JAグループ北海道では、第23回JA北海道大会(平成12年)において『食料・農業・農村基本法の制定を踏まえた新たな北海道農業の展開』を決議し、この中で地域農業振興システムを核とした多様な担い手の育成・推進を図るとしている。その根拠は、「今後、全道各地域で農家戸数の減少に加え、農業就業者の減少と高齢化の進行が見込まれる中で、個別経営や法人等地域の経営体による相互補完と、JA及び関係機関の支援により、地域の農業資源(農地、機械・施設、労働力、技術等)の有効活用を図り、地域全体の生産性を高め、コスト低減を目指す」とした点にある。こうした役割(具体的には、担い手への農地の利用集積、労働力、農業機械・施設の効率的活用等)を果たす仕組みを、「地域農業振興システム」と銘打って、その構築を推進していくとしている。
本調査事業は、上記のJAグループ北海道の方針に基づいて、北海道における「地域農業振興システム」の先進事例の実態分析を行い、その分析結果からシステムの構築ないし推進に関わる課題や対策について明らかにしていくことを目的に取り組んだものである。その調査結果について報告書にまとめ、委託者への提出をもって終了した。
国は平成11年度から新世紀に対応した生産性の高い効率的な経営体の育成と酪農基盤の強化に資するため、農畜産業振興事業団の指定助成事業として「新世紀対応酪農基盤確立調査事業」を実施した。
当研究所は、社団法人日本草地畜産種子協会から当該調査事業の一部である新世紀対応酪農基本構想策定調査の基本構想等検討業務を受託した。今年度は、一昨年度検討の基本構想のフレーム(「生産環境及び居住・畜舎周辺環境の総合的な整備」)、昨年度検討の基本構想の概定を踏まえ、構想を策定すべくモデル地区を想定した経営計画の検討を行った。
なお、構想のフレームは、生産環境整備に関しては、担い手確保と労働力調整、離農跡地と経営耕地の有効利用、経営方式、飼養管理体系、ふん尿処理等を、また居住環境改善の方向としては、職住分離やゾーニング等、総合的な整備を内容とした生産環境の効率的な整備手法、畜産関連施設と居住施設の合理的配置、整備手法や運営方法等を柱としている。
近年、新たな担い手として農業生産法人の展開に注目が集まってきている。この法人への期待は、単なる一担い手としてだけではなく、地域農業・農村との関係の中で、地域のコーディネート機能や農村維持という役割の発揮まで期待されており、その存在感は今後ますます強まっていくものと考えられる。その事業展開も、関連産業の事業参入に対する規制が緩和されたことにより、生産だけなく販売、流通、資金の調達に至るまで、一般会社に近似した形態への萌芽が見られるようになってきた。
第1年度である平成12年度は、法人の歴史的展開過程を農政展開の各期ごとに整理し、その中で法人の性格変化と農政内での位置づけの変化を把握し、さらに北海道内での特質を府県と比較検討した。第2年度である今年度は、法人データの詳細解析とそこから抽出される類型パターンにもとづく事例調査により、今後の法人経営の方策及び系統JAの事業展開との関連を検討した。
札幌市の中沼・福移・拓北地区では、農家の水田が牧草に転作され、それを数戸の酪農家が作業受託している状況にあるが、農家の高齢化、後継者の不在が深刻化し、それと並行して、農地保全面でも排水路の分断、農地の転用、転作制度の見直しにより新たに不耕作地が発生する可能性をはらんでおり、事態は予断を許さない状況を迎えている。
本調査研究は、これらの現状の解決方法を探るため、農家意向調査等の基礎調査の実施、ワークショップ方式による地域農業検討会の開催、先進事例調査、提言集の作成を計画したものである。今年度は2年目として、地域の中核的担い手である26戸の農家を対象とする抽出農家調査及び北海道内・道外への先進事例調査を行い、調査結果を第3回・第4回地域農業検討会で報告した。また、非農業者を対象とした農地の保有実態についても調査を行い、平成12年11月に実施した全戸農家調査と連動させ、対象農家を「販売農家」から「非農業者」までの4類型に分け、集計・分析した。最終年度となる平成14年度は、第1年度に実施した全戸農家調査及び第2年度に実施した抽出農家調査、先進事例調査、非農業者実態調査の結果をもとに、農地利用・保全管理システム、作業受託組織のあり方を検討して、望ましい地域農業のあり方を提言する予定である。
