北海道農政部では、経営感覚に優れた効率的でかつ安定的な経営を育成するにあたり、農業改良普及センター等が利用する経営改善指導のための資料、並びに農業情勢の変化に適宜対応すべく施策検討を行うための資料の作成に取り組んでいる。本業務は、こうした資料の作成に寄与するため、また、北海道における農家の経済状況をいち早く把握すること、記帳結果を有効に活用する方途検討のため、道内農家の経営動向の調査、分析ならびその結果の提供を目的に取り組むものである。
具体的には、全道の農業改良普及センターを通じて収集された、簿記記帳を行っている農家約300戸のデータ(経営概況や経営収支)を素材として集計及び諸分析を行った。まず、調査農家を8つの経営形態(水稲、畑作、酪農、野菜、肉牛、花卉、軽種馬、果実)に区分し、平成14経営年度データの分析、及び平成10・11・12・13経営年度データとの比較分析を行った。また本年度は、調査農家のうち5ヵ年継続調査農家を対象に、稲作、畑作、酪農について高所得実現の要因を分析した。さらに5ヵ年の調査研究の総括として、価格低迷下の経営管理の課題をまとめた。
平成11年11月に「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が施行され、施設整備が急ピッチで進められてきた。
家畜ふん尿は、農業の基本である土づくりに必要不可欠であり、家畜ふん尿の利用確率が資源循環型農業やクリーン農業の推進の上からも重要な課題の一つとなっている。また、地域で運営されている堆肥センター(共同堆肥処理施設)が家畜ふん尿の処理と良質堆肥の生産と供給に果たす役割は極めて大きいといえる。
こうした状況を踏まえ、平成13年度から堆肥センターの運営や堆肥の利用拡大に向けたあり方を探るために、全道の堆肥センターを対象としたアンケート調査や道内外の運営実態現地調査を実施した。調査最終年度となる本年度は、昨年度に引き続き道外3ヵ所、道内6ヵ所の堆肥センターの運営実態調査を実施するとともに、3ヵ年の総括として直面する課題を明らかにして、対応方策を提起した。さらに、堆肥センターが地域の農業生産の安定・向上と地域環境の保全に果たしていることを確認するため、今年度の道内調査に前年の調査地を加えた13市町村を対象に、各市町村における堆肥総産出量と耕地面積とのバランス及び堆肥施用の経済効果をマクロ的に把握した。
今後、委託者の北海道農協土づくり運動本部は、本調査結果をもとに家畜ふん尿の利用促進に向けたシンポジウムを開催し、JA・市町村・関係機関等へ情報提供を行うとともに、堆肥センターの運営改善指針の策定を検討している。
ニセコ町は農業を取り巻く厳しい環境(農産物の市場経済論理への移行や規制緩和、担い手不足等)を打破し、先進的かつ近代的な経営体を育成確保するため、意欲ある地域農業者を「担い手経営者」と認定し、優れた経営感覚と正確な現状認識、的確な経営診断と計画樹立等の企業的経営管理能力を涵養するための講座「ニセコ21世紀農業塾」を平成14年度から開講している。当研究所は昨年度に続き本塾を支援するための業務を受託した。
2年目となる本年度は、第1期生20名が後期課程と、新規に第2期生17名が受講した。2ヵ年の受講カリキュラムは、農業経営管理の基本となる簿記を中心に、併せて「リフレッシュタイム」と称する時間を設け、各界講師から時事に関する話題を受講生に提供した。
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JA北海道中央会、JA北海道信連、ホクレン、JA北海道厚生連、JA共済連北海道本部は、その総意により、平成14~16年度の3ヵ年間に渡り多面的かつ総合的な農協事業運営の調査研究に着手することとし、当研究所はこの調査研究業務を受託した。
昨年度実施した道内農協の組合員全戸を対象にしたアンケート調査(第1次アンケート)に引き続き、農協の意向並びに自己評価のアンケート調査(第2次アンケート)を実施した。今年度は回答結果についてデータ解析を進め、第1次アンケートは5月、第2次アンケートは10月に調査研究の中間報告書を取りまとめた。
