我が国の酪農は、国際化の進展、高齢化に伴う飼養頭数の減少、多頭化に伴う環境問題の顕在化等、解決しがたい多くの課題を抱えている。本調査事業は、八雲町春日地区を事例として、こうした課題に対応すべく新たな草地酪農のあり方について検討することを目的に、平成6年度より5ヵ年間かけて実施したものである。本年度は最終年度であり、これまでの取り組みの総括が主要な課題となった。
まずはじめに、調査対象地である春日地区が直面する課題について検討した。次に、それら課題を解決すべく、春日地区における酪農再編構想について検討した。最後に、先に見た諸課題に対応した対策について、一定の見解を明らかにした。それら分析結果を取りまとめ、本年2月、委託者側への報告書の提出をもって5年間にわたる本事業の業務を終了した。
系統メーカーでは「土壌改良資材」の用途別並びに作物別使用状況把握調査を実施して適正な需要動向を把握するため、土づくりアンケート調査を実施する。この土づくりアンケート調査票の作成、アンケート調査票の集計分析並びに集計分析手法の指導助言を、稲作・畑作・酪農の部門別に当研究所が行った。
なお、本年3月をもって業務を完了した。
本業務は、本道の畑作・酪農生産の中心地体である道東地域(十勝、釧路、根室、網走の4支庁管内)における農畜産品及び資材類の物流実態について、特に港湾との関係において解明することを目的として、平成9年度から実施している。
平成9年度は1)道東地域における農畜産物の生産動向、2)農畜産物の生産工程、3)生産物の流通システムについて、おもに統計資料ほかの基礎的データを収集し、解析した。
平成10年度は、道東地域における農業関連物の流通実態と動向について、つぶさに現地調査を行い、具体的な物流の実態を調査した。調査の方法は、物流に携わるすべての関係機関を網羅して実態的なデータを入手することを目標に、管内全農協及び中心的な輸送会社に対するアンケート調査とその後の補足的な聞き取り調査をはじめ、農産品加工メーカー、肥料メーカー、飼料メーカー、港湾施設関連機関における聞き取りや検証を実施した。
1990年代中盤以降、北海道では耕作放棄地の増加、更に経営耕地面積の減少といった動向に象徴されるように、農地の利用状況が大幅に変化してきている。こうした現象は、中山間地域をはじめとした条件不利地域で特に著しくなっているものの、それに限らず中核地帯においても発生しているのが実態である。本事業はこうした農地の粗放的な利用が認められるいくつかの地域の実態分析をもとに、農地の保全を踏まえた公益的・多面的利用にかかわる諸対策について明らかにすることを目的とするものである。
本事業ではまずはじめに農地の利用に関わる諸対策について、具体的な取り組み事例をピックアップしながら検討した。次に、こうした対策が実際に展開している地域をヒアリング調査し、そこでの実態や課題について明らかにした。調査対象地域の選択にあたっては、農業構造の異なる複数の地域を取り上げること、様々な取り組みの内容をできる限り幅広く取り入れることに留意した。最後に、総括として1)農地利用の再編と利用主体、2)集落営農の再編と農地管理、3)農業公社による農地管理、4)農地の多面的利用について、各実態調査の結果を踏まえながら取りまとめた。
なお、本事業は委託者側への報告書の提出をもってすでに終了している。
十勝地域の農業もWTO体制下で農畜産物の輸入自由化等、国際化の影響を受けるとともに、地域的課題としての農村の過疎化、担い手の減少、高齢化の進行、農業所得の減少等を抱えながらも、耕種・畜産あわせた農業粗生産額は、昭和59年以来15年連続2,000億円台を記録しており、全道の20%を占めている。しかし、農畜産物の基幹作目価格が低迷する中、農業粗生産額は平成6年以来、横ばいを続けている。その中でも野菜の生産額の伸びが大きいこと等から、収益性の高い野菜の導入は、十勝農業を発展、維持するためにも急務であるといえる。
これらの状況を踏まえ、帯広開発建設部では、高収益作物導入に対処するため、農地の排水処理や畑地用水の確保、農地の再編整備等ハード事業とともに、営農支援システム等ソフト事業の強化を図ってきた。すなわち、十勝地域の1市6町村に農業振興センターを設置して、畑地灌漑試験ほ等を活用し、高収益作物の新規導入に向け、各種試験の実施、品目の選定、栽培技術の習得、さらに、選定した品目を地域に定着・普及させることを目的とした活動を平成8年より行ってきた。
