令 和 元 年 度 事 業 計 画

T. 基 本 方 針  
   農業、農村関連法令の改変は一向に止みそうにありません。昨年度の「主要農産物種子法」「不足払い法」等の廃止に続き、今年度、「卸売市場法」や「農薬取締法」「土地改良法」などが改正されました。半世紀ぶりの改正となった「卸売市場法」では「中央卸売市場」への民間参入が認められ、また「第三者販売」や「差別的取扱」などの取扱いは各市場の判断に委ねられることになりました。公的仕組みの大幅な後退であり、果たして「公明正大な価格形成」や「公正な流通」などが担保されるか否か、疑問なしとはしえません。また、市町村を介して“放置された”私有林を企業などに集約するとした「森林経営管理法」も農家林家の存在を考えた時、見落とせません。何れも、"企業が最も活躍し易い場・環境"の整備の一環なのかも知れません。
 更に、TPP11は関連法案を含め僅か15時間弱、日EU・EPAは14時間程の審議で可決され、前者は昨年12月30日、後者は2月1日に発効しました。しかし、TPP11の「輸入セーフガード」発動条件がアメリカ参加時と変わらず、実効性に重大な疑問符が投げかけられています。また、ソフト系チーズ、ワインなどを日EU・EPAで新たに門戸を開くにも拘わらず、たった14時間の審議で影響や問題、必要な対策などがどれ程解明されたか、疑問が残らざるをえません。疑念・疑問が残ったままでは、幾ら生産減少額がたったTPP11で900〜1,000億円、日EUで900〜1,100億円に過ぎないと言われても、俄に信じ難いと評せざるをえません。ともあれ、こうした"危うい面"を持ちながらわが国はいよいよ「メガFTA・EPA時代」に突入したようです。TPP11や日EU・EPAの関連対策の効果や機能、行方に大いに注意を注いでいく必要がありそうです。「人・農地プラン」の法制化を認めなかった「農地集積バンク」の見直しの顛末や作柄回復にも拘わらず38%の史上最低を脱しえなかった「食料自給率」の動向などに鑑みれば、我々が決して関心を失わずしっかり監視し・注視していくことが重要なのかもしれません。4月以降、"物品に限られる"とされる日米貿易協定交渉がスタートをし、また、新たな「食料・農業・農村基本計画」の策定作業が本格化するから、尚更です。
 引き続き緊迫する情勢が続く中、「北海道地域農業研究所に係る事業検討会」の基本的結論を踏まえつつ、当研究所では今年度、以下の諸課題に取り組んでいきたい。
 一つは、JA・農業団体や北海道・市町村などによる農業・地域振興策の策定・樹立を支援し、より一層貢献していくことができるように「産官学」の協力態勢を一層うち固めていくことである。そのために北海道の民間調査・研究機関を訪問し意見交換し、その一歩を踏み出しました。
 二つは、農業はもちろんのこと、関連する「食」や「生活」「社会」「地域」などの分野をも視野に入れ、幅の広い協力・協働・連繋の構築を図るべく、それらの教育・研究機関、研究者との協力・連携関係を更に密にしていくことである。幅広い関連分野の方々を協力研究員などとして迎え入れ、幅のある研究推進体制を構築していきたい。それは農業振興に役立つだけではなく、「550万人サポーター」づくりにも大きな力になっていくことは疑いない。
 そして、三つに、以上の態勢を整えつつ、北海道農業及び農村地域の振興に係わる諸問題に地域の視点から取り組み、地域の将来予測や関係機関のあるべき姿などに関してより有効で説得力のある提言を行っていきたい。そのためにも「農業者モニター会議」など、地域で活躍する方々の意見などに直に接することの出来る機会を大事にしていきたい。
 平成31年度においても、当研究所に対して様々な研究テーマの委託が予定されている。また、自主研究のテーマも「『生消』提携をベースとした力強い北海道農業の構築を目指して」を総合テーマとし、一昨年度からスタートした「農協による生活インフラの形成・農村生活史」「消費者交流事業の展開とその効果」「六次産業化・農商工連繋の展開と農畜産物・食料市場のニューウェーブ」に力を入れ、可能な限り報告書などとしてまとめていきたい。
 以上のように、農業を取り巻く情勢に的確に対応した調査研究を推進し、会員・関係機関の負託に応えていけるよう事業を推進していきたい。
 
 
U. 調査研究事業の取り組み
1. シンクタンクとして期待される機能の発揮
 北海道における農業および農村地域の振興に関わる諸問題について、地域の視点での調査研究により、実態を的確に把握・分析し、その課題解決に向けた将来予測や実践的提言を行う。
 
(1) 自主研究
 農業・農村を取り巻く情勢変化に対応し、農業の持続的発展や地域社会の活力維持に繋がる調査研究を企画・推進する。
 「生産者・消費者提携をベースとした力強い北海道農業の構築を目指して」を基本テーマとし、継続課題に加え、北海道農業の振興に向けた課題を適時設定し、調査研究を行う。
 
