近年、国際的なレベルにおいて、持続的・環境保全的な農業生産への転換が求められている。我が国においては、昨年7月の通常国会において「食料・農業・農村基本法」が制定され、その中で「農業の多面的機能の発揮」「農業の持続的発展」が謳われている。また、関連して「持続性の高い農業生産方式の促進に関する法律」「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」「肥料取締法の一部を改正する法律」が成立した。こうした中で、北海道においても持続的・環境保全的な農業の推進が求められるが、そのための条件として農産物の販売・流通面の整備が不可欠である。
これに対し、「農林物資の企画化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律案」が成立し、「有機農産物」の流通整備については一定の動きがあるものの、「有機農産物」の基準を満たさない「特別栽培農産物」については「ガイドライン」があるのみで甚だ不十分な状況といえる。特に、寒冷な気候や規模等をはじめとする諸生産条件に規定され、「有機農産物」の生産・販売を軸とする展開が困難な北海道においては、「特別栽培農産物」の流通整備が望まれるところである。
そこで、本調査では、「北海道における持続的・環境保全的農業推進の方策、「特別栽培農産物」の流通整備の可能性について検討することを目的とし、国内外の有機農産物・特別栽培農産物の流通実態について調査を行った。調査対象は、地理・気候条件、経済状況、有機農産物流通や有機農産物認証制度の整備状況等を比較する意味で、日本国内の他、米国(カリフォルニア州)、欧州(イギリス南部、ドイツ南部)、アジア(フィリピン)とした。
本業務は、中間報告を平成11年12月に実施し、報告書を平成12年3月に提出し完了している。
十勝地域の農業は、規模の拡大が進み土地の利用は向上しているが、労働生産性は低位にある。畑作、酪農経営は共に政府管掌品目のなかで、これまでは価格の安定化が図られてきたが、今後はWTO体制のもと、しかも新しい農政改革の枠組みの中では価格政策が容易にならない状況にある。従って一層の規模拡大による所得の確保、畑作における集約作物の導入等による所得の確保、効率的な営農技術体系による生産コストの低減等の方向に取り組む必要がある。
しかし、農業・農村地帯の労働力事情は高齢化、少子化、後継者不足等で極端に不足をきたしており、規模拡大が困難であり、また、集約作物として野菜等の導入については、機械化が容易でないことや細かな作業のため、労働力不足の問題でなかなか導入・定着が進まない実態にある。加えて今後の各作目の価格の見直しも流動的な状況にあり、農業経営の方向について模索しているのが実態である。
今回の調査は、このような背景のもとに、十勝地域における農業経営の実態を規模別に調査し、作目別収支や経営への貢献度を見るとともに、営農技術と労働力の実態を調査し、それらをもとに将来における効率的な営農類型についての試算を行う等の基礎資料とするのが目的である。
本年度は酪農経営4戸・畑作経営7戸の各農家から平成11年度の農作業日誌と平成10年度の経営記録の提出を受け、農作業についても品目別・作業別・旬別に作業時間を分類集計したが、調査開始時期が年度途中からであったため、一部は次年度に繰り越しとなった。経営記録については5戸について10年度の発生主義により部門別(品目別)収支に分解した。次年度は農作業調査の補完と、残り6戸の経営調査を完結させ、調査結果のデータを基に将来における高収益作物導入を志向した効率的な営農計画についてのシミュレーションを実施する予定である。
本業務は北海道開発局の委託により、本道畑作・酪農の主産地であり、かつ近年は野菜生産が急速に拡大しつつある道東地域(十勝、釧路、根室、網走の4支庁管内)を対象として、農業関連物の物流における港湾の役割を解析した。特に十勝港にスポットライトをあて、地域の経済構造や農業生産との関連において、将来の発展方向を検討した。
業務は平成9年度から11年度までの3ヵ年間実施したが、各年の概要は以下の通りである。平成9年度は道東地域農業の生産動向、品目ごとの生産工程、農産物の物流システムについて基礎的なデータを収集した。平成10年度は農業関連物の物流実態と動向についてつぶさに現地調査を行った。平成11年度は十勝港に焦点を当てて、港湾の発展の経緯と現状をふまえ、地域産業とりわけ農業との関連における将来の可能性を検討した。さらに、港湾の管理運営のあり方と国、道、市町村の役割について、財政面の分析を通して検討を加えた。
