本調査研究は、平成11年度より2ヵ年間にわたり農家調査及び関連機関の調査を実施し、その結果を踏まえ、地域の農業形態のあり方も含めて、畑作・酪農それぞれの現状と課題を明らかにし、今後の行政展開や技術支援のあり方に対して指針を提起したものである。
第1の畑作編においては、十勝中央地域を対象に、畑作主体の経営に野菜策が安定的に導入され、経営総体としての収益力向上あるいは経営資源の有効利用が実現するための条件を明らかにするために、各作目にわたって現状の生産性や収益性の計数化を図り、ついでその係数を利用して多様な前提を設定してシミュレーションを行って、そこでの前提条件と試算結果に関する評価を行った。
第2に酪農編においては、輸入飼料価格の先行き等が不透明なことからも、行き過ぎた購入飼料依存を正すとともに、畑地型酪農として飼料用とうもろこし等の一層の利活用を図り、自給飼料基盤の確立を目指すことが望まれている。また、近年の多頭化傾向の中で、飼養管理方式も従来の主流であった「スタンチョン・パイプラインミルカー方式」から「フリーストール・ミルキングパーラー方式」に移行する経営も目立つようになっている。そこで、この両者の投下労働の実態、収益性、生産原価及び産乳や繁殖の技術水準を明らかにし、今後の「十勝中央地域」における酪農の展開方向についての提起を行った。
道農業改良課では、経営感覚に優れた効率的でかつ安定的な経営を育成するにあたり、農業改良普及センター等が利用する経営改善指導のための資料、並びに道が利用する農業情勢の変化に適宜対応するべき施策検討のための資料の作成に取り組んでいる。本事業は、こうした資料の作成に寄与するため、道内農家の経営動向の調査、分析並びにその結果の提供を目的に取り組むものである。具体的には、計数処理に利用可能な諸指標を保持する農業簿記記帳者約300戸の経営概況や経営収支に関するデータを収集、集計し、これらを素材に先に述べた資料の作成に寄与すべきデータの諸分析を実施することとしている。
本年度は、平成12年度データの分析、及び昨年度データとの比較分析を行った。平成13年度については、引き続き経営形態別の経営概況及び各種経営指標の分析、時系列における経営概況の比較について検討する予定である。
農村総合整備事業や中山間地域総合整備事業等により農村の生活環境施設が整備され、各地域においてその施設が活用されているが、近年の農村地域の整備は、都市と農村の交流をめざした施設の整備や、市民農園等、地域だけでなく都市と農村との共生といった新しいコンセプトから農村の空間を都市住民にも開放する動きが加速している。
また、農村部の過疎化、高齢化が進展する一方で、農村の機能を活用した農作業体験や農産加工実習教育、高齢者の経験を活用した教育、生涯教育、さらには地産地消に積極的に取り組む動き等も見受けられる。
これらの状況を背景として、平成11年度には、農村生活環境施設の整備を契機として農村地域の活性化を高めている地域を対象として、農村生活環境整備の変遷と地元ニーズの変化傾向及びその背景並びに施設の活用・利用方法、活性化の取り組み等について調査し、施設の効果的・効率的な活用のあり方の検討、あるいは施設整備の方向性の検討等、農村生活環境施設の高度な利用による地域活性化方策の検討を行った。
平成12年度は、更に前年度調査の高度利用モデル地域等において補足調査を行い、全道の同様の利用施設における活用面での強化策や、整備中及び今後整備予定施設における今後の整備及び管理運営を展開する上での参考指針の検討を行った。
現在、酪農地帯ではWTO体制の下で生産者乳価に市場原理が導入され、乳価の低下傾向は避けることのできない情勢にあり、酪農家はこれへの対策として搾乳頭数の増大による乳量の増大で対抗を試みようとしている。一方、国は環境問題の対策から家畜排せつ物の規制に関する法制化を行い、それを受けて地方では期限付きで家畜のふん尿対策を開始した。
このいずれもが酪農家にとって労働の加重を強いられるものであり、すでに酪農家は年間夫婦2人で7,000時間を超える過重労働の現状にあることから、他産業との乖離を埋めるためにも労働の一部外部化を図る安定した作業支援組織の実現なくしては、もはや産業としての存続が危ぶまれる現状である。
北海道農業開発公社では、こうした酪農地帯の現状を踏まえて平成6年度から釧路の太田農協管内でコントラクターの実験事業に取り組んだが、これが全道的取り組みが実現可能か否かを現在検討している。当研究所では公社からの委託を受けて、昨年度は根釧地域を、また本年度は天北地域での実態調査を実施し、支援システムの斡旋主体とコントラクター(作業受託者)、及び委託農家と委託希望農家の実態に迫った。