(2) 共同研究
 JAおよび市町村が取り組む地域振興計画策定に参画し、その策定支援に取り組む。また、関連研究機関との共同研究課題等を検討する。
 
(3) 受託研究
ア 会員をはじめ、関係機関・諸団体からの調査研究依頼に応え、委託者との密接な連携を図り、実践的な活用に資する調査研究を行う。
イ 個別課題の関連情報収集や公募事業への参画に努め、提案型研究の推進を図る。
 
2. 大学・研究機関等との連携強化や支援
(1)  大学や研究機関等との研究協力・情報交換などによる連携強化を図り、調査研究事業のさらなる充実に努める。
 
(2)  協力研究員を含めた産・学・官の研究ネットワークの拡充を図り、調査研究において、農業現場・地域をつなぐ役割を積極的に果し、実践的調査研究を取り進める。
 
V. 研究成果の発信と情報提供の強化
 基本理念は「地域農業と地域社会の振興及び維持・活性化に寄与する」としており、農業関連情報を農業関係者に限定せず、定期的・効果的により広範に発信する。
 
1. 機関誌「地域と農業」の活用
(1)  企画内容は、農業を取り巻く情勢の変化に的確に対応した構成とし、会員や関係機関の負託に応えられる様に、引き続き企画の充実に努める。
 
(2)  研究所の事業活動についても、研究成果の概要等を誌面で具体的に伝えて、農業に関わる専門のシンクタンクとしての認知度向上を図る。
 
(3)  配布先を広げ、全道の報道関連機関、医療施設、喫茶店等への配布を行っているが、この取り組みを継続して農業関連情報をより広範に発信する。
 
2. 「地域農業研究年報」の発行と「地域農業研究所だより」の発信
(1)  平成30年度に実施した調査・研究課題の概要をはじめ、研究所の各種業務の概要をまとめた「地域農業研究年報」を発行して会員へ配布する。
 
(2)  研究所の研究報告の概要紹介等、事業活動の概況を整理し、JA宛に「地域農業研究所だより」として、定期的な情報発信をおこなう。
 
3. 出版助成事業の継続と地域農業研究叢書の公開
(1)  若手研究者の育成と支援を目的として、出版助成事業を継続する。助成申請された中で、選考委員会での審査を経て助成対象として選定された原稿は、地域農業研究所の学術叢書として出版し、規定に基づき出版助成をおこなう。
 
(2)  自主研究・共同研究・受託研究の研究成果の内、広く利活用が期待でき、対外的に公表が可能なものは、地域農業研究叢書として公開する。
 
4. 「30周年記念誌」の編纂業務
(1)  2020年12月で研究所設立30周年となることから、2020年度内での記念誌発行を計画し、「20周年誌」以降の2010年度から2019年度までの期間を加筆した「30周年誌」の編纂をおこなう。
 
5. ホームページの活用
(1)  情報発信ツールの一つとして、当研究所のホームページを活用する。ホームページへの来訪者・利用者の増加のために、記載内容の更新頻度を高め、併せて定期的に利用状況の確認もおこなう。
 
(2)  公開情報の量的拡大と内容の充実を図る為に、研究成果を公表できるよう研究依頼元へ公表の可否を確認して了承を得る。
 
6. 農業者モニター会議の開催
(1)  農業者の生の声を聞く事で、タイムリーな地域の情報を収集し、情勢の変化に的確に対応した、「地域の視点」に基づく効果的な調査研究と提言を行い、機関誌等に掲載して研究成果を発信する。
 
7. 研修会開催と講師の派遣
(1)  定期開催している「総会時特別講演会」「農業総合研修会」他、研究成果の報告会を都度開催する。尚、「農業総合研修会」は、引き続き地方都市開催を目指して計画する。
 
(2)  講師派遣業務の推進状況を発信して、会員や関係先に業務の状況を広く認知して頂き、派遣要請の内容に基づく適任者を、紹介・斡旋・派遣する。
 
8. 農業や農協活動の意義を広く一般に知らせる
(1)  公共のマスメディアを積極的に活用して、農業関連情報を農業関係者に限定せず、より広範に発信できるように取り進める。
 
(2)  農業振興に関わる情報発信は、他のシンクタンクとの交流や連携を図って、情報の量と質を充実させ、より広い視点で発信出来るように取り組む。
 
W. 組織運営等に関する取組み
1. 経営基盤の安定化と組織体制の強化
(1) 会員の加入促進
 地域が抱える課題への対応や講師の斡旋・派遣を行う。また、会員に向けた情報の発信等により、調査研究事業に対する理解と賛同を得、新規会員の加入を促進する。
 
(2) 研究体制の強化
 関係機関や行政分野との連携を密にし、調査研究事業の領域を拡大するとともに研究員の質的な向上を図る。
 
(3) 各種会議体の開催
 参与会等の各種会議体を適宜開催することにより、調査研究事業のあり方や研究課題の提案など、諮問事項を事業推進に反映させる。
 


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