道農業改良課では、経営感覚に優れた効率的でかつ安定的な経営を育成するにあたり、農業改良普及センター等が利用する経営改善指導のための資料、並びに道が利用する農業情勢の変化に適宜対応することを目的とした施策検討のための資料の作成に取り組んでいる。本事業は、こうした資料の作成に寄与するため、道内農家の経営動向の調査・分析、並びにその結果の提供を目的に取り組むものである。具体的には、計数処理に対応可能な諸指標を保持する農業簿記記帳者約300戸の経営概況や経営収支に関するデータを収集・集計し、これら素材に先に述べた資料の作成に寄与すべくデータの諸分析を実施することとしている。
本年度はデータ収集の初年度にあたることから、残念ながら各指標の推移について明らかにすることができず、したがって経営形態別に農家経済の概況について分析することが主たる検討課題となった。平成12年度以降については、経営形態別の経営概況及び各種経営指標の分析に加え、複数年次のデータの入手が可能となることから、時系列における経営概況の比較について検討する予定である。
平成3年の牛肉貿易自由化開始以降、10年が経過した。この間、牛肉の輸入関税枠は、平成3年の70%から12年には38.5%まで引き下げられ、今日を迎えている。
このような自由化移行の状況を踏まえ、本調査では、当時、牛肉生産の中で最も危機に晒されると懸念された乳用種牛肉生産に焦点を合わせ、その存立条件を明らかにした。
1年目の調査では、肉牛肥育経営の実態調査(家族型3農場、法人型1農場)と分析を通して、北海道での「増体コスト」は、農水省生産費調査「大規模層の85%水準」を実現しており、厳しい現局面を乗り切っていることが確認できた。
2年目の調査では、家族型農場に焦点を絞り、家族労働力2~3人で1,000頭規模の肉牛農場の操業が可能か、「家族型農業における規範的存立条件」と「経営モデルの策定」に重点を置いた。
本調査は、本年1月の報告書の提出をもって終了した。
近年の農村地域では、農村総合整備事業や中山間地域総合整備事業等により農村の生活環境施設が整備され、各地域においてその施設が活用されているが、都市と農村の交流をめざした施設の整備や、市民農園等、地域だけでなく都市と農村との共生といった新しいコンセプトから農村の空間を都市住民にも開放する動きが加速しており、また、農村の機能を活用した農作業体験や農産加工実習教育、高齢者の経験を活用した教育、生涯教育、さらには地産地消に積極的に取り組む動き等が見られる。
今後、農村地域の活性化を進めるにあたっては、これらの動向に的確に対応し、施設をより一層有効に活用することにも留意する必要がある。
このため、農村生活環境施設の整備を契機として農村地域の活性化を高めている地域を対象として、農村生活環境施設整備の変遷と地元ニーズの変化傾向及びその背景並びに施設の活用・利用方法、活性化の取り組み等について調査を実施し、施設の効果的、効率的な活用のあり方、整備の方向性等の検討を行った。
調査対象市町村は、美瑛町、栗沢町、標茶町、中標津町、鹿追町とし、市町村の関係機関に対する聞き取り調査、地元住民に対する聞き取り調査等を行った。
農業を取り巻く情勢は、食料・農業・農村基本法が制定され、また、次期WTO交渉の開始が目前に迫る等、大きな転換期を迎えている。
このような状況のなかで、本道農業・農村の活性化を図るためには、農家の経営に対する将来方向に即した新たな施策の検討が必要であることから、施策検討の基礎資料を得るために、全道の全農家を対象とした営農意向調査(アンケート調査)が実施された。アンケート調査票は、平成11年8月中旬に全道212市町村の全農家63,273件に配布され、回収件数は34,238件(回収率54.1%)であった。このうち記入不備票を除外した集計対象件数は35,558件である。
当研究所は、これらの調査票のデータを入力整頓し、市町村別データ表、支庁別統合データ表、全道統合データ表を作成、基礎データとした。さらに「全道営農意向アンケート調査分析支援システム(データ集計・作表・印刷・検索プログラム)」の設計・開発を行い、データ表に対して、経営形態別、経営主年齢別、後継者の有無別、及び将来の規模拡大縮小意向別の集計を行った。
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農道整備事業については、計画時に所定の手法により効果の算定を行っているが、近年公共事業の費用対効果を含め事後評価が問われてきており、農道事業の完了後の効果についても発現状況を検証する必要があるため、農道整備後の地域の農業情勢の変化及び道路の利用状況を把握するための調査を行った。
当研究所が担当した調査分野は、現況効果算定手法以外の効果について検討を加えることを目的としたものである。調査の対象地区は、芽室町・音更町にまたがり昭和53年に着工し平成3年に完成した十勝中西部地区農道と、別海町で昭和57年から平成2年に実施した別海南部1・2期地区事業の2地区であったが、既に調査完了済みの空知北部地区広域農道についても検討を加えた。
