)「ほくでん生協組合員における系統燃料自動車事業の利用状況に関する調査業務」
 これは、ホクレンの委託調査です。わが国石油業界は規制緩和および低経済成長に伴って再編を余儀なくされ、現在、これまでとは意識を異にしたSSの生き残り策が求められています。系統燃料自動車事業についても、平成15(2003)年の第23回JA大会決議に基づいてJA経済事業改革中央本部が同年12月に発表した経済事業改革指針の中で、Aコープ・機械センター・SS等の拠点型事業の収支改善・競争力強化が目標のひとつとして挙げられています。本調査研究では、員外一般顧客における系統燃料自動車事業の利用状況および意識について把握すること、またほくでん生協組合員における系統燃料自動車事業の利用率低下の背景を探ることを目的として、ほくでん生協組合員を対象とした利用状況・意識調査を行いました。
6)「バイオエタノール生産におけるLCAと地域経済効果の計測」
 これは、JAグループが中心となって設立した「北海道バイオエタノール株式会社」の委託調査研究です。 本調査研究は2年目であり、本格的バイオエタノール生産工場の創業にあたり、具体的な実績数値(前年は創業計画段階の仮置き数値で分析しました。)を基礎とし、生産工程の詳細なトレースにより、石油量およびエネルギーと主産物(バイオエタノール)および副次的生産物として生産される物量とエネルギーとの総合収支をLCA(ライフサイクルアセスメント)手法により対比検証するとともに、併せて、費用の投入と算出価値を産業連関表に導入・付加して地域農業に及ぼす波及効果なども明らかにするものです。
7)「青果物輸送における環境対応型包装資材の調査研究」
 これは、ホクレンの委託調査研究であり、平成21年度〜平成22年度の2カ年にわたり取組ます。野菜の物流には出荷包装容器が必要ですが、消費地サイドでは空き包装容器の削減や省力化等の環境負荷低減が求められております。中でもブロッコリー用の発泡箱は廃棄処理の困難さに加え、環境負荷も大きいため、代替品を求める声が寄せられています。また食用ゆりについては、品傷みと乾燥を防ぐためオガクスを充填するとともに耐水性の高いカーテンコートダンボールを使用しており、製造コスト・安全性の観点からダンボールメーカーでは数年後には製造を中止する動きがあります。以上から本調査研究では、両品目の鮮度保持機能を維持・向上させることが可能な新たな包装資材を提案することを目的として、本年は流通ルートの調査を行うとともに実験室段階のデータ収集など基礎調査を行い、平成22年度に本格的な実証試験を行う計画です。
8)「農業金融に関する動向調査・研究」
 これは、北海道信連の委託調査研究です。農業における環境変化(担い手の法人化・大型化、他行・大手企業の農業参入、担保不足、CDSによる保証問題等)に対する、信連、JA(組合員)の農業融資における融資推進・体制・管理のあり方、情報提供等の問題点等に対する解決方策について、融資のあり方等について意向調査を含んで追求するものです。 特に、道外企業や他行が近年徐々に農業界に参入し始めてきており、その動向と影響等を探るとともに、信連からの融資にかかるJAへの機能還元のあり方についても研究しています。
9)「農林水産物・食品地域ブランド化プロデュース事業」
 JAオホーツク網走は、管内の農業所得の維持・確保、農畜産物の生産安定化を目指しており、平成20年度を初年度として、管内農業振興策の一環として黒毛和牛を対象とした「農林水産物・食品地域ブランド化支援事業(国の補助事業、3ヵ年事業)」の取り組みを開始、この事業を軌道にのせることにより他農産物への波及効果をも狙っています。本研究所は、JAが当該事業に取り組むにあたりプロデュースを担当しています。
10)「大規模水田作経営管理手法の確立及び稲作経営の実態調査・研究」
 これは、一般社団法人北海道農産物協会の委託調査研究であり、今後2カ年にわたり取り組みます。米穀の流通が自由化される中で、その需給は恒常的に緩和された状況で推移し価格は低迷が続いています。その中にあって複合経営による収益確保への取り組みとともに、稲作生産コストの低減を図ることなどが農業経営上の大きな課題となっています。水田地帯の地域農業を維持・向上させ将来展望を切り開くために、規模拡大を中心とする稲作 生産コスト低減の可能性等について考察しています。
11)「新食料・農業・農村基本計画に関する研究」
 これはJA北海道中央会の委託研究です。わが国の食料基地として重要な役割を果たしてきた北海道農業を維持しさらに発展させていくためには、専業的農業者を中心とする分厚い担い手の存在とその後継者の確保・育成が必須です。そのためには合理的な農業所得の確保が大前提となり、そのために必要な施策・支援が政府の予算の措置あるいはJAの取り組みが必要となります。本研究は、新たな食料・農業・農村基本計画策定に当たり、基本計画が具備すべき事項や枠組みについて、北海道の立場から具体的に検討し提案するものです。
12)「エチレン農薬登録(特定農薬登録)申請書策定支援」  
 この事業は、北海道馬鈴しょ協議会から、馬鈴しょ萌芽防止剤としてのエチレンについて、所管する農水省に農薬登録申請するに当たり、策定支援依頼を受けたものです。 本研究所の主な業務の内容は、エチレンを対象物として、登録申請に必要な試験成績書・文献・資料等の入手・整理です。
13)「平成21年度北海道担い手育成支援協議会委託事業」(生産費データ分析) 
 北海道担い手育成総合支援協議会は、担い手育成・確保アクションプログラム実現のために必要な活動等を地域の実情に応じて取りすすめており、その事業の内容は、「担い手アクションサポート事業」として、@スキルアップ支援活動 A地域営農システム確立活動 B集中的な技術・営農支援 C新たな人材の育成・確保活動 D担い手育成確保・普及支援活動 E農業経営改善 計画等作成指導活動、およびF農地の利用調整活動、「担い手経営革新促進事業」として、G経営革新モデルの実践事業 H特定対象農産物の生産支援事業、および I先進的小麦生産等支援事業 などです。その中で本研究所の業務の内容は、「経営革新モデルの実践事業」におけるモデル経営体等の生産費調査データ(平成20年度)の分析を行いました。
14)「SS店頭会員および配送客の居住分布からみた顧客方策」
 これはホクレンの委託調査研究です。本調査研究では(株)ホクレン油機サービスおよびJAいしかりを事例として、系統燃料自動車事業の強化を目的としたSS店頭会員および灯油配送客の顧客分析を行いました。その際、GISを援用して、空間的解析およびその結果の可視化を試みました。
 