当研究所は帯広開発建設部からの依頼により、前述の支援活動をより一層効果的なものとすることを目的として、十勝地域1市6町村の農業振興センターが検討している新規作物、とりわけ収益性の高い新しい作物導入に関し、生産流通の実態、栽培技術上の課題及び各農業振興センターのこの事業への取り組みの現状を調査し、それに基づく今後の需給動向を踏まえた見通し等について提言を行った。
十勝管内は畑作と酪農を中心として、国内の食糧生産・供給基地としての機能を果たしている。管内の生産物の一部は道内で流通・消費されるが、大半は首都圏はじめ道外の市場に移出されている。これら農産品の道外市場への輸送手段やルート等を的確に把握することは、物流の合理化を推進し、管内農業生産を振興する上で重要である。
本業務は北海道開発局帯広開発建設部からの間接委託を受け、農産品輸送道路の整備を検討するため、管内の農業生産品の物流に関わる基礎資料を作成することを目的として実施した。
調査は十勝管内の主要農産品16品目について、産地から道外市場に至る物流を追跡し、実態を定性的・定量的に把握することを試みた。調査の方法としては、農林水産省や北海道発行の各種統計資料を基礎資料として使用したほか、管内の農協、輸送会社はじめ農産品の生産・輸送に携わる関係機関に対して聞き取りや検証を行った。
道農業改良課では、経営感覚に優れた効率的でかつ安定的な経営を育成するにあたり、農業改良普及センター等が利用する経営改善指導のための資料、並びに道が農業情勢の変化に適宜対応し施策検討するために利用する資料の作成に取り組んでいる。本事業は、こうした資料の作成に寄与すべく道内農家の経営動向の調査、分析、並びにその結果の提供を目的としたものである。具体的には、計数処理に対応可能な諸指標を保持する農業簿記記帳者の経営概況や経営収支に関するデータを収集・集計し、これらを素材に先に述べた資料の作成に寄与すべくデータの諸分析を実施することとしている。
本年度は、道農政部農業企画室が収集した800戸のデータ(平成5年の大冷害を契機に、道内農家の経済動向を的確に把握するため、関係機関を通じ平成5年から平成9年までの5ヵ年にわたって継続して収集されたもの)を参考に、情勢の変化に伴い農家の経済状況がどのように変化し、またどのような課題を抱えているのかを明らかにした。
以上の分析結果を取りまとめ、本年2月、委託者側への報告書の提出をもって、本年度の事業は完了した。平成11年度以降については、使用するデータを改め再度分析することになる。次年度以降使用するデータは、道内300戸の農家を対象に普及センターによって収集されるもので、調査内容がより緻密となり、また項目も多岐にわたることから(概況調査、経営状況調査、財務状況調査からなる)、今回以上に精巧な分析結果が得られるものになると思われる。
北海道の農村では集落再編の動きがみられるが、これによってどのような集落機能の形成が行われているかという点については、これまでほとんど調査が行われていない。したがって、今後の北海道の農村社会のあり方については、明確な方向付けを与えうる基礎的な統計やそれに基づく知見が著しく不足しているといわざるを得ない。その反面で、事態は極めて流動的であって、過疎化や高齢化に伴う集落消滅や耕作放棄地の発生といった現象も各地で散見されるに至っており、まさに今日的な緊急課題として、農村集落への具体的な対応が求められているのである。
以上のような現状認識のもとに、この調査研究では地帯別、農業形態別の特色を反映しつつ、それぞれの地域のニーズに応えてどのような動向や先駆的な取り組みが試みられているかを具体的な町村について調査し、今後の本格的な実態解明のための基礎的な知見を提供した。具体的には、東川町・鹿追町・標茶町をモデルとして、農業集落の実態や農村地域における農業者や都市住民等の行動について調査し、集落機能の維持増進のあり方や交流人口をふまえた定住条件整備のあり方の検討を行った。また、農村地域における生活環境施設の整備にあたっては、高齢化の進行や北海道福祉のまちづくり条例制定の趣旨を踏まえて、高齢者や障碍者に配慮した生活環境施設の整備を効率的に進めるための方策等の検討を行った。
従来、北海道の稲作経営に関しては安定しており、経営内容も規模(経営面積)に比例した比較的単純な内容で、問題として残るのは離農跡地再配分を主体とする農地問題くらいとする受け止め方が一般的であった。減反政策の中にあっても、生産者価格は府県の零細な稲作経営のコストをベースとする全国一律価格が設定され、反収さえ確保できれば北海道の稲作経営の優位性は誰の目からも明らかといえた。
