JA北海道中央会、JA北海道信連、ホクレン、JA北海道厚生連、JA共済連北海道本部は、その総意により、平成17~19年度の3ヵ年にわたり、重要課題として1)「WTO新貿易ルールにおける北海道農業・他産業への影響分析」、2)「農協事業活動における大規模農業生産法人との連携体制の構築」、3)「農協営農支援事業の広域的展開に伴う課題の析出と改善方策」、4)「担い手育成活動に果たす農協等役割強化」の4つに分け、多面的かつ総合的に農協事業運営体制の調査研究に着手することとし、当研究所はこの調査研究業務を受託した。
本年度は手始めに1)について取り組んだが、次年度以降、2)・3)・4)についても順次取り組んでいく予定である。
北海道農政部では、経営感覚に優れた効率的でかつ安定的な農業経営体を指導・育成するにあたり、農業改良普及センター等が利用する経営改善指導の基礎データ作成と、経営形態別・経営階層別の農業経営動向を分析し、農業情勢の変化に対応する施策検討を行うための基礎資料としている。
本業務は、こうした資料の作成に寄与するため、全道の農業改良普及センターを通じて収集された、簿記記帳を行っている農家約300戸のデータ(経営概況や経営収支等)を素材として、調査農家を7つの経営形態(水稲、畑作、酪農、野菜、肉牛、花卉、果樹)に区分し、経営形態別経営概況、財務状況の年次変動について集計・分析を行った。さらに、調査農家のうち、稲作、畑作、酪農について、7ヵ年継続調査農家を対象に、地域別、規模別、野菜作導入有無別等による収益状況の差異について分析を行った。
本調査は、北海道てん菜協会の委託を受け、畑作主要地帯の十勝、網走管内において、てん菜栽培を直播のみで行っている農家を対象に、平成16年度産てん菜について、経営面積毎に直播栽培の単位当たりの生産費調査を実施し、移植栽培と比較して直播栽培の優れた点を検証することを目的としている。
調査対象農家は、十勝管内10戸、網走管内5戸、計15戸である。調査農家を、てん菜面積「3~5ha未満」「5~7ha未満」「7ha以上」の3階層から抽出し、集計・分析を行った。比較対象データは、農林水産省統計局情報部公表の平成16年産てん菜生産費データを使用することとした。調査対象農家15戸の経営形態は、畑作専業が13戸、混同経営(畑作+酪農)が2戸である。
以上調査の結果をまとめ、年度内に報告書を提出し完了した。
現在、WTO農業交渉では、市場アクセス、国内支持、輸出に関する規律のそれぞれの分野について、各国共通に適用される取り決め(モダリティ)の確立に向けた交渉が行われている。具体的には、農業保護の削減目標値や、保護削減対象・対象外の線引き等の保護削減ルールである。その中にあって、北海道の主要な産物である小麦、てん菜、大豆、でん粉原料用馬鈴しょ等の畑作物も例外ではなく、財政支出を維持するためには、WTO協定において財政支出の削減対象外となる「緑の政策」へと転換することが求められている。そこで、これまで国が進めてきた品目別価格・支持政策(黄色の政策)を、平成19年度には品目横断的政策とする直接支払制度(緑の政策)へと転換することが平成17年3月25日に閣議決定された経緯にある。
JA北海道中央会は、この制度の変更設計に当たって、道内の農業者からの意見・要望等を収集・整理し、北海道畑作の持続的発展を基本とした政策要求運動に反映させる必要があるとし、前年度末(平成17年3月末)に畑作農業経営者に意向を問うアンケート票を作成、4月に調査を実施した。
なお、調査・分析内容の中間報告内容は、6月21日開催の「北海道農協畑作青果対策本部委員会」(本部事務局:JA北海道中央会)から公表され、マスコミにもリリースされた。最終報告書は8月に提出し完了した。
本調査は、地域類型ごとに調査農協の准組合員対策の現状を明らかにしながら、本州の事例も同時に取り上げていくことで、北海道の農協における准組合員対策の改善方向を提示することを目的としている。
調査対象は、准組合員比率が高く、事業計画書で准組合員の加入促進を明示している農協から地域類型別に選定した。具体的には、都市型農協としてJA函館市亀田、準都市型農協としてJAたきかわ、農村型農協としてJA中標津町を調査対象とした。本州の事例としては、農業生産も盛んな福島県を対象に、JA福島中央会及びJA新ふくしまを調査した。
