本道の農業は、担い手の減少、食料自給率の低下やWTO等の内外市場開放圧力の増大、食の安全や国際穀物価格の高騰等、農業を取り巻く環境が一段と厳しい逆風下にあること等から、北農5連の総意に基づき平成20年度~22年度の3カ年にわたり、1)地域経済活性化策としての産業観光の創出、2)地元密着型の食と農に対する意識啓発の展開、3)水田・畑作経営所得安定対策の組合員経営に及ぼす影響と行動対応、4)個別経営体を支援するシステムの組織的展開とJAの役割、5)新販路開拓と流通戦略の再構築、6)組合員・家族の高齢者福祉の構築方向とJAの役割評価の、6つの調査研究テーマを重要課題として設定している。
本年度は、3)・4)の2課題について取り組んだ。3)の「水田・畑作経営所得安定多作の組合員経営に及ぼす影響と行動対応」については、テーマに即し、安定対策の影響等について、地域に及ぼした影響等の調査分析を行うとともに、新政権下で新たな所得補償政策が導入されることから、今後の系統組織行動のあり方についても含めて報告を行った。また、4)の「個別経営体を支援するシステムの組織的展開とJAの役割」については、地域の持つ支援システムの特性を極力引き出すこと及び各地域での支援のあり方が地域作物や地帯別に特徴を持つこと等から、作物班、酪農班、施設利用班に各リーダーを置いて調査分析を実施している。これらについては、4月中には報告する予定である。
世界の食料需給は人口増加とBRICS等の新興国の経済成長を背景として緩和から構造的な逼迫に急転換する情勢下にある。一方、我が国をみると、将来的には人口の減少による需要減退の方向へと移行することが予測されている。こうした環境を踏まえるならば、今後、道産農畜産物の生産基盤の維持・拡大による増産をはかるためには海外輸出等新たな需要を創出し販売指定席を確保することが必要不可欠である。
本調査研究では、今後3カ年を目処に調査対象地域(候補:台湾、香港、シンガポール、タイ等)の輸入検疫条件等検査手続き・手順や売買取引上の法的規制・要件等、既往の関係資料・データを収集するとともに、現地大手流通業者等へのヒアリング調査による求められる品目(商品)とその期待量、売買取引に関する取引要件と阻害要因等を把握・精査することによって販路開拓・拡大の可能性を探り提言する。なお、初年度である本年度は調査対象地域を台湾(中華民国)とし、食品輸入制度や各種手続き、販売の留意点等に関する最新の情報を整理するとともに、現地大手輸入業者へのヒアリング調査結果等を取りまとめた。
本調査研究は、JA共済において昨今取り組まれている「3Q訪問プロジェクト」の次世代対策としての有用性を検証することを課題とし、LAへのアンケート調査や昨年度の目標達成農協へのヒアリング調査から接近を試みた。
この「3Q訪問プロジェクト」は、「3つの質問」を通して農協及びJA共済の概要、加入保険・共済の補償内容の確認を呼びかけるというもので、開始から今年度で3年目を迎えている。このプロジェクトは徐々に軌道に乗りつつあるが、同時に課題も山積している。大きな課題は、各農協への平均的な定着と情報収集・活用面でのステップアップであり、連合会の各農協への対応にも変化が求められている。さらに、いかにきめ細やかな対応を取るかも3Q訪問プロジェクトの将来を左右する上で重要であり、連合会の活躍が期待されている。
これらの内容について報告書として取りまとめ、9月末に委託者に提出して業務を完了した。
北海道の農業は、農業基本法の施行以降、大規模化を達成し、「基本法農政の優等生」「構造政策の優等生」等と呼ばれている。しかし、その後、農産物の輸入自由化、それに伴う農産物価格の下落の影響を受け、農業産出額、農業従事者数、農家数、耕地面積が減少する等、最近、その衰退傾向が著しく進行しているのも事実である。また、農村部においては、過疎化、集落機能の低下が以前にも増して進行しており、消滅が危惧されている地域もあるといわれている。
一方で、1990年代後半以降、こうした危機からの脱却を目指し、様々な対応策を模索する市町村や農協が散見されるようになってきた。換言すれば、労働力支援組織、離農防止、集落機能維持に関わる組織、農地受け皿法人、農地保有合理化法人、新規就農・参入支援に関わる組織等といった多様な主体を構築し、これらの主体が有する機能を活用して、地域農業ひいては地域をなんとか維持・発展させようと努める市町村や農協が登場してきたということである。
こうした本調査研究では、これら地域農業の維持に関わる様々な主体の統一体を「地域農業支援システム」と定義づけ、その実態把握並びに類型化を行い、地域及び地域農業の発展方向について検討を行った。結果については報告書として取りまとめ、3月末に委託者に提出し、事業を完了させた。
わが国石油業界は規制緩和及び低経済成長に伴って再編を余儀なくされ、現在、これまでとは意識を異にしたSSの生き残り策が求められている。系統燃料自動車事業についても、平成15年の第23回JA大会決議に基づいてJA経済事業改革中央本部が同年12月に発表した経済事業改革指針の中で、「Aコープ・機械センター・SS等の拠点型事業の収支改善・競争力強化」が目標のひとつとして挙げられている。