現在、日本では青果物流通にかかる包装資材は段ボールが主体であるが、ヨーロッパでは環境に負荷の少ない反復利用可能な通いコンテナの利用が進んでいる。21世紀を展望し流通の合理化や環境問題を踏まえた、低コストでかつ環境に負荷の少ない、新たな青果物物流システムを確立することが急務である。
調査は、第一に青果物流通における物流コストについて、既存統計資料を利用し分析した。第二に通いコンテナを実際に利用した実験調査(経済コスト調査:レタス・だいこん・ぶどう・にんじん、品質変化試験:レタス・ぶどう・だいこん)と、既に通いコンテナを利用しているかぼちゃとピーマンについて産地・流通・小売の実態調査を行った。
本業務は、北海道の畑作地域における農地整備の各種制度を制定過程に沿って整理するとともに、近年の農業情勢の変化と農業者の意向を踏まえ、今後の農地整備手法について検討することを目的としたものである。なお、ここで畑作地域とは、稲作及び酪農地域等を除いた地域を主たる対象としており、具体的には十勝及び網走の大規模畑作地域、富良野周辺及び道央・道南の中小畑作地域を想定している。
検討の進め方として、まず第一に農地条件に関する事業制度の変遷を整理することとし、面的拡大を目的とした農地造成事業と、農地条件の質的改善を目的とした既耕地改良のための事業及びその両者の一体的整備を目的とした総合事業の区分を行った。第二に、制度的な改変に至った畑作地域における農業情勢の変化について整理を行った。第三に、今後の農地整備改良の方向性を検討した。第四に、北海道の畑作地域の実態に即した農地整備のための法制度体系を検討した。第五に、本業務の主題である北海道の畑作地域における農地整備手法の検討を行った。
以上内容について平成12年2月に報告書を提出し、本業務を完了した。
北海道農業開発公社では、酪農地帯の現状を踏まえて、平成6年度から釧路の太田農協管内でコントラクターの実験事業に取り組んでいるが、全道的に北海道農業開発公社としてコントラクター事業への取り組みが実現可能か否かを検討している。
公社からの委託を受け、本年度は釧路・根室管内での実態調査を実施した。まず、農家調査を行う中で、酪農家がコントラクターに対し何を期待しているかを明らかにし、コントラクター事業をどのように運営すべきかを検討した。
現在コントラクター事業に取り組んでいる根室管内中春別農協と釧路管内浜中農協の実施状況を調査した結果、コントラクター事業の成立条件として考えられることは、まず第一に年間を通して作業を継続して実施できるかどうかにある。特に、冬期間の作業確保が重大な課題となる。第二の問題は、経費の中で機械費の占める割合が大きいが、この機械費をどれだけ抑えることができるかが鍵となっている。そして第三の課題として、地元の土建業者といかにタイアップして事業を実施するかにある。何故ならば土建業者の場合、農作業以外の土木事業、運搬事業に従事できるからである。
また、全道組織である公社の場合、区域を越えて事業の実施が可能であるので、酪農地帯として根釧と合わせて天北との関係を明らかにする必要がある。そのため、平成12年度は継続して天北地帯の調査を行い、この両者を合わせて農業開発公社としてコントラクター事業への取り組みの結論を出すこととしている。
食料・農業・農村基本法の制定に伴い、わが国農政はこれまでの価格支持政策から市場原理の重視とそれに伴う直接所得政策の導入、すなわちデカップリング政策を採用する方向にある。特に、中山間地域等条件不利地域に対する特別な支援については、新基本法にも明確に位置付けられ、また、中山間地域等に係る直接支払については平成12年度からの実施が予定されているところである。
北海道農業の維持・発展のためには、北海道農業が持つ府県とは異なる条件不利性について、その程度を明らかにするとともに早期の補正が必要である。
そうしたことから、本業務は、北海道農業の条件不利性の検証とそれを補正するための効果的な対策について検討することを目的とした。なお、検討にあたっては、本業務がEUの事例との比較あるいは府県農業との対比等、その内容が多方面にわたるとともに、検討を進めるうえで多くの知見が必要であることから、学識経験者からなる検討会を3回開催し検討を進めた。
検討の進め方として、第一に、デカップリング政策の先進地であるEUの事例を調査・検討した。第二に、北海道が持つ自然的、社会的、経済的条件についてその特性を把握して、府県の中山間地域農業が持つ条件不利性とは異なる北海道型の条件不利性についてその内容を明らかにした。第三に、北海道等条件不利地域対策として農業基盤整備事業の円滑な推進を図るため効果的な手法を検討し、その具体的な内容を示した。
