本道農業・農村が将来にわたって持続的に発展していくためには、創意工夫に富んだ担い手を育成し、農地を適切に保全・管理しつつ、安全で良質な農産物の安定供給という役割を果たすことに加えて、洪水防止、土壌侵食防止、水資源の涵養、大気浄化、自然環境の保全、緑豊かな景観の維持、保健休養の場の提供といった多面的な機能の維持・増進を図り、うるおいのある国民生活に寄与していくことが重要である。しかしながら、こうした農業・農村の有する多面的な機能の中でも国土・環境の保全等の機能は、市場によって取引されないため経済的価値を直接評価することは難しく、漠然とした価値でしか認められていない。
そのため、「農業・農村の多面的機能の評価調査に係る検討会」を設置して、農業・農村の持つ諸機能のリストアップ、評価手法の検討、評価項目の選定、評価額の算定を行った。
中山間地域は、地形等生産条件の不利、担い手農家の高齢化等多くの問題を抱えており、地域の活性化のためには、生産基盤や生活環境の整備のみならず担い手農家の育成・確保、地域に適した農業生産のあり方、農業と林業の連携等多角的な視点からの取り組みが必要とされている。中山間地域総合整備事業は、こうした様々な側面において条件が不利であるという実情を踏まえながらも、農業を中心とした地域の活性化に意欲を見せている地域を対象に、農業生産基盤、農村生活環境基盤等の整備を総合的に実施し、活性化を図るとともに定住の促進、国土・環境の保全等に資することを目的としている。
本研究事業は、この「総合整備事業」を円滑にすすめるための諸施策について検討することを目的とし、平成7年から2ヵ年にわたって道内各地の中山間地域を調査・分析し実態を把握してきた。
これまでの調査から、これらの地域の中には一定の事業成果により活性化を成し遂げている市町村と、活性化策がなかなか実現せず苦悩している市町村があることが明らかになった。そのため、本年度の調査では第一に、「総合整備事業」を導入したにも関わらず地域の活性化がなかなか達成できなかった要因は何かということ、そして第二に、その解決のために「総合整備事業」にはどのような拡充が必要なのかということについて検討し、具体的な事例に基づいた方策の提言を行った。
以上内容について3月に報告書を委託者に提出し、業務を完了した。
北海道農業開発公社では、農地保有合理化事業の実施に関し、農地価格の低落基調の下で農家の規模拡大を円滑に進める観点から、農地取得価格形成の妥当性について検討を行うこととしている。本調査業務はその一環として、平成7年度から3ヵ年の予定で、本道の主要農業地帯別に農地価格の形成要因を把握するとともに、適正な農地価格のあり方について調査検討を行うものである。
過去2ヵ年の検討調査では、稲作・畑作・酪農地帯の各地帯ごとに12市町村にわたり実態調査を実施し、各地帯ごとに農地価格をめぐる諸問題を分析することによって農地価格の評価の視点を明らかにした。本年度はこれまでの調査・検討を基に総合的な検討を行うこととし、1)稲作・畑作・酪農3地帯の個別調査から引き出される農地価格の形成の一般的条件もしくは法則性について、2)地価形成にとって要因となる収益構造について連続性に耐えうる統計的処理方法の可能性やその将来予測の必要性について、3)現実のあるいは事後の地価形成に影響を与える行政的・制度的側面(農業委員会活動や農協の金融処理等)について、4)農地制度、農地評価、農地価格の分析で目標としてきた諸外国の動向について、の4点を課題として設定した。
以上の結果について報告書を提出し、業務を完了した。
我が国酪農は、国際化の進展、高齢化に伴う飼養頭数の減少、多頭化にともなう環境問題の顕在化等、解決しがたい多くの課題を抱えている。本調査事業は、こうした課題に対応するための新たな草地酪農のあり方について検討することを目的に、八雲町春日地区を事例対象として、平成6年度より5ヵ年間かけて実施するものである。
平成9年度の主な取り組み内容は、1)草地及び施設の最適配置計画の策定、2)フィジービリティー調査の2点である。このうち1)については、昨年度取り組んだ「居住環境調査」と関連させながら、草地や施設の最適な配置状況、環境保全対策を踏まえた上での草地の利用のあり方等について検討するものである。また2)については、これまでの取組結果から導き出した、将来春日地区において中核的な存在となって酪農を担うにふさわしいと思われる3タイプのモデル(「中小規模、低投入・低算出型」「中規模、高泌乳型」「中間型」)について、厳しい情勢の中においても円滑な経営展開が成立可能かについて検討するものである。
以上について調査・検討の上、本年2月に中間報告として委託者に報告した。平成10年度は最終年度となり、事業の総括、普及・啓発活動について取り組む予定である。
※ 未登録
