畑作3品の需要・価格両面での伸び悩みの中で、野菜生産は今後拡大し、4本目の柱となることは間違いない。本研究では、一部の消費者から根強い支持を受けている広義の有機野菜が将来的に農産物流通のメジャーとなり得るのかという視点で、生産、流通、消費の各分野の実態について、アンケートと聞き取りにより半年をかけて調査・分析を行った。各分野における現状と問題点を提示し、それを総合的に捉えることにより、北海道のクリーン農業の課題と展望を考察した。
なお、クリーン農業やフードプラン等を含め、広義の有機野菜を定義した調査結果について、その一部を「北海道における有機農産物の現状と展望」調査報告書として公表している。
輸入農産物の増加や行政価格の低迷等、本道畑作をとりまく情勢の変化により畑作農業の収益性が低下する中で、バランスの取れた輪作を基本とした、持続的で生産性の高い畑作農業を確立するための諸施策の展開が必要である。そのため、これまでの各種施策に対する評価を行うとともに、今後の畑作経営における経営安定及び高水準の所得確保に向けた施策立案や取り組みの方向にかかる提案を行うことが本研究の狙いである。
本研究では、畑作主産地の市町村のなかから13町村を選定し、関係機関ヒアリング、農業者ヒアリング、畑作農家アンケート調査を行った。これらから、主要畑作市町村の農業構造の分析、今後の農業振興に対する意見要望の集約、これまでの施策・事業に対する農家からの評価の確認を行い、今後の施策展開の重点課題や留意すべき点について取りまとめた。
中山間地域では、地形等生産条件が不利であることや、担い手農家の高齢化等多くの問題を抱えており、地域の活性化のためには、生産基盤整備や生活環境の整備のみでなく担い手農家の育成確保、地域の条件に適した農業生産のあり方、農業と林業の連携等、多角的な視点からの取り組みが必要である。そのため、中山間地における農家経済の管理実態等について調査を行い、中山間地の地域活性化のあり方について検討を行い、現在国が進めている中山間地総合整備事業を円滑に進めるための方向を明らかにしていくことが求められる。
本研究はそうした問題意識に基づき、本年度は大きく3つのアプローチから中山間地問題を取り上げた。第1のアプローチは、これまで国が中山間地に対しどのような政策を行ってきたかについての検証である。第2のアプローチは、ECにおける直接的補償方式(デカップリング)に注目し、これをいかにわが国に適用するかの検討である。第3のアプローチは、具体的な道内中山間地の事例として下川町、初山別村、今金町、士別市温根別地区の4ヶ所に対し実態調査を行い、そこから問題点と課題を析出するというものである。なお、次年度は府県の先進的中山間地域の調査を行い、中山間地域に係る対策を明らかにしていく。
エネルギー供給構造の脆弱な我が国において、将来枯渇が予想されている石油等の化石エネルギーに替わって、新しいエネルギーの開発・導入に対する期待は高まっている。また昨今、酸性雨問題や炭酸ガスによる温室効果等地球環境問題への対応が求められているが、環境に対する負荷の少ない自然エネルギー等の再生可能なエネルギーの開発が急務となっている。また、農業分野においても相当量のエネルギー消費があるが、そのほとんどを石油に依存しており、新しいエネルギーの利活用は必ずしも成果が得られていないのが現状である。
このような背景のもとに、自然エネルギーの中でも農業に利用できそうな「風力」「ソーラー」と省エネの面から「コジェネレーション」にテーマを絞り、その実態や問題点を明らかにし農業分野への導入の可能性を探るのが、本調査の目的である。本年度は前年度に引き続き、まず北海道内における太陽エネルギーや風力等の資源量の分布をアメダスのデータから計算し、有望地域や地点の測定を行った。次いで、エネルギー変換のための機器や技術について、風力エネルギー、ソーラーエネルギー、コジェネレーションシステムに焦点を当てて調査を行った。なお、次年度(最終年)は農業への導入(利用)を目的に引き続き調査を実施する予定である。
本業務は、前年度に引き続いての2年目事業として、北海道開発局から北海道開発協会経由で委託を受けたものである。本道における地域の実態に即した農地の流動化と利用集積対策のあり方を検討し、実現の可能性のある望ましい方策(提言)を取りまとめることを目的としているもので、本年度は、昨年度実施した地帯別の現地調査の結果等を踏まえて、主として対策(提言)の検討・取りまとめを行うことを課題とした。