酪農の継続的発展を確保する上で、後継者の確保及び担い手農家への土地集積がこれまでにも増して重要となっており、経営体の生産面での機能の向上のみならず、居住環境についても質的向上を図りつつ、離農跡地の有効活用等を図る必要があるが、個々の農家を単位とした取り組みだけでは限界があるところから、複数の農家による法人設立又は協業化を通じた様々な整備手法の確立が求められている。このようなことから国は、平成11年度から新世紀に対応した生産性の高い効率的な経営体の育成及び酪農基盤の強化に資するため、農畜産業振興事業団の指定助成事業として「新世紀対応酪農基盤確立調査事業」を実施することとした。
当研究所は、社団法人日本草地畜産種子協会から当該調査事業の一部、新世紀対応酪農基本構想策定調査の基本構想等検討業務を受託した。今年度は、昨年度報告した「基本構想策定のフレームの検討」(平成12年3月)に基づき、構想を概定すべく想定モデル地区を調査し検討を重ねた。次年度の最終報告には、職住のあり方や酪農村のもつ多面的機能の効用と発揮の観点からも一層踏み込んだ提案を行っていく予定である。
近年、法人の関連事業参入に対する規制が緩和されたことにより、法人経営の事業範囲の拡大が生じており、生産だけでなく流通、販売、資金の調達に至るまで、一般企業に近似した形態への萌芽がみられるようになっている。このことは、従来地域農業の要をなしてきた農協の総合事業と法人の活動とが事業競合を引き起こす可能性を秘めており、法人経営が展開していく地域において農協及び地域農業はどのように変化していくのかが注目される。
本調査研究は、1)農業生産法人の歴史的展開過程を農政展開の各期ごとに整理し、その中で農業生産法人の性格変化と農政内での位置づけの変化を把握し、さらに北海道内での特質を府県と比較検証すること、2)法人経営の活動状況を認定農業者制度に沿って把握し、北海道の農業地帯別に法人化動向を明らかにしたうえで、法人と一般農家における規模・形態・経営意向の際を指摘して、北海道における法人像を明確にし、農業地帯ごとの存立構造を示すことの2つの視点により取り進めている。
本年度は、農業法人の設立目的や法人化の主眼について整理を行った。次年度は、農業生産法人調査データの詳細解析と、そこから抽出される類型パターンに基づく事例調査により、今後の法人経営の方策及び系統JAの事業展開との関連を検討する。
労働市場が未発達な北海道の農村は、後継者層の都市部への流出が激しいことから、高齢化が著しく進行しているだけでなく、将来的な担い手の定着が極端に困難な状況にある。言い換えれば、将来的な農地の受け手が決定的に不足しているということであり、それゆえに北海道では、遊休農地の大量発生が懸念されているといえる。こうした事態に対応するにあたり、道外を含むいくつかの地域では、すでに積極的な担い手育成に関わる取り組みが確立されている。本調査は、統計分析並びに実態調査を通じ、北海道においても農地利用の粗放化が進行しつつあることを明らかにした上で、こうした事態に対応するための農地の利用促進に関わる施策の確立について提起することを目的に取り組むものである。
本調査では、初めに統計分析を行った。次にケーススタディを実施し、統計数値に現れた農地利用の粗放化を裏付けた。続いて、農地利用の粗放化が進行していく中で、その利用を促進するための施策を展開している事例に注目し、こうした施策の確立が必要とされていることを明らかにした。これらについて報告書にまとめ、委託者側への提出をもって業務を終了した。
調査対象地区である中沼・福移・拓北地区では、農家の水田が牧草に転作され、それを複数の酪農家が作業受託している状況にある。しかし、農家の高齢化、後継者の不在が深刻化し、それと並行して、農地保全面でも排水路の分断、農地の転用、転作制度の見直しにより新たに不耕作地が発生する可能性をはらんでおり、事態は予断を許せない状況を迎えている。
札幌市では、このような状況の解決方向として、農地流動化支援システムの提起、新たな農業生産法人の組織化、土地利用型農業経営を目指したアスパラガス等の作目選択、農地の管理システムの検討を想定している。
本調査研究は平成14年度までに、対象地域における今後の農地保全の方向性等について、農家意向調査等の基礎調査をはじめ、ワークショップ方式による地域農業検討会(6回を予定)の開催、先進事例調査、提言報告書の策定を計画している。今年度は、農家の実態把握と最新の基礎データ収集のため、平成12年11月20日から12月1日の9日間、対象地区の全農家を対象としたアンケートによる農家意向調査を実施した。この結果について、平成13年2月開催の第2回地域検討会で報告し、各検討委員から活発な意見が出された。平成13年度は、これまでの調査の結果をもとに、今後の営農で中核となる農家を抽出した詳細な面接調査及び先進事例調査を計画している。
本業務は、更別村における農業振興の方策として、国の進める持続的農業や北海道の進める環境調和型農業を推進しつつ、更別村の農畜産物の消費拡大を図るための推進方策を提言するものである。