以上内容について平成12年3月に報告書を提出し、業務を完了した。
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酪農の継続的発展を確保する上で、後継者の確保及び担い手農家への土地集積がこれまでにもまして重要となっており、経営体の生産面での機能の向上のみならず、居住環境についても質的向上を図りつつ、離農跡地の有効活用等を図る必要があるが、個々の農家を単位とした取り組みだけでは限界があることから、複数の農家による法人設立または協業化を通じたさまざまな整備手法の確立が求められている。
このようなことから国は、平成11年度から新世紀に対応した生産性の高い効率的な経営体の育成及び酪農基盤の強化に資するため、農畜産業振興事業団の指定助成事業として「新世紀対応酪農基盤確立調査事業」を実施することにした。当研究所は平成11年9月から3年間にわたり、社団法人日本草地畜産協会から当該調査事業の一部、基本構想等検討業務を受託することとなった。策定への道程は「新たな酪農・乳業対策大綱」等を踏まえ、自然循環機能を維持増進する持続的な酪農生産を基本に酪農先進地域を対象とした生産環境及び居住・畜舎周辺環境の総合的な整備に絞ることとして推進するが、調査検討委員会の審議を経ながら策定し、構想案にまで収斂していく。
なお本年度は、平成12年3月に「基本構想策定のフレームの検討」を報告することができた。
1990年代以降、農産物価格支持政策に対する抑圧が威力を増すにつれ、北海道における基幹作物の価格は軒並み低下し、それに伴い道内各地の農村部では、農業後継者の未定着、農家の高齢化、離農の増加、ひいては農地の粗放化が顕著になってきている。一方でこのような事態に対し、いくつかの地域では、地域資源である農地の粗放化に歯止めをかけようと、自治体や農協が先導役となって独自の農地保全対策を講じてきているのも事実である。本事業は、このような市町村段階における農地保全対策の実践事例をいくつか取り上げ、それらの実態を明らかにしつつ、その上で北海道農業開発公社がこうした市町村での取り組みに対し如何なる支援体制を付与することが可能であるのか検討していく。
ここで取り上げた実践事例は、新潟県津南町と北海道下川町である。これらの地域における実態を確認した後、市町村段階の取り組みに対し北海道農業開発公社が如何なる支援体制を付与することができるのか、実践的な立場から検討することとした。具体的には1)農地保有合理化事業をめぐる役割分担、2)農地保全・管理への直接介入の2点となる。なお、これら2つの支援体制については、抽象的に論点を列挙するだけでは要点の理解に結び付かないと思われるので、前者に関連する事例として北海道清水町の実態を、また後者に関連する事例として「有限会社ファームランド広島」の実態をそれぞれ補論的に取り上げながら説明することとした。
以上の点について検討し、本事業は委託者側への報告書の提出をもって終了した。
常呂町は、高齢化や後継者問題そして農産物輸入自由化等、課題が山積している状況の中で、延べ20項目にわたる重点推進項目を盛り込んだ「第4次農業振興計画」を策定し、基盤整備を中心として相当の成果をあげてきた。
しかしながら、農業の生産性の向上に必要な施設の建設や土地基盤整備等、施設整備を計画的に進めてきた一方で、常呂川の氾濫等、自然災害による農産物被害が毎年のように発生し、農家の負債の増加、農家戸数の減少等、あらためて「農業施策の見直し」が求められることとなった。
今回、平成13年度からの「第5次農業振興計画」の策定にあたり、農業者の意向を十分取り入れるため、アンケート形式による農家意向調査を当研究所が受託・実施し、その集計・分析結果について本年3月に報告書として提出して、業務を完了した。
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最近、農林水産省において「植物検疫における輸入解禁要請に関する検証の標準的手続」について情報開示が行われた。その説明の中で、遠くない将来にはアメリカ等からの「生馬鈴しょ」の輸入解禁等が想定されるという事態が浮き彫りになってきた。
北海道農政部では、その情報や内外の動向を深刻に受け止め、馬鈴しょ主産地として大きな課題を背負うこととなるため、基礎的な実態調査に着手した。その一環として「北海道産馬鈴しょの生産・流通・消費実態調査」について当研究所に調査の委託があり、「生馬鈴しょの輸入解禁」が想定されるという視点から、現状の分析と課題の整理、今後の対応等についてまとめた。
以上について報告書を3月に委託者に提出し、業務を完了した。