北海道農政部では、経営感覚に優れた効率的で安定的な経営を育成するにあたり、農業改良普及センター等が利用する経営改善指導のための資料、並びに農業情勢の変化に適宜対応すべく政策検討を行うための資料の作成に取り組んでいる。本事業は、こうした資料の作成に寄与する一方、北海道における農家の経済状況をいち早く把握すること、記帳結果を有効に活用する方途検討のため、道内農家の経営動向の調査、分析並びにその結果の提供を目的に取り組むものである。具体的には、全道の農業改良普及センターを通じて収集された、簿記記帳を行っている農家約300戸のデータ(経営概況や経営収支)を素材として、先に述べた資料の作成のための集計及び諸分析を実施した。
本年度は、平成12経営年度データの分析、及び平成10経営年度、平成11経営年度データとの比較分析を行った。その際、調査農家を8つの経営形態(水稲、畑作、酪農、野菜、肉牛、花卉、軽種馬、果樹)に区分し分析を行った。
後志支庁は、道営地域資源循環管理事業として後志南部地区に堆肥製造施設と土壌改良資材製造施設を平成16年度に稼働させるとして事業に着手している。このうち黒松内町に整備される堆肥製造施設について、その安定操業を見極めるための客観的調査を当研究所に委託した。その内容は、原材料の家畜ふん尿を供給する酪農専業地域を形成する同町を主に、隣接する蘭越町との2町の事業参加希望農家を対象に面接調査をし、平成22年における農家数と乳・肉用牛飼養頭数の推定及び経営安定化に必要な方策を提案するというものである。
当研究所はこの報告書の中で、地域で生産される有機資源は地域に還元するのが原則であるとの基本スタンスのもと、畜産農家の意向調査を基本に据え、地域に内在する問題・課題をも洗い出す等、多角的な視点から検討を試みた。施設の有用性の単なる検討材料を提供するに止まらず、地域の発展にとっても参考指針になることを意図したものである。
なお、当調査の実施にあたっては、当研究所の黒澤 不二男を団長に、元北海道専門研究員の土屋 馨先生及び鳥取大学名誉教授 籠田 勝基先生をはじめ、地元関係機関団体の強力なご支援とご協力を賜った。
本業務は、北海道の野菜生産地においても、市場価格の低迷が生産意欲を減退させ、このことが作付面積・生産量の減少となり、野菜産地の体制維持が困難な状況を迎えていることから、国の対策を活用し、輸入野菜による価格低落の大きな影響を生じた産地について最小限にとどめる諸対策の一つとしての「輸入品に対抗するための生産費等実態調査」である。
内容は、「ネギ・ごぼう・かぼちゃ」の3品目について道内の代表的な生産地を対象に平成12年の生産費を調査した。調査対象農家は、各品目4農家(2産地)とし、農協の協力を得て簿記記帳を行っている農家で、取引伝票が整備されている農家を各2戸選定した。その後、嘱託研究員の渡辺 義雄氏を中心に、四辻 進氏、池川 英純氏と当研究所スタッフが、1)農林水産省統計情報事務所の計算方式に準拠した調査票及び記入要領の作成、2)調査農家に出向き記入を依頼、3)調査農家と面談による補足調査の実施等を取り進め、各費目の数値を確定した。
生馬鈴しょは昭和36年10月に輸入が自由化されているが、「植物防疫法」によって、事実上、輸入はこれまで"禁止状態"にあった。しかし近年、アメリカ、オランダ、ハンガリー、チリから病害虫の無発生地域の認定の要請が寄せられており、SPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)に照らして再検討するようにとの要望が出されている。農水省も平成11年、「植物検疫における輸入解禁要請に関する検証の標準手続」を定める等、門戸開放へ向けての手続きが本格化しつつある。
平成11年における北海道の馬鈴しょの作付面積は、61,400haで普通畑面積の14.8%を占めており、馬鈴しょ生産を除いて北海道畑作の展望は語れないが、もし生馬鈴しょの輸入が解禁されれば、馬鈴しょ市場への影響は甚大と思われ、壊滅的生産縮小、ひいては地域経済・地域社会への影響も懸念される。
これらの状況を背景として、生馬鈴しょの輸入解禁が北海道産馬鈴しょ及び地域経済・地域社会に与える影響について、統計資料、米国産馬鈴しょ生産資料、その他諸データを用いた検討・試算を行い、対策検討のための基礎資料を集成した。
耕種型農業は、国内全体のみならず、北海道においても厳しい環境の変化に直面し、担い手不足、農地過剰、農地価格の下落といった状況に立ち至っている。しかし、バブル経済の崩壊及び90年代不況の発現は、他方で農業を見直す契機となり、その結果、新規就農希望者が増加してきているのも事実である。そして、その多くが魅力ある就農の場のひとつとして北海道に注目しているのである。
このような新規就農希望者の増加傾向に比例して、耕種型リース事業の利用も増加していけば、正に理想的であろう。しかし、こうした現実とは反対に、近年、耕種型リース事業の利用状況が停滞しており、その要因の解明が急がれているのもまた事実なのである。