そのために、まず、機関調査により更別村における環境調和型農業の取り組み経緯や慣行的な栽培に比べ減農薬に努めた農産物の販売実績及び課題等について把握した。次に、農家全戸アンケート調査と農家抽出聞き取り調査により、環境調和型農業の取り組み状況、意向、技術的成果と課題、経営上の課題等について実態を把握した。また、家畜ふん尿についても現在の処理・利用の実態並びに課題を把握した。これらを踏まえて更別村における環境調査型農業推進の基本方向を提示するとともに、行政、関係機関の支援体制、農協事業、販売対応等の視点から推進方策を提示した。また、平成11年に制定された「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」への対応と環境調和型農業の推進のために、地域的な処理・利用のシステム作りについて成立の可能性と必要な施策を検討した。
北海道産農産物の消費拡大を促進するために各方面で努力が重ねられているが、今回の調査においては、新しい食品加工技術の可能性、及びインターネット取引の可能性について検討した。調査方法は新加工技術あるいはインターネット取引を実際に採用している先進事例を対象として、面接及び一部アンケート調査によりデータを収集し、分析した。
80年代後半以降、輸入野菜が急増し国内野菜との競合を強めつつあり、輸入野菜への対抗方策が早急に求められている。輸入野菜に対抗し国産野菜の振興を図るためには、鮮度、品質、安全等国産野菜の良さを強調することに加え、生産から流通までのあらゆる段階で可能な限りコストを削減していくことが重要である。ただ、これまでの対抗策は生産費に関しての議論はされても流通費についてはほとんど議論がされてこなかったといっても過言ではない。しかし、野菜流通が国内競争から国際競争へ移行しつつある中で、国産野菜が生き残っていくためには、生産費の削減だけでなく生産段階から小売り段階までの流通費の削減が必要不可欠であると考える。
こうした問題意識を背景として、平成11年度には環境保全や低コストの観点からも見直しの必要性が高い段ボール容器に着目し、これを反復利用の可能な「通いコンテナ」に変えることによる新たな物流システム(環境保全型物流システム)の確立について、通いコンテナによる青果物の物流実験及び流通実態調査を行った。平成12年度はその補足調査として、第1に通いコンテナ及びドーリー車導入による物流効率化の実態、第2に北海道の産地における出荷容器の利用形態と規格・包装の状況、第3に消費者の野菜購入に関する意向動向、第4に小売店(量販店)の青果物の販売形態を調査した。
※ 未登録
北見市では、農業構造改善事業のソフト事業の一環として、平成10年度より「北見市農業農村活性化推進集落協議会」活動を推進していた。これは、地域農業のステップアップをめざすため、地域の農業者自らが地域資源を見つめ、自らの活動指針を自らで探求しようとするもので、具体的には「がんばる農業塾活動」として展開してきた。また、これらの施策的受け皿が「がんばる農業応援事業」をはじめとする第2次北見市農業振興計画の実践活動であった。
本調査は、これらの展開を「食糧・農業・農村基本法」及び「北見市農業マスタープラン」との整合を踏まえて統括し、平成14年度からの第3次北見市農業振興計画に資することを目的とするものである。調査は、関連データの収集と関係先のヒアリングを中心に行い、当研究所嘱託研究員・米内山 昭和氏、北海道武蔵女子短期大学助教授・松木 靖氏の分担執筆により報告書にまとめ、本年3月の提出をもって終了した。
道農政部が、平成6年に「北海道農業・農村のめざす姿」を策定し、その中で「めざすべき代表的な目標経営類型」として、5区分19タイプの経営類型を定めた。
しかし、策定以降、国の農政改革に伴う価格の変動や農産物の輸入自由化の進行等により、農業経営を取り巻く環境は大きく変化している。さらに、国は平成12年3月に「食糧・農業・農村基本計画」とともに、新たな基本法に基づく「効率的かつ安定的な農業経営」の具体的な例示として35タイプの経営類型を示し、「地域段階においては、地域の実情に応じた農業経営の展望を示すことが重要」としている。
このような情勢を踏まえ、「めざす姿」での経営類型を指針として優良な経営を実現した事例や、環境の変化により発生した新たな課題の対応に積極的に取り組み、先駆的な役割を担っている経営体等の地域の事例を調査し、その背景・要因等を分析して「めざす姿」での経営類型の達成度を確認するとともに、新たな経営類型の見直しを視野に入れた今後の農政展開のための推進・方策検討の基礎資料とすることを目的として本調査を実施した。
調査の対象事例は、既存情報等を参考にして、1)「めざす姿」に掲げる経営類型を実現した優良な経営体、2)個別経営の支援や、農地流動化・農地保全等を行う地域支援システム、3)新たな課題に対応して自らの創意により解決に取り組んでいる経営体という3タイプの基準に該当する先駆的な取り組み事例を、地域性や経営形態の分布等を配慮して選定した。これら3タイプごとに分析の視点を定め、それに基づいた調査要項により実態調査を実施し、報告書にまとめ提出した。