昭和60年、第18回北海道農協大会において、「系統農協営農指導の強化と地域営農の確立」が決議されて以来、各農協では営農指導事業の強化に取り組んできた。今後は、個々の経営指導や地域農業の再編・振興等、総合的な営農指導体制の整備や相談機能の充実等、系統組織各段階における営農指導体制のあり方及び提携・補完等の役割分担等、系統ぐるみの指導体制確立を方向付ける方策策定が必要とされている。
今回の基礎調査では、まず営農指導・技術指導事業の現状と課題を把握することにして、道内の農協でいかなる営農指導・技術指導を行っているかを、平成6年5月にアンケート調査、6~7月に現地聞き取り調査を行って、農協における営農指導とりわけ技術指導の実態把握と技術指導強化方策についての展望及び連合会に対する関連する要望について明らかにした。また6~7月には同時に先進的な府県経済連における営農指導・技術指導事業体制の事例についても調査し、全道体制形成の参考にした。最終的に、9月に調査報告書を提出、具体的提言を行い、業務を完了した。
本調査業務は、新農政の方向を踏まえた効率的・安定的な農業経営体の創出に向けて、営農意欲のある農業者に対する農地の利用集積を促進するため、本道における地域の実態に即した農地の流動化と利用集積対策のあり方を検討するとともに、実現の可能性のある今後の望ましい方策(提言)を取りまとめることを目的としているもので、当面、本年度はその前段として、「農地移動等の現状と動向の把握・分析」と、生産現場における問題点と課題の抽出」を行うこととしたものである。
「農地移動等の現状と動向の把握・分析」に関しては、既往資料(概ね昭和45年以降)を収集し、農家戸数、耕地面積、不耕作地、権利移動、転用、農地価格、離農、農家の農地利用意向等の事項について、主として支庁地域や農業地帯別に整理・分析した。
また、「生産現場における問題点と課題の抽出」に関しては、主要な農業地帯の代表的な6市町村で現地調査を実施し、農地の移動・利用の実情把握と課題の抽出に努めた。
本調査は、ウルグアイ・ラウンド合意後を踏まえて、今後予想される農業構造の急速な変化に対応するため、現状における農地問題の諸相を実態調査によって把握するとともに、今後の農地移動の趨勢と、そのもとでの合理化事業の対策について考察を加えることを課題とした。
調査にあたっては、各経営形態から異なった動きを示す町村を2町村ずつ析出して、可能な限り部落悉皆調査の方式を採用した。調査対象町村は、水田地帯が深川市(中規模地帯)、士別市(限界地帯)、畑作地帯が清水町(大規模地帯)、訓子府町(中規模地帯)、酪農地帯はともに草地型で根釧地域は標茶町、天北地域は豊富町とした。
実態調査の結果、全道的な共通点として1)担い手の動向には集約的複合経営路線や大規模化の動きがあること、2)農地移動の動向には従来の売買中心の形態から賃貸借が中心となりつつあることが明らかになり、それらに対応した農地保有合理化事業の緊急対策として必要な内容等について取りまとめた。
以上について、本事業は2ヵ年の調査を完了し、報告書を提出して終了した。
今日、ガット農業合意の難しい情勢のもとで、ひろく求められているゆとりや効率的な農業経営を目指し、本道農業の安定的な発展を図っていくうえで、担い手の高齢化や規模拡大に対応した個別経営を補完する農作業の請負組織等、地域の実情に応じた新たな経営支援体制を確立することが重要な課題となっている。
このため、道農政部では、農業地帯別に、地域農業を支援するシステムのモデル類型の策定と、必要な推進方策について検討を進めることとしている。
本調査研究業務は、その一環として、近年道内の各地で生まれつつあるファームコントラクター(農作業請負組織)に焦点を絞り、これら請負組織の存立条件と運営・経営上の問題点や、農業経営に与える効果等を調査分析し、農業地帯別の効率的なシステムのあり方について検討することを課題として実施したものである。
調査研究の推進にあたっては、幅広い分野にわたって農業地帯別に検討する必要があることから、関係者によるプロジェクト・チームを編成し、コントラクターに関する国内外の事例の収集や現地調査を行うとともに随時研究会を開催して、その成果を報告書として取りまとめ道に提出した。
環境問題やエネルギー需要の増大による資源枯渇問題解決のため、化石燃料に替わるエネルギーとして自然エネルギーへの依存は来るべき21世紀にはますます高まるものと考えられる。二酸化炭素排出による地球温暖化や酸性雨等の環境問題はますます大きくなり、地域レベルでのクリーンで無尽蔵な未利用エネルギーの創出はぜひとも必要となってきている。
一方、農業分野には石油を中心に相当量のエネルギー投入が見られるが、農業関係のエネルギー消費は石油代替・省エネルギー技術が大きく実施された実例は少なく、環境保全への役割についても大きな成果が得られていない。
このような背景のもとに、本調査においては、数ある自然エネルギーの中でも農業に利用できそうな「風力」「ソーラー」と省エネの観点から他産業で実施されている「コジェネレーション」の3つに的を絞り、その実態や問題点を調査し農業分野への導入の可能性をさぐった。
今年の課題は、1)地域エネルギー利活用とその現状、2)北海道内の地域エネルギー資源の分布と特性の2つである。1)では、できるだけ農業分野(事例数は少ない)を中心に、アンケートや文献あるいは聞き取り調査により国内外の地域エネルギーの現状把握を行った。2)では、アメダスのデータ(道内、平成元年~5年の5ヵ年間)を用いて風速データから変換式を使って風力計算を行い、またソーラーは日照時間のデータ収集を行った。さらに、第2年目以降の調査計画に連動する準備についても取り組んだ。