しかし、平成8~9年の稲作農家経済の比較対比から、従来考えられていたのとは違って、北海道の稲作経営は構造的に脆弱な側面を持っていることがわかった。北海道全体が稲作限界地帯、言い換えれば条件不利地といえるが、そのような気候条件の中で年1回の収穫にすべてをかける、極めてリスクの高い経営であることを感じる結果となった。
平成9年は、確かに北海道の稲作農家にとって、不作と価格低迷のダブルパンチを受けた厳しい年であった。そして2つの要素のうち価格に関しては、今後もますます厳しさを増すと考えられる。生産資材等コストがじりじりと上昇する中で、今後地域における適地適作を踏まえた稲作経営のあり方を真剣に検討する必要がある。
本調査ではそうした問題意識を踏まえ、現在各地域で取り組まれている、生き残りのための諸政策、府県における稲作の変動と参考事例、そして道内各地2,000戸の稲作農家アンケート分析から、道内稲作農家の現状と課題を整理した。
昭和63年の日米牛肉貿易協定を皮切りに、平成3年移行牛肉貿易が自由化に移行して10年近くの歳月が経過した。この間、わが国の関税率は日米・豪協議により平成3年の70%から年々10%近く引き下げられ、平成5年50%、平成6年以降はWTO関税交渉ベースに移行し、平成10年42%、11年40%、そして12年には38%となる。
本調査では、このような自由化移行の状況を踏まえ、この間の変化様相を特徴的に再確認した上で、牛肉生産の中で最も危機に晒されると懸念していた乳用種牛肉生産に焦点を合わせ、実態調査を基にその存立条件を明らかにしていく。平成10年度~11年度の2ヵ年にわたる委託事業であり、第1年度の本年度は4農場(網走管内「育成・肥育型」のA農場、日高管内「一貫肥育型」のB農場、同「一貫肥育型」のC農場、十勝管内「育成・肥育型」のD農場)の平成7年~平成9年の3ヵ年のデータを基に、経営収支、生産的収支、増体コスト分析等について分析を行った。次年度も継続して調査を行う予定である。
これまでの水稲種子は、政府米価格を中心に種子生産に関わる「掛かり増し経費」を加算して算定してきたが、米価の大幅な低落のもとで種子価格の水準や算定方式に対する意見が出始めていること、価格設定の基礎となってきた政府米価格自体が、自主流通米価格を反映させる等により変動的になっていること、機械化の進展等により「掛かり増し経費」の算定見直しが必要となっていることといった情勢から、種子購入者や部外の納得の得られる種子生産価格の算定根拠、考え方を総合的に見直す必要がある。
そこで、ホクレンからの委託事業(平成10年度単年度事業)として、種子価格算定の根拠となる種子生産の実情と所要費用の実態並びに安定的な生産の条件を明らかにすることをテーマに調査研究を行った。具体的には、1)水稲種子生産委託農協における概況調査、2)抽出による水稲種子生産農家の生産・所要経費実態調査を実施し、本年3月の報告書の提出をもって業務を完了した。
中央段階の営農改善評価委員会を通じて農林水産省に報告することを目的に、国営土地改良事業の完了間近な地域(全国7ヵ所)を対象に、土地改良実施による営農改善の足取りと成果を整理するとともに分析・評価する事業が行われた。その対象地域の1つとして富良野市・東郷地区(かんがい排水事業)が選定されたことにより、旭川開発建設部ではこの事業を行った富良野市に、関係機関による「東郷地区営農改善評価委員会」を設置することとなった。
この委員会に中立的立場の学識経験者として当研究所常務理事が参画した。その際、調査の実務を受託した地域計画センターが行うアンケート調査の設計、関係機関・先進農家のヒアリング調査、既存資料・情報の収集結果をもとにしたデータの分析・評価を実施するとともに、今後の改善方向等について、所定の報告書作成のために必要な助言を行った。
※ 未登録
東川町は、農業・農村がめぐる内外の諸情勢が急速に変動している中、21世紀を展望した魅力ある農業・農村を構築するため、「農業基盤確立農業構造改善対策」を計画している。
この計画に伴い、平成11年3月5日~9日の5日間、延べ56名の調査員による、東川町全農家570戸の意向調査を当研究所が実施した。その結果については現在集計業務を進めているが、この調査を通じて農業者の意向を的確に把握することにより、東川町では適正な農業構造改善計画の樹立、農業基本計画の策定、地域農業の再編強化等の農業構造改善を図る基礎資料にする考えである。また当研究所では今後、補足調査や現地関係者との検討会を開催しながら、調査研究報告書を本年5月末までに提出する予定である。