本調査研究では、この目標の達成に向けて員外一般顧客における系統燃料自動車事業の利用状況及び意識について把握すること、またほくでん生協組合員における系統燃料自動車事業の利用率低下の背景を探ることを目的として、ほくでん生協組合員を対象とした利用状況・意識調査を行った。その際、因子分析・クラスター分析により回答者を特性別の8つの小集団に区分した。これらの結果については報告書として取りまとめ、12月末に委託者に提出して業務を完了した。
JAグループ北海道が中心となって設立した「北海道バイオエタノール株式会社」は、十勝管内清水町で交付金対象外てん菜(糖質原料)と規格外小麦(でんぷん質原料)からバイオエタノールを生産するシステムを指導した。この操業は単なる余剰生産物の解消の方途のみでなく、環境改善や耕作地の利用率向上のほか、産業連関的な地域経済活性化につながるものと期待されている。
また、世界的な食糧不足基調から、バイオエタノール原料について食料と全く競合しないセルロース系の検討も進んでおり、本プラントの生産実証も多角的な選択肢の検証に寄与するものである。
本調査研究は2年目であり、工場の本格的な操業開始にあたり、具体的な実績数値(前年は操業計画段階の計画値を用いた)を基礎として、バイオエタノール生産フロー(各工程)の詳細なトレースにより、原料生産、輸送、製品生産時、また製品の消費拠点の輸送に至るまでに投入される石油量及びエネルギーと、副次的生産物及び主産物として排出(生産)される物量とエネルギーとの総合収支をLCA(ライフサイクルアセスメント)手法によって対比的に検証するものである。試算検証の結果を取りまとめ、4月末に報告書を提出する予定となっている。
野菜の生産量(作付面積)は、輸入増加や景気低迷等による価格低迷、産地における労働力不足等の影響を受け、減少傾向にある。また、その流通においても、空き包装容器の削減や省力化等の環境負荷低減が求められており、産地側としてもこれらのユーザーニーズに対応していく必要に迫られている。
中でもブロッコリーにおいては、輸送中の鮮度保持が包装容器に要求されるため、従来から発泡箱が使用されているが、廃棄処理の困難さに加え環境への負荷も大きいことから、敬遠される傾向が強まっている。また、ゆり根についても傷つきや乾燥の防止のためにオガクズを入れたカーテンコート段ボールが使用されているが、製造コスト・安全性等の問題から段ボール業界全体としてこのカーテンコート段ボールの製造を中止する動きがあり、オガクズも国産木材の利用減少から供給量減少と価格上昇が問題となっていて、将来的に両者とも不安を抱えている。
これらより、本調査研究においては、ブロッコリー・ゆり根の代替包装資材の検討材料として、1)コスト・作業効率に関するもの、2)青果物の生化学的反応から見た品質差異に関するものの2方面から様々な包装資材の比較分析を平成21~22年度の2ヵ年度にわたって行い、両者から総合的な検討を加えていく。今年度はこれら作物の流通状況に関する基礎調査(生産地及び消費地の現地聞き取りを含む)及び実験室段階の試験によるデータ収集を行い、それらの結果について3月に中間報告会を開催した。
本調査研究では、農業及び農業金融における環境変化(担い手の法人化・大型化、大手企業の農業参入、担保不足、CDSによる補償問題)に対する、北海道信連・JA(組合員)の農業融資における融資推進・体制・管理のあり方、情報提供の問題点等に対する解決方策について、意向調査等により研究した。
特に、他行が近年徐々に農業界に参入し始めており、その動向と影響等を探るとともに北海道信連からの融資に係るJAへの機能還元のあり方についても研究した。
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JAオホーツク網走管内は、土地利用型の大規模畑作・酪農そして青果物等多様な農畜産物を有し、恵まれた気象条件の中で効率的な農業が営まれてきた。しかし、近年の農業を取り巻く環境変化により、農家戸数の減少や高齢化等もあり、経営基盤の脆弱化が懸念されている。
このような厳しい状況を背景としてJAオホーツク網走は、管内の農業所得の維持・確保、農畜産物の生産安定化を目指しており、平成20年度から農業振興策の一環として黒毛和牛を対象とした「農林水産物・食品地域ブランド化支援事業」(国の補助事業、3ヵ年)の取り組みを開始、この事業を軌道に乗せることにより他農産物への波及効果をも狙っている。
当研究所は、JAが当該事業に取り組むにあたりプロデュースを担当し、地域ブランドを確立できるよう地域段階の事業実施主体(JAオホーツク網走)に、ブランドコンセプトの設定、生産・品質管理、商標管理、マーケティング等の一貫した取り組みについて助言を行った。
※ 未登録
北海道の稲作は、品種・技術改良が進み、21年産からデビューした「ゆめぴりか」をはじめ、ふっくりんこ、おぼろづき等、品質面では一定の評価を得るまでになってきている。また、北海道米の道内食率も21米穀年度では過去最高の78%となり、目標数値の80%達成が目前となってきている。しかし、稲作農家経営においては、コメ価格の下落により収益性は大きく低下し、所得確保が危ぶまれる状況が生じてきている。水稲作付面積が大きい経営、所得形成において水稲部門への依存度が高い経営ほど、この影響は大きい。
