平 成 30 年 度 事 業 計 画

T. 基 本 方 針  
    TPP交渉参加を契機に始まった「農業・農村攻撃」=法令・制度改変は一向にやみそうにない。「農協等の大改革」に引き続き、昨年は農業災害補償法を改正し収入保険を導入したのを始め、農業競争力強化支援法を制定し、価格・コスト削減を標榜し資材・流通業者の再編方向を打ち出した。また、「ゆめぴりか」を生み出したとも評せる「主要農産物種子法」や「不足払い法」を廃止し、更に「卸売市場法」の改正に着手した。いずれも一部の既得権益を擁護する不公正・非効率な「岩盤規制」に相当し、それらを廃止することによって関係諸団体・個人などのイコールフッティングの関係が実現され、「真に有効な競争関係」が成立し、活力が生まれるということが、その事由らしい。しかしそこには、残念ながら共同や協同はもちろん協働や共生といった未来志向的な“暖かみ”や“人間味”のある概念の存在・介在は微塵も感じられない。むしろ、競争、優勝劣敗の法則こそが進歩を呼び寄せるとする「ダーウィニズム」という独特の史観すら感じざるをえない。
 また、アメリカ・トランプ大統領の登場で一頓挫かと思われたTPPは、わが国の主導の下、アメリカを除く「TPP11」として復活し、この1月下旬最終合意に達し調印の運びとなった。もちろん、“回りを固めアメリカの参加を促す”作戦であり、日米EPA回避作戦たること、言うまでもない。更に、当初、TPP一頓挫の代替EPA協定の感が強かった日EU・EPAもISDSなどの投資分野を別協定として切り離し12月初旬最終合意に達した。後者では、TPP以上に酪農分野、中でもチーズで大幅に譲歩した。しかし、昨年末発表された政府の影響試算では、TPP11で900〜1,000億円、日EU・EPAで900〜1,100億円の国内農業生産額の減少はあるものの、“有効な”国内対策が展開されるので、農業生産量は維持され、食料自給率も維持されると試算された。「額」は減じながらも「量」は維持される。これを素直に読めば「安くなるが」、生産者は価格には反応せず、生産を続けると言うことか?それほど有効な国内対策が打てるのであろうか。疑問なしとはしえない。ともあれ、二つのメガEPA対策として取りまとめられた「TPP関連政策大綱」の展開から目を離すわけにはいかない。
 緊迫する情勢の下、「北海道地域農業研究所に係る事業検討会」の基本的結論を踏まえつつ、当研究所では今年度、以下の諸課題に取り組んでいきたい。
 一つは、JA・農業団体や北海道・市町村などによる農業・地域振興策の策定・樹立を支援し、より一層貢献していくことができるように「産官学」の協力態勢をうち固めていくことである。それとともに、主に北海道の民間調査・研究機関との連携関係を強め、協力関係を築いていきたい。
 二つは、農業はもちろん「食」や「生活」「社会」など、関連分野をも射程に入れ、幅の広い協力・連繋の構築を図るべく、それらの教育・研究機関、研究者との協力・連携関係を更に密にしていくことである。事実、一昨年度から食生活論の専門家の研究協力も得、また「博士(文学)」の学位を持つ研究者を専任研究員として迎え入れた。更に、それら関連分野の方々を協力研究員として迎え入れていきたい。それは農業振興に役立つだけではなく、「550万サポーター」づくりにも大きな力になっていくに違いない。
 そして、三つに、以上の態勢を整えつつ、北海道農業及び農村地域の振興に係わる諸問題に地域の視点から取り組み、地域の将来予測や関係機関のあるべき姿などに関してより有効で説得力のある提言を行っていきたい。そのためにも「農業者モニター会議」など、地域で活躍する方々の意見などに直に接することの出来る機会を大事にしていきたい。
 平成30年度においても、当研究所に対して様々な研究テーマの委託が予定されている。また、自主研究のテーマも「『生消』提携をベースとした力強い北海道農業の構築を目指して」を総合テーマとし、昨年度スタートした「農協による生活インフラの形成・農村生活史」「消費者交流事業の展開とその効果」「六次産業化・農商工連繋の展開と農畜産物・食料市場のニューウェーブ」に力を入れ、中間報告などとしてまとめていきたい。
 以上のように、農業を取り巻く情勢に的確に対応した調査研究を推進し、会員・関係機関の負託に応えていけるよう事業を推進していきたい。
 