3年目となる次年度は、系統連合会(含む全国連)事業の基本体制、組織や事業展開、さらにその評価と課題等について、農協(代表者)から意見聴取する。一方並行して、道内外の優良な農協・都府県事業連(県本部)について個別に詳細な調査を行う。平成16年度末には、これら3年間の調査研究の成果を総括して、北海道の農協事業運営体制を再構築する上で活用できる効果的な方策を提示・提案する。
北海道の農村地域は、農業従事者の高齢化や後継者不足等により、農家数の減少が顕著になるとともに、農地の分散化や耕作放棄地の増加等に伴う農業生産力の低下と集落機能の脆弱化が懸念される状況となっている。それゆえ、効率的な農地の利用と農村社会の活力の維持を前提とした、農地の集積・集団化等による土地利用条件の向上と集落再編の推進が求められている。本調査事業は、こうした動向を踏まえ、大規模畑作地帯と大規模酪農地帯に焦点を当て、そこで発生している様々な問題点を再整理した上で、農地及び集落再編に関わる推進方策について検討したものである。
調査の実施に先立ち、まず大規模畑作地帯及び大規模酪農地帯における農地問題を整理した。具体的には、1)経営資産としての農地処分と地域資源としての農地保全の整合がとれていない、2)実効性のある集落再編が実施されていない、3)集団化等、コスト低減を前提とした農地利用がなされていない、の3点である。ただし、これらはいずれもデスクプランの領域を越えるものではなく、それゆえこれらの実効性の有無の確認が必要とされた。そこで、モデル地域を選定し、その地域の農業関係者の意見を参考にしながら、これらの課題が達成できるのか検討することとした。選定した地域は、根釧の大規模酪農専業地帯に属する標茶町、及び十勝の畑作地帯に属する本別町である。これら2町において、意見交換会を開催し、検討委員会委員と地域農業関係者による討論を通じて、3つの検討課題の実効性を精査した。
さらに、検討委員会の場において、再度3つの課題に注目し、とりわけ緊急を要する課題をその中から抽出することにした。そして抽出した課題を1)農地の効率的・有効的利用のあり方、2)多様な担い手の存立農地の利用促進、3)集落再編の到達点と今後の推進方策の3点に整理し、これらを推進していくための方策について検討した。
産地偽装表示事件や登録外農薬の使用問題等、農産物に対する信頼性が損なわれるような事態が発生し、消費者の食品に対する安心・安全の欲求が一段と高まっている。こうした状況において、産地としての信頼を回復するために、青果物にトレーサビリティシステムを導入し、生産・流通履歴を明確化するという方策が考えられる。しかし、現状ではいずれのシステムもまだ開発途上であり、導入に要する費用も導入の効果も不確定な状況である。
そのため、本業務においては、北海道産青果物を対象に、トレーサビリティシステム導入の効果と運用上の問題点及び課題を整理し、対応策も含めたシステム導入の可能性を示すことを課題とした。そのため、先進事例調査、消費者調査、流通・加工・外食業者調査、産地・生産者調査を実施した。
玉ねぎ価格は、BSE発生以降、消費の大幅減や輸入品との競合等により需給バランスが崩れて低迷が続き、出荷調整のために平成13年と14年の2年連続で圃場廃棄措置を余儀なくされており、農家所得にも大きな影響が出ている。
玉ねぎ生産農家の所得向上を図るためには、生産・流通・販売各分野のコスト削減が必要である。本調査はこの中の生産分野でのコスト低減の追及をテーマに、全道主要産地の26農家(石狩管内3戸、空知管内6戸、上川管内6戸、網走管内11戸)を対象に、平成13年及び14年の生産費調査を実施してコストの把握・分析を行い、生産コスト低減に向けた検討課題と改善方向を明らかにすることを目的として実施した。
調査対象年が過年度であるため、最初に、育苗・定植・栽培・収穫に係わる生産費及び経営に係わる項目を網羅した調査票様式を、北海道統計事務所の助言を得ながら作成した。その後、調査対象農家に調査票の記入要領を説明し、提出を依頼した。
農家から提出された調査票を担当研究員が内容精査を行った後に、調査対象農家と面談による補足調査を実施し、各費目の数値を確定した。なお、調査対象農家との面談時に費目内容の確認に加えて、生産費削減のための課題や対応策について考え方を聞き取りした。