本調査事業はこうした実態を念頭において、実際に耕種型リース事業に取り組んでいる自治体、農協、新規就農者から聞き取り調査を行い、北海道農業の有する諸課題が耕種型リース事業の展開において発現せざるを得ない論点を確認し、今後、北海道農業公社がこの事業を円滑に実施していくにあたっての諸方策について考察することを目的に取り組んだものである。
具体的には、まずはじめに北海道における新規就農者の参入状況を確認し、その上で北海道農業開発公社の農場リース事業の実績について酪農型と耕種型についてその推移を見た。次に、耕種型リース事業が、現在の農業情勢の下で想定される諸問題について論点整理を行った。そして、事業に取り組んでいる自治体、農協、新規参入者から聞き取り調査を行い、上記の論点を再整理をした上で、耕種型リース事業の今後の課題について提起した。
北海道における農村地域は、離農及び農村人口の減少により過疎化が進行しているが、いかに農村地域の活性化を図り農村人口の減少を少しでも食い止め、かつ次代を担う農業後継者の確保を図るかは重要な課題となっている。
従来から農村の活性化の手法としては、農村生活環境施設整備、農村と都市の交流、グリーンツーリズム、観光農園、ファームイン等主にハード的な事業の取り組みが行われてきていた。本研究では、活性化のためにはこのようなハード的な事業に加えて農村住民の精神的な満足が得られるソフト面の取り組みが必要であるとして、農協生活事業のあり方や役割に視点を当てて検討した。
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最近の北海道農業を取り巻く情勢は文字通り激変し、これから先を予測することも困難な状況にある。本調査研究事業の対象地域である幌加内町においては、農業者の高齢化、離農そして過疎化といった、中山間地域が抱える問題が更に加わる。
しかし、先人が昼なお暗い密林を開墾し、厳しい自然と戦って基礎を築いた幌加内町農業の1世紀にわたる歴史と財産を21世紀に引き継ぎ、子供たちが希望をもって後継できる基盤を作る必要がある。幌加内町には、他の町村にはない「ソバ」と「朱鞠内湖」という有形の地域資源がある。そして「シバレ」と「暖かい人情」が無形の財産ともいえる。
本調査研究事業では、この地域特性を生かしたもち米の販売やソバを中心に、住民のパワーを結集することで、町外からの観光客を呼び込み、地域の活性化に結び付ける振興施策を検討した。
山村地域における優れた景観・豊かな自然環境を活かした都市住民との交流拡大を、地域資源と機能的に連結させ地域活性化に役立て、山村地域の経済的活路を開拓している先進事例を収集し、その要因を分析する基礎的なデータを整理するとともに、山村地域の持つ多面的な機能の経済評価についての手法を整理し、今後の山村振興施策検討のための基礎資料として集成した。
まず、山村地域と都市との交流事例については、都道府県に対するアンケート調査及びインターネット上のホームページ検索・データベース検索により収集した。調査対象は44都道府県である。併せて、交流促進にかかる都道府県の単独施策の概要について、アンケート調査により収集した。また、山村地域の持つ多面的機能の経済価値の手法については、日本学術会議による答申(平成13年11月)その他の研究事例を参考として、多面的機能の分類、多面的機能評価の意義、評価の方法、評価の具体的計算例を整理した。
北海道農業公社では近年の酪農家の労働過重の現状を踏まえて、平成6年度から3ヵ年にわたり釧路の太田農協管内でコントラクターの実験事業に取り組んだが、これが全道的取り組みが実現可能か否かを課題として、そのマニュアル化についても検討したいとの考え方を示した。この公社からの依頼を受けて、平成11年度は根釧地域を、また12年度は天北地域での実態調査を実施し、支援システムの斡旋主体とコントラクター(作業受託者)、及び委託農家と委託希望農家の実態に迫った。
今年度は、この2年間の調査と実験事業の成果を踏まえ、公益的組織がコントラクターを設立するにあたって、地域のニーズをどのように組織化しその運営管理を行うかについての手引書を作成した。
北海道堆肥センター協議会(運営主体:北海道農協「土づくり」運動推進本部)が全国堆肥センター協議会の関連事業(畜産環境対策事業)の一環として、北海道でリストアップされた98の堆肥センターを対象としてアンケート調査を実施した。配票は北海道堆肥センター協議会が実施したが、回収された調査票については当研究所がデータ処理(入力単純集計・クロス集計)とその分析を担当した。特に、分析にあたっては堆肥センターの実態とその機能を概括的に把握し、当面する課題を明らかにするとともに、その育成・支援の方策等まで踏み込んで解析した。