食品の安全性確保と、消費者の食品に対する信頼回復を目的として、現在、食品全体の生産・流通過程に対するトレーサビリティシステムの導入が政策的に進められている。本調査は、平成15年度に実施した「青果物トレーサビリティ・システムの導入に係る調査業務」と平成16年度に実施した「青果物の生産履歴情報蓄積・開示システムの構築に向けた調査業務」に続き、青果物を対象に生産履歴情報の蓄積やトレーサビリティを確保するシステムについて、実用性や課題を明らかにすることを目的とする。また、産地における簡易残留農薬分析の可能性や政策的に導入が打ち出されつつあるGAP(適正農業規範)への対応の検討を含め、本業務では次の5つの項目で調査・検討を実施した。
1) トレーサビリティシステムの意義と構成についての整理
2) 既存のトレーサビリティシステム等の整理
3) 消費者の以降の分析
4) 簡易残留農薬分析の可能性と課題の整理
5) GAPの動向と方向性の検討
本調査では、北海道の主要な水田地帯における中堅的な水田農家について、野菜・花卉といった集約的な転作作物の導入による経営展開の取組み事例を収集し、その収益構造を分析することによって、水田農家の所得向上対策のあり方について明らかにすることを課題とした。具体的には、1)経営耕地面積5~15haの稲作農家で、転作作物を本作化し全体の経営がほぼ安定的な家族経営の農家であること、2)原則として、作物ごとの経営収支把握できること、という条件で、15戸を選定した。
本研究課題の研究期間は2年間であるが、1年目である本年度は、実態調査によって事例の整理を行い収益構造の大まかな特徴を解明することについて主眼を置いた。3戸については、簿記データに基づいて収益性の分析を行い、残り12戸の概要とあわせ報告書を提出し年度内業務を終了した。
平成10年4月の消防法改正により、日本でもセルフ給油が解禁となったが、最近の原油価格高騰によりガソリン・軽油等自動車用燃料の価格が大幅にアップしていること、また給油所運営の低コスト化が急務となっていることから、全国的に給油所のセルフ化が進んでいる。北海道においても都市部を中心にしてセルフ給油所が急増しており、従来のフルサービス給油所の運営に大きな影響を与えている。
農協系統にあっても、給油所のセルフ化対策の構築は不可欠であるとの認識から、セルフ利用に係る実態や理由・要望等を明らかにするため、セルフ給油所において利用客から直接聞き取る方法で、アンケート調査を実施することとなった。全道に先駆けて開設されたセルフ給油所3ヵ所(小樽有幌給油所、たいせつ東鷹栖給油所、ふらの新富給油所)を選定し調査を実施するとともに、比較対象データを収集するため、セルフ給油所設置農協が運営するフル給油所2ヵ所(たいせつ鷹栖給油所、ふらの富良野給油所)においても、セルフ化に関連するアンケートを実施した。
これらの研究結果を取りまとめ、11月に報告書を提出し完了した。
中央農業総合研究センターでは、水田作の新技術に対する経営的評価や耕種経営における経営管理の高度化に関する研究の一環として、「長期動向を考慮した農業設備投資の意思決定支援システムの構築」という課題を実施している。この研究の目的は、農業経営の設備投資計画を事前に評価し、その後の経営展開を予測するシステムを構築することである。この研究により、農業経営者に設備投資等を行う際の客観的な情報を提供することで、その意思決定を支援できることが期待される。
しかし、この意思決定支援システムの構築にあたっては、実際の農業経営のデータを活用したシステムを構築し、その過程での農業経営者からの助言等が必要不可欠である。
このため、当研究所は中央農業総合研究センターの委託を受け、信頼度の高い専業稲作経営主体による経営データ収集のため、稲作中核地帯である北村の稲作農家を選定、経済記録・作業記録の記帳を依頼した。
中央農業総合研究センターでは、今後、システムを完成させ、全国の普及組織を通じて農業関係者の活用に供する予定とのことである。
※ 未登録
