北海道の農協は、現在大きな岐路に立たされている。一方では、日本農業の後退傾向の下で、北海道農業は日本の食料基地としての重みを増しており、その中で特に「フリー・マーケット対応型」の産地形成の課題が大きくなっている。他方で、農協を取り巻く環境の悪化並びに金融自由化を始めとする農協事業環境の悪化という農内外の二重の環境条件の変化の中で、事業・運営ともに再編を迫られている。本報告書は、自治体農政の基本問題として、今後の北海道の農協の組織、事業方式のあり方に関し、積極的な施策を検討するために北海道農政部が本研究所に委託したものである。
調査研究項目は包括的なものであり、1)農協事業・経営の農業地帯別・規模別の現状分析、2)農協の適正規模とその背景となる事業方式のあり方、3)現在進められている農協合併並びに系統組織のバックアップ体制、4)地域における農協の役割と機能である。
分析においては、道内の農協事業・経営に関する統計分析と典型農協の実態調査を行うとともに、合併問題に関する市町村長に対するアンケート調査を行い、現場に即した実態把握と課題整理を行った。また、先進事例からの教訓を引き出すとともに、都市化地帯の農協事業体制、野菜先進県における営農指導体制、農協合併への支援策、生活事業に関しての府県調査を実施した。
北海道は、冬期寒冷な気象条件にあり、無尽蔵の冷熱源に恵まれている。最近、この自然エネルギーを農産物の貯蔵に活用した潜熱利用貯蔵システム(アイスシェルター、アイスポンド、雪、氷室方式)が研究機関等で開発され、周年型の低コスト貯蔵方式として実用化が期待されている。その実用化を促進する上で、実用規模での貯蔵技術の確立に加えて、農産物の生産から貯蔵・流通・加工等、多角的な検討を必要としており、北海道開発局の調査事業(平成3~5年)を受けて、(財)北海道開発協会と当研究所の協力の下で、「潜熱利用冷温化システム検討会」が設置され、当研究所がその調査研究分野を受託したものである。
平成3年度の調査研究項目は、1)農産物貯蔵の一般概念の整理、2)北海道における農産物の貯蔵・流通実態調査、3)潜熱利用貯蔵システムの試験状況調査である。2)~3)については野菜を中心に全道の品目別主産地の農協を対象にアンケート調査を行った。また、分析結果を踏まえ代表的農協等(15ヵ所)の現地実態調査の他、関係機関での意見聴取により野菜の生産・貯蔵・流通の現状把握と今後の課題を探った。
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農地問題をめぐる現状と課題を分析してみれば、そこには深刻な土地余り現象が構造的に存在していることが確認できる。殊に農業専業地帯の農地問題では、負債整理、後継者不在等の理由から農地売却による挙家離農が多いこと、今日展開している賃貸借関係も「離農前の一時的賃貸借」の傾向が強いことを特徴とする本道の事情を考えるとき、「農地管理保全センター(仮称)」の創設が必要となる。
このセンターは農地を買い入れ、一定期間保有することにより農地需給を緩和、調整する。それと同時に多様な地元ニーズに対応して過剰農地を多目的に利用しつつ、農地として管理保全する広域の共同機構である。本事業では、このセンターの設置に関し、その所管範囲、運営形式、具体的な事業内容、財政等について提言を行った。
農業分野での情報伝達の仕組みは、「農業情報ネットワークシステム」と呼ばれるもので、有線あるいは無線通信により迅速に、役場・農協と農家の間で双方向的に営農・生活に関わる多様な情報を伝達するものである。
栗山町においては、従来からこうしたシステムは持っておらず、情報の伝達は電話や郵便で行っているのが現状である。しかし、ファクシミリについては、既にメロン栽培農家群を中心に導入され始めているし、パソコンについても50戸程度の農家に導入されている。ファクシミリやパソコンが普及するに従い、農家からの情報システムに対する要望も出始めてきている。こうした先進的農家の要望に行政・農協は積極的に応えていく必要があると思われるが、パソコンやファクシミリを現状では強いて導入する必要がないと考える農家もおり、情報の面で農家間の格差が広がることも懸念されている。
こうした背景から本事業では栗山町における農業情報ネットワークシステムの今後のあり方について基礎的調査を行い、情報システム導入の可能性を検討した。具体的には、提供する情報内容、導入経費、運用等の面からの検討を行った。