 
U. 調査研究事業の取り組み
1. シンクタンクとして期待される機能の発揮
 北海道農業および農村地域の振興に関わる諸問題に地域の視点から取り組み、地域の将来予測や関係機関のあるべき姿などに関して、より有効で説得力のある提言を行う。
(1) 自主研究
農業・農村を取り巻く情勢に的確に対応し、農業の持続的発展や活力ある地域社会の維持に資する対応方策等の調査研究を推進する。
 「生産者・消費者提携をベースとした力強い北海道農業の構築を目指して」を基本テーマとして、継続課題や今後の北海道農業が抱える重要課題について適時取り組む。
(2) 共同研究
 JAおよび市町村が取り組む地域振興計画策定に共同研究として参画し、策定支援に取り組む。
(3) 受託研究
ア 会員をはじめ、関係機関・諸団体からの研究依頼に積極的に対応し、委託者との密接な連携のもと、実践的な活用に資する調査研究に取り組む。
イ 個別課題の情報収集や公募事業への参画に努め、提案型研究の推進を図る。
2. 大学・研究機関等との連携強化や支援
(1)  大学や研究機関等との研究協力・情報交換など連携を促進し、調査研究事業の充実強化に努める。
(2)  協力研究員などの専門家ネットワークと生産現場・地域をつなぐ役割を積極的に推進する。
 
V. 研究成果の発信と情報提供の強化
 基本理念とする「地域農業と地域社会の振興及び維持・活性化に寄与する」為に、農業関連情報を定期的・効果的に、農業関係者に限定せずより広範に発信する。
1. 機関誌「地域と農業」の活用
(1)  企画内容は、農業を取り巻く情勢の変化に的確に対応したものを掲載し、会員や関係機関の負託に応えられる様、引き続き誌面構成の充実に努める。
(2)  研究所の事業活動についても、都度、誌面で具体的に伝えて、農業に関わる専門のシンクタンクとしての認知度向上を図る。
(3)  農業関連情報をより広く発信する為に、全道の報道機関・医療施設・喫茶店等へ配布先を広げており、この取り組みを継続する。
2. 地域農業研究年報の発行と「地域農業研究所だより」の発信
(1)  平成29年度に実施した調査・研究課題の概要をはじめ、各種業務の概要をまとめた「平成29年度地域農業研究年報」を発行して、会員へ配布する。
(2)  「地域農業研究所だより」として、研究成果の概要紹介等、研究所に係る業務概況について、JA宛に、定期的な情報発信を行っており、この取り組みを継続する。
3. 出版助成事業の継続と地域農業研究叢書の公開
(1)  出版助成事業は、若手研究者の育成と支援を目的として継続する。助成申請された中で、選考委員会での審査を経て助成対象として選定された原稿は、地域農業研究所学術叢書として出版し、規定に基づき出版助成をおこなう。
(2)  自主研究・共同研究・受託研究の研究成果の中から、広く利活用が期待でき、対外的に公表が可能な研究報告は、地域農業研究叢書として公開する。
4. ホームページの活用
(1)  情報発信ツールのひとつとして、当研究所のホームページを活用する。ホームページへの来訪者・利用者の増加のために、記載内容の更新頻度を高め、併せて利用状況の確認もおこなう。
(2)  公開情報の量的拡大と内容の充実を図る為に、研究課題の依頼元へ研究成果を公表出来るよう了承を得る取り組みを行っており、この取り組みを継続する。
5. 農業者モニター会議の開催
(1)  モニター会議を開催して、農業者の生の声を聞く事で、タイムリーな地域の情報を収集し、情勢の変化に的確に対応した、「地域の視点」に基づく効果的な調査研究と提言を行い、研究成果は、機関誌「地域と農業」等で発信する。
6. 研修会の開催と講師の派遣等
(1)  定期開催している「総会時特別講演会」「農業総合研修会」他、研究成果の報告会を都度開催する。尚、「農業総合研修会」は、引き続き地方都市開催を計画する。
(2)  講師派遣については、業務内容と推進状況を会員や関係先に広く認知して頂き、派遣の要請内容に基づき、その適任者を紹介・斡旋・派遣する。
7. 農業や農協活動の意義を広く一般に知らせる
(1)  JAや組合員向けの情報誌に、研究所の活動概況や研究成果を定期的に掲載する等、農業や農協事業に関わる情報発信を、より効果的に取り進める。
(2)  公共のマスメディアを積極的に活用して、タイムリーな研究報告や農業関連情報を、より広く発信できるように取り進める。
(3)  他のシンクタンクとの交流や連携を図り、それぞれの組織の特徴を活かして、より広い視点で農業や地域振興に関わる情報発信を、効果的におこなう。
 
W. 組織運営等に関する取組み
1. 経営基盤の安定化と組織体制の強化
(1) 会員の加入促進
 地域が抱える課題への対応や講師の斡旋・派遣を行う。また、会員に向けた情報の発信等により、調査研究事業に対する理解と賛同を得、新規会員の加入を促進する。
(2) 研究体制の強化
 関係機関や行政分野との連携を密にし、調査研究事業の領域を拡大するとともに研究員の質的な向上を図る。
(3) 各種会議体の開催
 参与会等の各種会議体を適宜開催することにより、調査研究事業のあり方や研究課題の提案など、諮問事項を事業推進に反映させる。
 


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