平 成 28 年 度 事 業 計 画

T. 基 本 方 針  
   2015年度はTPP交渉に始まり、農協・農業委員会・農業生産法人改革を経て、TPPの大筋合意・署名式に終わった感が強い。周知の通り、TPP交渉でわが国は、米麦・豚牛肉・乳製品・甘味資源作物を重要5品目とし、「聖域」と位置付けたにも拘わらず大幅に譲歩し、重要5品目のタリフライン586に対して関税を残したものは412、70.3%に止まっている。「農政新時代」と称した「総合的なTPP関連政策大綱」が策定され、その効果を考慮すればわが国農業への影響は軽微で、生産額は減少するものの生産量と農家所得は維持されカロリー自給率も39%で変化がないとされる。しかし、ほとんどの加工品の輸出入が自由化された中で「農産物」あるいは「一次加工品」形態での輸入よりも「高次加工品」としての輸入が増え、国産農産物市場を窮地に陥れるではないかとの危惧もあり、手放しでは安心できない状況である。
 また、農協改革では、本来地域の農協や都道府県の組織が自主的に見定め描くべき改革の方向が、「農業者が主役」との打ち出しの下、JA全中の一般社団法人化・公認会計士監査の義務付けなどとして、政府が半ば強制的に描いたように見えて仕方がない。このことは農業委員会に対しても通底していると思え、農業生産法人要件の緩和や全農の株式会社への組織変更の可能性への言及も見落とせない。
 このような情勢の下、当研究所は「北海道地域農業研究所に係る事業検討」の結果を踏まえて以下について取り組むこととする。
 一つに、行政やJAなどによる地域振興策の樹立により積極的に支援・貢献できるよう、行政経験者を新たにスタッフに迎え体制を強化する。
 二つに、農業はもちろん「食」「生活」関連分野をも射程に入れ、幅の広い協力・連携の構築を図るべく、それらの教育・研究機関、研究者との協力・連携関係を密にする。そして、それらが北海道における農業の意義、JA・関係機関等の存在及び活動の意義を農家・農村住民だけではなく、幅広い人々に広めるための大きな力になっていくことが期待される。
 そして三つに、以上の態勢を整えつつ、北海道農業及び農村地域の振興に係わる諸問題に地域の視点から取り組み、地域の将来予測や関係機関のあるべき姿などに関してより有効で説得力のある提言を行っていく。
 平成28年度においても、当研究所に対して種々の研究テーマの委託が予定されている。また、自主研究のテーマも「『生消』提携をベースとした力強い北海道農業の構築を目指して」を総合テーマとし、「北海道農業における担い手確保問題と集落機能」「TPPによる北海道農業・地域への影響」「六次産業化・農商工連携の展開と農産物・食料市場のニューウェーブ」「消費者交流事業の展開とその効果」「地域の生活インフラ(基盤)機能としてのJA」の諸課題に順次取り組む考えである。
 さらに、北海道産農産物の輸出が注目されているが、当研究所においても輸出拡大に貢献できるように、輸出可能地域の情報、例えば需給情報や輸出に係わる諸条件(例えばISOやHACCP取得、アニマル・ウエルフェアなど)などを可能な限り収集分析するとともに、参考として供していきたい。
 以上のように、農業を取り巻く情勢の変化に的確に対応した調査研究を推進し、会員・関係機関の負託に応えられるよう事業を推進していく考えである。
 今後とも、会員及び関係機関のご理解とご協力をお願いしたい。 
 
 
U. 調査研究事業の取り組み
1. シンクタンクとして期待される機能の発揮
(1) 自主研究
 農業・農村を取り巻く情勢変化を踏まえ、北海道農業の役割や地域における位置づけなどについて検証を図るとともに、地域農業、地域社会の維持ならびに活性化に向けた対応方策等の調査研究を推進する。
  平成28年度においては、「生産者・消費者連携をベースとした力強い北海道農業の構築を目指して」を新たな基本テーマとして、今後の北海道農業が抱える重要課題について適時取り組む。
(2) 共同研究
 JAおよび市町村が取り組む地域振興計画策定に積極的に参画し、支援に取り組む。
(2) 受託研究
ア 会員をはじめ、関係機関・諸団体からのニーズに的確に対応した調査研究に取り組むとともに、フォローアップ対応など質的向上を図る。
イ 個別課題の情報収集や公募事業への参画に努め、提案型研究の推進を図る。
2. 大学・研究機関等との連携強化や支援
(1)  大学や研究機関等との研究協力・情報交換など連携を促進し、調査研究事業の充実強化に努める。
(2)  協力研究員などの専門家ネットワークと生産現場・地域をつなぐ役割を積極的に推進する。
(3)  出版助成事業を実施し、若手研究者の支援に努める。
 
V. 成果の発信と情報提供の強化
当研究所の基本理念である地域と農業を守る視点から、農業関係者に限定せず、道民全体を対象と意識して各種情報を発信する。
1. 会報「地域と農業」の活用
(1)  昨年度から会報「地域と農業」の配付先を広げ、喫茶店や医療施設の待合室などにも置くことを進めてきたが、今年度もさらに進める。
(2)  また、当研究所の事業活動についても都度具体的に伝えることで、農業部門のシンクタンクとしての認知度を高める。
2. 平成27年度に実施した調査・研究課題の概要をまとめた「年報」を発行する。
3. 地域農業研究叢書の発行および出版助成事業の実施
(1)  自主研究・共同研究・受託研究の成果の中から、対外的に公表が可能であり、活用が期待できるものについては地域農業研究叢書として発行し、会員に配付する。
(2)  若手研究者の支援を目的に、出版助成事業を行う。応募の中から、選考委員会での審査を経て承認された原稿は、地域農業研究叢書として出版し、規定に基づき助成を行う。
4. ホームページの活用
(1)  会員・非会員への情報発信ツールの一つとして、当研究所のホームページを活用する。また、ホームページへの来訪者・利用者の増加を目指し、内容の更新頻度を高めると共に、利用状況の確認も行う。
(2)  依頼元の了解を得て、調査研究結果をホームページ上で閲覧できる体制をさらに広げ、情報提供の内容充実と量的な拡大を図る。
5. 研修会の開催と講師の派遣など
(1) 研修会・研究会・シンポジウムなどの開催
 定期開催の「総会時特別講演会」「農業総合研修会」ほか、研究成果の報告などを都度開催する。また、農業総合研修会は道内地方都市での開催を検討する。
(2) 研修会、研究会への講師の派遣、斡旋
 講師派遣業務を広く知らせ、会員や関係先からの要請により、適任者を紹介・斡旋・派遣する。
 
W. 組織運営に関する取組み
1. 経営基盤の安定化と組織体制の強化
(1) 会員の加入促進
 地域が抱える課題への個別対応や講師の斡旋・派遣、会員が求める情報のタイムリーな提供などにより、当研究所の事業活動に理解と賛同を得て新規会員の加入を促進する。
(2) 人員体制の強化
 昨年度採用した専門職研究員を筆頭に、地域や関係機関との連携機会を積極的に設けることで、調査研究事業の幅を広げ質的な向上を図る。
 また、新たに行政経験者1名を採用し、行政分野での会員への情報提供を充実させるとともに、市町村会員の新規加入を目指す。
(3) 参与会・運営委員会の開催
 当研究所の調査研究事業のあり方や具体的な課題の提案、取り組みの充実策や成果の発信方法などについて、参与会並びに運営委員会へ諮問し事業推進に反映させる。
 


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