調査研究事業の概要

平成28年度
 
 本研究所は、地域農業の振興を支援するなど北海道の基幹産業である農業の安定確立等を図るための実践的な研究機関として、産・学・官が結集して平成2年12月に設立され、本年で27年目を迎えております。
 調査研究事業にあたりましては、大学、試験場などの「協力研究員」の参加協力を得ながら、テーマごとに専門研究班を編成し研究活動を行っております。
 平成28年度の調査研究事業は、自ら課題を設定し進めている「自主研究」が4件、官庁・関係機関・団体から課題を委託された「受託研究」が13件、の合計17件の事業に取り組みました。
 これら事業の概要は次のとおりです。
 
     
 
1.「自主研究」
 「『生消』提携をベースとした力強い北海道農業の構築を目指して」を基本テーマに次の4件に取り組みました。
(1) 「研究課題1 北海道における担い手確保問題と集落機能」
  後継者・担い手確保問題は、農地利用や農村社会問題、過疎問題、ひいては市町村のあり方などにも関連する課題です。本研究は、これまでに取り組んできた「本道における人・農地問題」、「人と農地にかかわる集落問題対策」を引き継ぎつつ、担い手確保と集落機能など地域的・集団機能との関連性について明らかにするものです。専門家による研究班を設置し、有識者の事例報告を交えた意見交換を行い、集落問題対策等の政策提言に資する取りまとめを行い、内容については当研究所機関誌で報告しました。
(2) 「研究課題2 TPPによる北海道農業・地域への影響」
  米国トランプ政権の誕生により、TPPは発効しない公算が強まっていますが、新たに日米二国間交渉へのシフトや、日・EUのEPA交渉時のベースラインとなる不安や疑念がつきまといます。
 そこで本研究では、TPPレベルの貿易自由化が北海道農業に与える影響を把握するとともに、北海道経済全体に与える経済的デメリットについて、地域産業連関分析により影響度を明らかにしました。さらに、北海道の食料生産減少が、日本経済全体に及ぼす経済的損失についても、日本全体の地域間産業連関分析を行い、それら検証結果を報告書として取りまとめました。
(3) 「研究課題3 地域の生活インフラ機能としてのJA」
  本研究は、農村生活の中で様々な展開を見せてきたJAの諸事業がいかに生活インフラ機能と関連しているかを析出し、その機能発揮がJAの「組合運営・経営」にいかなる影響を与えているかを検討するとともに、准組合員問題や今後の方向性について考察を行うもので、複数年の調査研究を計画しています。本年度は、南空知地域を対象として、地域としての生活基盤の実態等について基礎調査を実施しました。
(4) 「研究課題4 北海道における雇用労働逼迫下での地域農業構造の変化に関する調査」
  雇用労働力の導入を前提とした大規模経営が展開する地域において、雇用労働力の確保が困難になる中で、経営内部にどのような変化が起こりつつあるのかを明らかにすることを課題として調査研究を行いました。
 このような地域では、雇用労働力が年間を通じて過不足のないよう作付け品目の変化が進んでいること、そして集出荷体制の再整備や野菜産地としてのロット確保にも影響を及ぼしている課題等をとりまとめ、食農資源経済学会にて報告しました。
 
     
 