平成19年、ホクレンが設立90年を迎えるにあたり、「年史」を作成する。その第2章「最近の10年」の第1節「北海道農業の動向」に係る執筆を受託した。執筆内容は、「ホクレン80年史」が発行された翌年にあたる平成8年以降に注目されるトピックに即して設定された。具体的には、1)新農業基本法と北海道農業の関わり、2)農業の国際化・農産物自由化への対処、3)「農協改革」の進行とJAグループ北海道、4)食品安全をめぐる動向、5)環境調和型農業の展開、の5点である。
※ 未登録
食品製造事業者におけるバイオマス利活用の意識調査等を行って、食品製造過程で発生する非食分を中心とした資源を可能な限り利活用する手法を構築し、農業生産から食品製造過程に至る過程での循環型社会を形成するための課題の整理と可能性を検討したうえで、環境保全型農業の構築に向けた生産システム等を明らかにすることが本業務の目的である。
本業務の主要課題は、1)「循環型社会形成の前提となるバイオマスの生成と利活用及び処理調査」、2)「農・畜産物加工におけるバイオマス利活用の需要と供給量調査」、3)「環境保全型農業の推進事例調査」、4)「農業生産から食品製造に至る過程での必要となる取組み及び体制整備の検討」である。これらについて取りまとめ、年度内に報告書を提出し完了した。
北海道米の食味は、品種改良や栽培管理技術、調整保管技術開発といった、いわば官民挙げての努力によって確実に向上してきたが、北海道米の評価向上に結び付けることが必ずしもできていない。
昨年は中央会の委託を受けて、北海道大学と共に札幌、東京、大阪にて旧食糧庁の「米食味試験実施要領」に準じた食味試験と、併せて客観的な裏付けをとるために様々な物理特性も比較試験した。今年は、道産米食率が低い道東、道北において食味試験を実施することとした。道東・道北に住む人たちの道産米食率の向上のためには、そこでの住民の食味に関するデータを入手する必要があるためである。
本業務は以上の調査から年度内に報告書を提出し完了した。
米の販売対応が多様化している現状において、消費者の米の購入行動は一層複雑になった。本業務は、消費者へのアンケート調査によって、消費者が米を選択する上で重要視している商品特性について、購入先による違いについて数量的に把握すること、さらには、北海道内の居住地域によって消費者の購入行動は異なるものと考えられることから、地域による差異を明らかにすることを目的とした。
調査地点は、いずれも都市近郊で、札幌市内及び近郊の3地点と、上川・空知の稲作地帯の1地点、畑作・酪農地帯として道東部の2地点である。
これらアンケート調査データと共に報告書を年度内に提出し完了した。
本研究では、十勝及び網走といった主要畑作地帯に焦点を当て、これら2地域の中から音更町、更別村、芽室町、美幌町、訓子府町の5町村の実態調査を通じて、これまで農地保有合理化事業が畑作に果たしてきた役割を明らかにした。そして、それを確認したうえで、農地保有合理化事業に関する課題、並びにそれを解消するにあたって必要となる施策のあり方について検討した。
これらを取りまとめた報告書を2月に提出し完了した。
現在、北海道内においては大型量販店やコンビニエンスストアの出店が相次いでおり、農業生産地域においても、食品や生活用品の流通・小売環境が大きく変化している。
こうした中、今後の農協生活購買事業のあり方についても新たな考え方が求められていることから、組合員の消費購買意識を把握するためアンケート調査を実施した。
選定した全道10農協の全組合員にアンケート調査票を配布し、1,139戸から回答を得て、現在データを入力中である。当事業は2ヵ年継続事業であり、平成18年度に集計・分析を行い委託者に報告書を提出する予定である。
米を取り巻く情勢が変化する中、平成17年10月に取りまとめられた「経営所得安定等大綱」において、品目横断的経営安定対策の対象者の要件や制度の詳細が示された。さらに、これと平行し米政策改革推進対策の見直しも行われることとなり、平成18年度は新たな需給調整システム移行への条件整備等の状況を検証する期間と位置付けられた。
そこで、北海道稲作経営の持続的発展のために、道内の稲作農家の意見・要望等を今後の政策設計に反映させるため、意向調査を実施することとなった。
今後、意向調査票の配布・回収、データ入力、集計・分析を行い、報告書を取りまとめる予定である。
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