     
 
4.「診断事業」
 次の2件に取り組みました。

 1)「農業・農協問題懇話会」への支援
 北海道農業協同組合学校が、研修メニュ−の充実、新規研修企画など、教育研修内容の充実を 図るため、平成17年度に「農業・農協問題研究会」を発足させ、北海道大学などと連携をとり継続事業として取り進めてきました。この農協学校に対して、@研修視察先などの支援 A企画運営などにかかるコンサルテーション B大学や研究機関研究者の懇話会参画への手配斡旋 C研究資料の提供 Dその他関連する事項への助言並びに支援などを行うものです。
 2)「空知管内の農業振興と健全なJA運営の展開に向けた取組に係る情報提供並びに講師紹介・派遣業務」
 空知管内JAグループが、激動する情勢変化等を的確に把握、認識を共有し、これらをもとにした地域農業振興方策の樹立に関する研究と内包する地域課題を整理し、組合員の安定した農業経営と健全なJA運営のあり方に関する研究等を進めるにあたり、本研究所の役割は、これら現地スタッフを主体とする共同研究の取組に対し、本研究所協力研究員の研究者ネットワーク等を活用し、関連する情報提供と現地主催研修会等への講師紹介・派遣を行うことを主な業務としています。  
 
     
 
5.「会報の発行、研修会・研究会・講演会の開催」
 機関誌「地域と農業」は4回発行しました。総会時(平成21年5月26日開催)の特別講演では、本研究所前所長太田原高明氏(現顧問)により「北海道農業のポジションとベクトル」というテーマでご北海道農業へのご提言をいただきました。また、その他本研究所主催といたしましては、7月2日に北農5連委託研究業務の成果の一環として、「グリーンツーリズムIN北海道」と銘打ちまして講演会を開催し、基調講演として、千葉大学大学院園芸学科教授大江靖男氏に「わが国農村ツーリズムの現状と課題―国際比較の観点から」というテーマでご講演をいただき、また併せて、中央農業総合研究センターの飯坂正宏氏には『モノからヒト、ココロの交流へー「消費されない農村」のために』、北海道武蔵女子短期大学経済学科准教授松木靖氏には「農村ツーリズムにおける農業と観光産業の連携の可能性―アンケート調査から」というテーマでそれぞれ研究報告をいただきました。恒例の農業総合研修会(平成22年3月9日開催)では、NHK解説主幹の合瀬宏毅氏をお招きし、「北海道の活性化に向けた農業の役割」と題してご講演をいただくなど、それぞれに多くの参加者がありました。
 さらに、各地で開催された研修会・講演会などへ講師の派遣、学会・研究会での研究員報告など、多くの事業を実施いたしました。 
 
     


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