2.「受託研究」
 次の13件に取り組みました。
(1) 「農業所得20%増大の実現に向けた具体的実践方策の研究」
 これは北農5連の委託課題です。
 北海道農業の担い手が、将来にわたり意欲と希望を持って営農を継続していくとともに、今後とも我が国の食料供給基地を担い、持続可能な力強い農業を展開していくことが出来るようにするため、農業所得20%増大の実現に向けた組合員・JA・連合会が取り組むべき課題について調査研究を行い、具体的実践方策としての提言を取りまとめました。
(2) 「担い手が資源や技術をフル活用できる環境整備(労働力サポート)の研究」
 これも北農5連の委託課題です。
 雇用労働力の給源が非常に脆弱化する環境下、生産現場においては、現状の労働力サポート体制の確保・継続が強く求められています。現在労働力不足の補完としての役割を担っている、外国人技能実習生の営農形態・受入形態別の効果や課題、高齢者労働力の利用拡大の可能性、労働支援組織の機械オペレーターの確保養成支援等について、JAや連合会が果たすべき役割を調査研究し報告書に取りまとめました。
(3) 「ICT活用によるスマート農業の実態と農業強化への展望に関する調査研究」
 これは一般社団法人北海道農産物協会の委託課題です。
 近年急速にICT化の進展が見られる領域に焦点を当てて、事例実態調査による動向や進展状況の把握を行い、次世代農業のあり方と今後の展望を明らかにするものです。2か年事業として、昨年度は、スマート農業が求められる背景と農業へのICT化の全体像の整理や実態調査を実施しました。本年度も事例調査や普及推進状況を調査し、スマート農業の今後の展望について、報告書に取りまとめました。
(4) 「農産物流通構造の多様化と今日的意義に関する調査研究」
 これも一般社団法人北海道農産物協会の委託課題です。
 市場・系統外流通に含まれる流通企業の中で、生産者の現状、ターゲット層である消費者の欲求、販売者が求めるサービスなどを考えてビジネスを展開する地域商社としての企業に注目し、具体的な農産物流通構造の多様化に取り組んでいる事例を府県・道内で調査し、農産物流通構造の解明と、その意義を明らかにするものです。2か年事業とし、本年度は、農産物流通をめぐる情勢や課題を整理するとともに、道内外における農産物流通システムの事例調査を実施し、中間報告書として取りまとめました。
(5) 「でん粉原料用馬鈴しょの収量低減要因解析事業」
 北海道馬鈴しょ生産安定基金協会の委託課題です。
 でん粉原料用馬鈴しょの主要生産現場における、生産栽培履歴、病害虫の発生状況、土壌化学性分析調査を実施し、早枯枯凋症状などの収量低減要因を明らかにする調査研究です。多変量解析により、各種土壌分析項目及び災害要因、早枯要因、シストセンチュウ要因等の収量低減に及ぼす影響の総合的な調査解析を図り、収量低減要因を識別し、その対策等を報告書に取りまとめました。
(6) 「北海道産雑豆における豆類価格安定事業の役割に関する調査研究」
 北海道豆類価格安定基金協会の委託課題です。
 近年の北海道産雑豆におけるいんげん類の生産動向の把握と各種の需給データをもとに、品質・流通・価格事情の分析を通じて、豆類価格安定事業が本道の豆類作付けと消費の安定に果たしてきた役割を明らかにするとともに、主産地の現地実態調査により、生産技術・栽培技術の検討を行い、道産いんげん類の安定生産・供給確保に係る調査結果を報告書に取りまとめました。
(7) 「地域農業・農村戦略策定推進事業委託業務」
 北海道庁の委託課題です。
 昨年度、本道の農業・農村の持つ潜在力を最大限に発揮し、農村地域における所得向上を図るため、経営形態の異なる6市町村の地域資源分析や取組評価を実施しましたが、本年度も地域での施策推進をサポートするとともに、今後の農業・農村振興戦略の基本方向や6地域の取組事例集の作成を行い、地域農業の活性化や農村戦略策定の強化推進に取り組みました。
(8) 「てん菜栽培における作業支援に関する調査事業」
 ホクレンの委託課題です。
 近年、高齢化等により農業労働力の不足が切実な課題となっています。特にてん菜栽培は育苗作業など重作業が多く、そのことがてん菜作付面積減少に一層拍車をかけています。昨年度実施したアンケート調査に基づき、てん菜作業支援を行っている代表的な共同利用組織の事例調査や、新技術の活用事例を調査し、てん菜栽培に係る各種作業軽減・効率的作業支援内容について報告書に取りまとめました。
(9) 「系統農機・自動車整備工場に関する調査」
 ホクレンからの委託課題です。
 全道の農協・系統関連会社の農機・自動車整備事業の運営状況にかかるアンケート調査を実施し、前回調査結果との対比も踏まえた集計分析を行い、事業運営の健全化に資する検討資料を整理しました。
(10) 「土地利用型農業の経営継承問題に関わる調査」
 公益財団法人北海道農業公社の委託課題です。
 農業における担い手確保には、農業者子弟だけではなく、外部からの人材確保がより一層求められています。本調査では、道内における水田・畑作・酪農地帯における新規参入者確保に関する市町村・JAの取り組み状況把握と農業者の経営継承に対する意向調査を行い、円滑な農業経営継承に向け準備すべき事項等を検討し報告書に取りまとめました。
(11) 「JA職員の定着化促進ならびにJAに求められる就労環境に関する調査」
 JAカレッジからの委託課題です。
 道内JAにおける職員の採用・雇用状況、ならびに就労環境等のアンケート調査・現地調査から、実態や課題の分析を行い、JA職員の定着化促進とJAに求められる就労環境について報告書を取りまとめました。
(12) 「ホクレン百年史部分執筆業務」
 ホクレンの委託課題です。
 ホクレン百年史編纂に際し、前回九十年史以降の社会情勢・農業情勢や系統組織を取り巻く情勢の概観部分、ならびにホクレン事業のこの十年間の総括部分について執筆取りまとめを担当するものです。2か年事業とし、本年度は、直近10年の社会情勢・農業情勢等の概観部分に関する情報収集・年表整理を行い、粗原稿をとりまとめました。
(13) 「土壌病害蔓延防止のための効果的・効率的なてん菜輸送体制の確立」
 農研機構生研支援センターの委託課題です。
 ホクレン・道総研十勝農業試験場との共同研究事業とし、次年度以降予定している欧州製除土積込機の導入実証試験に向けて、現状の集荷輸送体系下におけるてん菜圃場の土質や堆積場所、出荷時期の違い等による遊離土砂発生実態の調査分析を実施し、報告書にとりまとめました。


 
     


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