本調査業務は、コントラクター事業の受託対象農作業に関して、公平な標準請負料金設定の基礎を得ることを目的に、平成7年度から3ヵ年計画で、酪農、畑作、稲作の各農業経営部門別に、サービス需要サイドの利用料金負担限界、サービス供給サイド(コントラクター)の運営実態、比較対象農家(自己完結型、協同組織利用型)の費用負担実態等について調査分析を行った。
本年度は畑作部門(継続)と稲作部門(新規)を対象に実施し、畑作部門については、てん菜移植・収穫作業に係る受委託が行われている6市町を調査対象地域として、1)委託経営の移植・収穫作業と費用負担の実態、2)受託組織の請負料金設定とコストに関する調査研究を行った。また、心土破砕事業に係わる受委託について調査し、1)心土破砕の効果、2)機械装備と請負料金に関する実態調査を実施した。
以上について、本年2月に報告書の提出をもって業務を完了した。
農業を取り巻く厳しい情勢を背景に、北海道においても農協の合併が進んでいるが、系統による推進、農協経営の悪化、農協法の改正等の影響により、この動きは今後更に加速されるものと予測される。農協の大型合併が進むにつれて、新たに経済連との役割分担を含めた事業調整が求められている。
こうした事業調整のあり方、経済連の役割等について検討するにあたり、大型合併農協がどのような経済事業展開を指向しているのか、また、経済連に対しどのような役割あるいは農協対応を期待しているのかについて明らかにすることを本調査の目的として設定した。具体的な調査内容としては、1)農協経営全般について(合併目標・計画に対する結果及び進行状況等)、2)事業全般について(合併によって解決された課題や新たに発生した問題・課題、農協旧施設の活用と再編計画、物流の合理化等)、3)営農指導事業について(将来的に目指す体制や役割、職員養成確保等)、4)購買事業について(仕入れ窓口や在庫管理の合理化、銘柄・規格の集約化、商系対策等)、5)販売事業について(単協直接販売について、生産組織及び生産組織と単協の関係の変化、産地形成上の新たな取り組み事項等)の5分野である。また、調査対象は、稲作地帯からいわみざわ農協と北空知広域連、畑作地帯からようてい農協とオホーツク網走農協、酪農地帯から別海町4農協(別海、中春別、西春別、上春別)、北渡農協、混合型地帯からとうや湖農協を取り上げた。また、府県の先進地事例として、愛知県、鹿児島県、宮崎県の「独立派」経済連を取り上げた。
以上の結果について、平成10年3月末に報告書を提出し、業務を完了した。
ガット・ウルグアイラウンドの交渉の過程で、わが国の農畜産物価格の相対的な高さが問題とされた。この交渉の過程で示された新農政プランにおいては、他産業並みの就業条件を確保しながら農畜産物価格の低減を図る担い手として、大規模な農業経営体の設立が目標とされた。その規模は必ずしも具体的に提示されていないが、家族経営の延長線上に措定されている個別経営体を例にとれば、都府県の水田経営では10から15倍の規模、10~15haが考えられている。
都府県に比べると規模の大きな北海道では、さらに大規模な経営体の創設によって農畜産物価格の低減を図ろうとしている。平成6年6月に北海道農政部が示した「北海道農業・農村のめざす姿」に出示された作目別経営類型では、稲作で24ha、畑作で54ha、フリーストール酪農経営で経産牛100頭規模としている。実際にこうした大規模な農業経営もみられるが、多くの農業経営はこの目標に到達するには従前の平均規模の数倍、地域によっては10倍以上の拡大が必要となり、果たしてこのような大規模経営体が広範に成立するのかという問題に直面せざるを得ない。
本調査はこうした問題意識に基づき、現在相対的に大規模な農業経営を営んでいる経営体を対象として、いかに拡大を進めてきたのかを調査・検討することによって、今後大規模経営体を設立するための条件整理を行うことを目的とした。調査対象は、水田は北村(空知支庁)・当麻町(上川支庁)、畑作は更別村(十勝支庁)、酪農は別海町(根室支庁)・中標津町(同)とした。
以上結果について北海道開発局にて報告会を行い、報告書の提出をもって業務を終了した。
※ 未登録
農林水産大臣主催の懇談会「農業基本法に関する研究会」が、平成8年9月にそれまでの検討結果をまとめた報告書を提出した。これを受けて農林水産省は「新基本法検討本部」を設置し、新たな基本法の策定に向けて本格的に動き出すことになった。その中で現在、「食料・農業・農村基本問題調査会」が設置され、新しい基本法のあり方について検討が進められている。
「農業基本法に関する研究会報告」は、現行基本法の今日的評価と新しい基本法をめぐる論点整理の2つの部分からなっている。しかし、基本法農政の下で、国内で例外的に発展してきた北海道農業に関する記述はほとんどなく、現在の農業基本法に代わって新たな基本法が必要な理由も不明確なままである。