ガット・ウルグアイ・ラウンドの農業合意受け入れによる本道農業への影響と、関税率の引き下げや、急激な円高の進行による輸入農産物の増加に対応する本道の主要農産物の生産・流通動向を計量的に把握することを目的に調査研究を実施した。
具体的には、まず初めに、農産物の自由化が地域産業と地域マクロ経済の両面に多大な影響を及ぼすことが予想されるため、その影響を事前にシミュレーション分析が可能な「北海道マクロ農業計量モデルを、協力研究者チームが開発した。このモデルの開発により、北海道の農業部門における投入・産出構造が道民所得形成に果たしているメカニズムを動学的に再現可能になった。なお、既自由化品目については、円高の進行によって低価格海外農産物の輸入量増加が道産品に及ぼす影響を中心にシミュレーション分析を行った。続いて、北海道における稲作、畑作、酪農の主要産品である米、でんぷん、雑豆、乳製品の4品目について、全国の主要な実需者を対象にアンケート調査を実施した(調査期間は平成6年11月~12月)。
以上結果について、本編・概要書の2編の報告書として取りまとめ、委託者に提出して業務を完了した。
昨年度から村との共同研究として開始した本研究は、本年度は留萌支庁の事業に引き継がれて進められた。5月には予備調査として3集落の2戸ずつを調査し、これを踏まえて6月には農家アンケートと3集落の悉皆聞き取り調査を実施した。
報告書では第一に、アンケートと統計等から知り得る範囲で、まず初山別村の担い手の将来像と農地需給の質・量的な検討をした。さらに地域農業振興全体と土地問題対策との関係を整理した上で、聞き取り調査を行った3集落の担い手と農地の具体的な位置関係を検討材料として提供した。第二に、農家経済に占める兼業の意味を検討した。第三に、アンケートで描き出された高齢農家と若手農家双方の問題を、聞き取り調査をもとにより具体的に掘り下げた上で、将来の農地を有効に利用していくための農地利用計画を提案した。
以上内容について報告書として取りまとめ、委託者に提出し業務を完了した。
「環境への負荷が小さく、省力的で所得率の高い酪農への転換が必要」であり「放牧中心の省力型酪農が成立するための条件」を検討することがこの研究の課題となっている。
まず第一に、求められた課題の中で「環境への負荷」についての具体的な評価基準は提示されているわけではないため、まず概念の明確化が求められる。
第二に、少ない資材投入で経営的な再生産を可能としている酪農経営の収支は高い所得率となるが、こうした農家群の特徴を個別農家の経済データを大量に使用して計数的に明らかにすることがつぎの課題である。
第三に、購入資材の投入を意識的に抑制させて、経費の節減により経営収支を向上させている農家グループの具体的な取り組みを事例に、経営転換の方法や条件についての整理を行うことが課題である。
経営収支のデータは相当数のデータベース化を終了しており、1月に根釧地域を対象に調査を実施、報告を完了した。
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現在、大規模畑作・畜産農業地域では、畑作物の規模拡大による地力の低下が指摘される一方、家畜飼養頭数規模拡大によるふん尿処理が深刻な課題となっている。いわゆる環境問題の顕在化である。本事業は、こうした環境問題解決のための整備手法について、現地の実態を素材に検討していくものである。
具体的な分析手法は、以下四つの視点からなる。第一の課題は、家畜ふん尿をどのように処理、あるいは活用していくのか検討することである。第二の課題は、第一の課題の解決策として想定される、畑作農家と畜産農家両者を有機的に結合し農業資源を地域内で循環させるシステム(具体的には畑作農家の麦稈等と畜産農家のふん尿の交換)を確立するための諸条件を検討することである。第三の課題は、大規模化や多頭化の進行が労働環境の悪化を招く恐れがあることへの対応として、地域農業における支援組織の確立を検討することである。第四の課題は、環境を重視した農業が営まれている農村・農家と都市住民の交流において都市部にも環境整備を啓蒙することになりうるとの観点から、「都市と農村の交流」の展開を探ることである。
調査対象地域は、大規模畑作・畜産(酪農)が展開している十勝支庁管内大樹町を選定した。そこでの実態をもとに分析を進め、本年3月に最終報告を行った。
我が国酪農は、国際化の進展、高齢化に伴う飼養戸数の減少、多頭化に伴う環境問題の顕在化等、解決しがたい数多くの課題を抱えている。こうした課題に対応するため、飼料基盤に立脚した、効率的で安定的なゆとりある経営の育成が求められている。
本事業は、このような経営体の創出を目的に、1)草地酪農再編をはかるための基本構想の策定、2)草地及び施設等の最適配置計画の策定、3)草地型酪農再編成にかかわる経済効果の普及・啓蒙事業の実施といった課題について、平成6年度から10年度までの5年間にわたって取り組んでいくものである。なお、これらの課題を検討するにあたっては、道内でも老舗の酪農地帯である渡島支庁管内八雲町を事例として取り上げている。
平成6年度は、上記1)の課題の一環である集落悉皆調査を実施した。調査対象集落については、町のほぼ中央部に位置し、酪農専業地帯となっている春日地区(農家数合計41戸)を選定している。
なお、平成7年度は1)の課題にかかわって地域概況調査を実施することとなっており、順次2)~3)の課題についても接近していく予定である。
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