このため、業務にあたってはまず前年度に取りまとめた生産現場における農地問題と農地流動化・利用集積促進上の課題等に関して、本研究所の幹事並びに農地問題研究会ワーキンググループ(関係機関団体の職員)の意見等を聴取し、またその結果を考慮に入れて現地関係機関及び農家等を対象とした補完調査を行って、これらの成果を報告書として取りまとめ、2ヵ年間にわたる本調査業務を完了した。
なお、報告書については、後日、別途進めている自主研究の成果と合わせて公表する予定としている。
我が国酪農は、国際化の進展、高齢化に伴う飼養戸数の減少、多頭化に伴う環境問題の顕在化等、解決しがたい多くの課題を抱えている。本調査事業は、こうした課題に対応すべき新たな草地型酪農の方向について探求することを目的に、八雲町春日地区を事例対象として、平成6年度より5ヵ年間かけて実施するものである。
本年度は、1)草地酪農再編基本構想の策定、2)土地利用現況図の作成、3)先進事例農家調査、4)草地及び施設等の最適配置計画について取り組んだ。
本事業は平成7年10月に第1回中間報告、12月に現地本調査、本年1月に第2回中間報告を行い、3月に報告書を委託者に提出し完了した。なお、調査報告書については委託者側で印刷、公表の予定である。
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医学・医療の進歩に伴い、医薬品の生産額は年々増加し平成5年で5.7兆円の規模に達するといわれている。このうち、漢方製剤等(生薬、漢方製剤、その他の生薬及び漢方処方に基づく医薬品)は1,786億円と約3%を占めている。漢方製剤は合成薬に比べ比較的副作用が少なく、近年の東洋医学の見直し等を背景に毎年増加基調で推移している。しかし、こうした需要量の増加と裏腹に、原料である生薬の大部分は中国をはじめとする諸外国からの輸入に年々その依存度を高めているのが実情である(現在約90%)。
北海道は薬草について野生種の宝庫であり、栽培種にも適しているといわれているが、中でもセンキュウ、トウキ(婦人薬を中心とした漢方薬の要薬)は栽培の歴史も古く、現在も全国一の生産量がある。当調査は主にこの2品目を中心とした原料生薬の生産・取扱から生薬・漢方製剤の製造加工までの幅広い流通状況を把握するのが主な目的である。具体的には、道内産地の現地調査(歴史のある産地や新興産地等複数箇所)、消費地の流通に関わるアンケート調査・聞き取り調査(日本漢方生薬製剤協会加盟の消費地問屋、中間品メーカー、製薬会社等)を行った。
本調査業務は、ホクレンが実施しているコントラクター事業の受託対象農作業に関して、その受委託が安定的に継続されるための公平な標準請負料金設定の基礎を得ることを目的に、本年度から3ヵ年の予定で、農試研究員の協力を得て、酪農・畑作・稲作の各農業経営部門の別に、農作業サービス需要サイドの利用料金負担限界、サービス供給サイド(農作業請負業務を営んでいるコントラクター)の運営実態、比較対象農家(自己完結型・共同利用組織利用型)の費用負担実態等について調査分析を行うものである。
本年度は、酪農部門を対象に、主としてサービス供給サイド及び比較対象農家の調査を行うとともに、サービス供給サイドの調査対象農家の選定と調査対象農作業に関する所要事項の記帳依頼(調査は次年度)等を行った。次年度は、引き続き酪農部門について現地調査を実施し、費用負担問題についての分析検討を行うほか、畑作部門についての調査にも取り組む予定である。
北海道農業開発公社では、農地保有合理化事業の実施にあたり、地域ごとに標準地価格を定め、それを基準に、自然条件・社会経済条件・収量等の諸条件を比較加味して、取得農地価格の評価算定を行っているが、農地価格の低落基調の下で農家の経営規模拡大を円滑に進める観点から、この価格形成の妥当性について検討を行うこととしている。
本調査業務はその一環として、現状の農地価格の形成要因等を把握するとともに、適正な農地価格のあり方について調査検討を行うもので、本年度は、稲作地帯の水田と畑作地帯の普通畑を対象(酪農地帯は次年度に実施の予定)として実施することとしたものである。
調査検討の推進にあたっては、道内の農業関係大学等の研究者による検討委員会を設置し、農地の適正価格の考え方及び調査検討の課題と方法等について検討するとともに、検討委員が分担して調査対象農業地帯の代表的な6市町村を対象とした機関調査と農家(事例)調査を行い、またその結果等をもとに委託内容に即した検討を重ね、これらの成果を報告書として取りまとめ委託者へ提出した。