酪農における規模拡大進行は、家族労働の加重をもたらし、それが有機物の循環系を阻害する一因ともなっている。そこで、家畜ふん尿・副資材・生産堆肥の運搬や投入・撒布の作業部門を外部化(作業委託)するニーズが高まっており、それは家畜ふん尿の適正管理を進めることにもつながることになる。しかし、その受け皿となる家畜ふん尿コントラクタは、サイレージ等の飼料の生産・調製に係わる作業のように、地域にその受託主体が定着しつつある状況には至っていない。また、生産堆肥等のリサイクル資源について、農地への投入量に不均衡が存在している。
本調査研究業務は、この畜産環境を踏まえ、地域を越えた生産堆肥の移動(搬送)をも念頭に、環境コントラクタ及び広域搬送についてもモデルを想定し、これら事業化の存立条件を明らかにすべく整理・検討を試みたものである。
現在、農村は過疎化や高齢化、農産物価格の低迷等によって集落の活力・機能が低下している。農村地域の活性化を図るためには住民参加による地域づくりが必要であるが、土地改良施設等の地域資源を利活用し、客観的な地域の実態・課題や地域資源等の情報を共有化しながら、地域住民が参加して、興味を持つテーマを中心に話し合い、住民活動の実践を通じて合意形成を図っていく必要がある。
本調査はこれらの観点から、地域づくりに不可欠な情報のうちもっとも重要で、統計資料からは得られない地域住民等の意識・意向を把握することを目的として、北海道農政部農村振興課の依頼を受けて実施した。調査は、北海道網走支庁管内津別町津別沢地区において、15歳以上の住民及び最近5ヵ年以内に町外転出した人を対象として、無記名アンケート調査票形式にて行った。
北海道では正組合員戸数の約3倍の准組合員戸数を抱えており、全国でも他に例を見ない規模となっている。しかしながら准組合員はここ数年伸びが鈍化しており、JA事業基盤の拡充に課題を残している。共済事業においても長期共済の保有高に占める割合は18.2%であり、今後JA共済の基盤拡大を図る上で、準組合員対策と加入促進が極めて重要な課題となっている。
本調査研究事業は、こうした問題意識に基づき、まず1)JA改革の流れを整理し、員外利用規制問題の理論的な検討を行ったのち、2)北海道農協の特徴と組合員の多様化について平成14年度から当研究所が行っている農協・組合員アンケート調査を中心とした分析を行って、3)保険・共済市場におけるJA共済の動向を示し、農協における推進課題を明らかにして、推進対象としての准組合員の性格・動向の分析を行うという3つのアプローチを取った。また、補足として北海道農協における共済事業推進と准組合員対策という視点で、札幌市農協・きたそらち農協・帯広川西農協・きたみらい農協の4農協について現地実態調査を行った。
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平成12年度から16年度までの5ヵ年にわたって実施する中山間地域等直接支払制度創設の趣意は、耕作放棄地の増加等により水源涵養機能・洪水防止機能等、農業・農村の有する多面的機能の低下が特に懸念されている中山間地域等において、担い手の育成等による農業生産の維持を通じて、多面的機能を確保する観点から、農業生産条件の不利を補正するために平地地帯との格差の8割を直接支払する仕組み(制度)である。対象となる取組の内容は5区分に渡り、1)農業生産活動、2)多面的機能増進活動、3)生産性・収益向上活動、4)担い手の定着推進活動、5)その他の活動となっているが、その細目で農地及びその関連施設の整備・補修(ハード面)と土づくり対策や利用集積促進(ソフト面)が盛り込まれている。
この農地関連で実施された事業(活動)が、地域において農地利用の局面でどのような成果(影響や波及効果)を挙げたか、また課題はなんであったかを現地の実例に即して明らかにすることは、当該制度の今後の展開に資するのみならず、農地に係わる事業・制度の方向性にも有益な示唆を与えると考えられる。そのため本事業では、農水省と道が公開している中山間地域等直接支払制度の実施状況、地域の取り組みのレポート及び地域のアンケートを詳細に分析するとともに、上川管内美瑛町、富良野市、及び十勝管内足寄町、豊頃町の現地調査を軸として、北海道の特異性及び本事業のもたらした効果・問題点を指摘するとともに、事業に対する提言も試みた。