しかしながら、新しい農業基本法が必要となった背景には、WTO協定批准の問題があり、また基本法農政下の北海道農業の総括をなくして、北海道にとって有意義な新農業基本法は成り立ちえない。
そうしたことから、本研究は、新たな農業基本法が必要となる理由を明らかにし、基本法農政下の北海道農業の展開と現状を総括するとともに、それらを踏まえ、新農業基本法の策定に向けて北海道農業の立場から提言を行った。それら結果について、近日中に報告書を作成・提出し、業務を完了する予定である。
国営畑地総合土地改良パイロット事業北見地区は昭和45年度に着工したが、その後地元からの要請に基づき昭和53年より畑地かんがい事業が組み入れられ、平成9年をもって完了した。
本調査は、この畑地かんがい事業の営農面での効果を検討するために、3つのアプローチを取った。第一のアプローチは、畑地かんがいが実施された地域の農業展開を多面的に解析し、それに畑地かんがいがどのような影響を及ぼしたかを考察することによって、畑地かんがいの営農面での経済効果について検討することである。第二のアプローチは、農家調査によって、既存の統計データ及び関係機関の資料には表れない営農展開の実態をとらえることである。第三は、畑地かんがいが実施された地域と未実施地域を比較検討することで、畑地かんがい実施地域の営農展開の特徴を明らかにすることである。これらのアプローチに基づき、分析対象とする北見市の農業集落を1)畑地かんがいの先進的集落、2)畑地かんがいの後発的集落、3)畑地かんがい未実施の集落に区分し、既存統計データによる比較検討を行ったうえで、調査対象集落を設定し農家調査(60戸)を実施した。
以上の調査の結果について、本年3月に委託者に報告書として提出し、業務を完了した。
農業情勢が一層厳しさを増す中にあって、道内農家は一層のコスト削減努力を強いられている。コスト削減で真っ先に思い浮かぶのは機械・施設投資の削減か、肥料・農薬といった農業資材の削減であろう。そして収量に直接影響を及ぼす肥料・農薬に対し、機械・施設投資、そして土壌改良素材は、当面の急場を乗り切るために真っ先に削減される傾向が強い。そうした状況にあっても、農の根幹である土づくりを、農家はどのように考えているのか。
本調査研究ではそうした問題意識に基づき、土づくり推進協議会の委託により、水田・畑作・酪農の各作目について、農家の土づくりに関する意識を把握するためのアンケート調査と、価格の大幅下落と不作に直面し、現在最も厳しい状況に置かれている水田地帯の空知管内由仁町において昨年12月3~6日の間33戸の農家の聞き取り調査を行った。
その結果について、平成10年3月に北海道土づくり肥料・資材推進協議会総会にて発表し、業務を完了した。今後は協議会としても畑作・酪農について同様のアンケート調査を行い、土づくり資材推進に役立てる見込みである。
※ 未登録
北海道の港湾は本道と本州を結ぶ物流の拠点として、さらには本道と海外との物資輸送の拠点として重要な役割を担っている。今後港湾の整備を計画する上で、利用貨物の量的・質的動向や、輸送手段・経路を調査し予測することが、効率的な投資を行うために必要な要件である。
本業務においては、本道の港湾を利用する物資のうち最大の比重を占める農業関連貨物を対象にして、特に道東地域港湾とのかかわりを調査解析し、港湾整備の将来方法を検討する。本業務は平成9年度と10年度の2ヵ年にわたり実施の予定であるが、平成9年度の概要は以下の通りである。
第一に、基礎データとして道東地域における農畜産物生産動向について検討した。具体的には、地域の主要な生産物である小麦、馬鈴しょ、てん菜、豆類等の畑作物、乳牛、肉牛、豚等酪農畜産品、たまねぎ、にんじん、スイートコーン等の野菜を含む合計22品目について、戦後50年間の生産の変遷をたどり、今日の日本の食糧需給における位置づけを明らかにした。さらに今後の生産動向についても考察を試みる予定である。
第二に、農畜産物の生産工程について検討した。具体的には、上記の22品目について生産者段階における一連の生産工程を各品目ごとに調査解析し、道東地域では置かれている環境条件に適合する経営形態と技術が採用され、全国的に見ても優位な生産活動が行われている実態を確認した。
第三に、生産物の流通システムについて検討した。具体的には、農家が生産物を出荷した後、誰がどこに運びどのような処理が行われて最終的に消費者のもとに届くかという、主要生産物に関する生産地点から消費者にいたるまでの一連の物の流れについて明らかにした、また、農業生産に関わる飼料・肥料等の資材類についてもメーカーから生産者に至る経路を概括的に調査している。
以上の結果を踏まえて、平成10年度は重点品目について具体的な品物の流れを現地的に追跡し、品目ごとの輸送手段・輸送量・経路を調査解明して、将来の物流基盤整備を検討する予定である。