国の米政策が不透明な中、米価格が今後どのように推移するかを見極めるのは難しい面があり、稲作産地では生産者の高齢化や後継者不足の問題もある。持続的に北海道の稲作生産基盤を維持していくためには、稲作産地における実態調査を行うとともに、経営管理手法や栽培方法にまで踏み込んだ対策が急務となっている。
本研究ではそうした問題意識に基づき、1)大規模稲作経営農家の経営実態調査、規模拡大と生産費の関係、大規模稲作経営存立において必要とされる地域的整備条件、コスト低減化に関する考察等を行うとともに、2)大規模水田作経営における経営規模、経営形態による経済性実態の整理、生産履歴基調と並行した基本技術調査を行った。
世界の食糧需給が、途上国を中心とする人口増加及び経済のグローバル化等によって依然として逼迫傾向にある中で、わが国の食糧自給率は相変わらず40%前後で推移しており、世界最大の食糧輸入国であり続けている。これまで政府は自給率向上のために各種施策を講じてきたが、耕作放棄地の拡大や農業者の高齢化のために、いまだ目標とする水準まで達するに至っていない。
北海道の生産現場においては、市場原理のままとする規制緩和の拡大及び原油・肥料・飼料価格の高騰やその価格転嫁がなし難いこと等により、農業生産額及び農業所得が激減しており、主として専業的農業者によって担われている農業経営は大きな打撃を被っているところである。
我が国の食糧基地として重要な役割を果たしてきた北海道農業を維持し更に発展させていくためには、専業的農業者を中心とする分厚い担い手の存在とその後継者の確保・育成が必須である。そのためには合理的な農業所得の確保が大前提となり、そのために必要な施策・支援として政府の予算の措置あるいはJAの取組が必要となる。
本研究は、こうしたことを背景に、新たな食料・農業・農村基本計画策定にあたり、基本計画が具備すべき事項や枠組みについて、北海道の立場から具体的に提案するものである。調査検討内容については、北海道農業研究会を中心とする多くの研究者の参加の下、7月に本報告を行い、業務を終了した。
この事業は、北海道馬鈴しょ協議会から、馬鈴しょ萌芽防止剤としてのエチレンについて、所管する農水省に農薬登録申請するにあたり、策定支援依頼を受けたものである。
主な委託業務の内容は、エチレンを対象物として登録申請に必要な試験成績表・文献・資料の入手・整理である。具体的には、法令通知に基づいた試験成績資料の入手・整理については、1)物理的・化学的性状に関すること、2)経時的安定性に関すること、3)成分分析・製造方法等に関すること等である。また、学術文献・データ等の入手・生理については1)急性吸入毒性試験、2)復帰突然変異試験、3)その他関連文献・データ等である。
以上の内容について、平成21年10月に「エチレンによる馬鈴しょ萌芽抑制効果試験の概要」として報告した。これを馬鈴しょ協議会は農水省に提出・説明したが、農水省からは、正式受理を行い環境庁との合同会議に持っていくにはまだまだ時間がかかる旨、また今回の申請内容では前段作業としてまだ準備不足である旨指摘があった。これを受けて、更なるデータ等の入手・整理の拡充を行い、報告書の提出をもって終了した。
※ 未登録
北海道担い手育成総合支援協議会は、担い手アクションサポート事業、及び担い手経営革新促進事業を実施し、担い手育成・確保アクションプログラム実現のために必要な活動等を地域の実情に応じて取り進めているところである。
担い手アクションサポート事業の内容は、1)スキルアップ支援活動、2)地域営農システム確立活動、3)集中的な技術・営農支援、4)新たな人材の育成・確保活動、5)担い手育成確保・普及支援活動、6)農業経営改善計画等作成指導活動、及び7)農地の利用調整活動である。担い手経営革新促進事業の内容は、1)経営革新モデルの実践事業、2)特定対象農産物の生産支援事業、及び3)先進的小麦生産等支援事業となっている。
本委託業務は、この「経営革新モデルの実践事業」における、モデル経営体等の生産費調査データ(平成20年度)の分析を行うものである。具体的には、まず、水稲、秋まき小麦、大豆、でん源馬鈴しょ、てん菜の5品目を対象としてモデル経営体の生産費データと農水省による生産費統計値を比較し、今後全算入生産費を調査して1)省力性、2)収益性、3)コストを評価する予定である。また、モデル経営体が採用した技術は経営革新を促進する実用段階に近い技術と考えられることから、モデル経営体の技術選択データを基に経営の方向性がどのように考えられているかについても検討を行った。
これらの結果を取りまとめ、平成22年3月に報告書を提出し業務を完了した。
本調査研究では(株)ホクレン油機サービス及びJAいしかりを事例として、系統燃料自動車事業の強化を目的としたSS店頭会員及び灯油配送客の顧客分析を行った。その際、GIS(地理情報システム)を援用して、空間的解析及びその結果の可視化を試みた。
それらの結果について8月末に報告書を提出し、業務を完了した。