本事業は見出しを基本課題とした北農5連の委託研究である。平成20~22年度の3カ年にわたり、6課題を設定し鋭意取り組んできた。本年度はその最終年であり、下記2課題について実施した。
「研究課題1:北海道農産物の新販路開拓(輸出拡大)と流通戦略の再構築」では、世界的な日本食ブームやアジア諸国の所得向上を好機ととらえ、北海道の高品質な農産物の輸出促進を新たな販路開拓の戦略と位置づけし、東北各県(青森県、宮城県、秋田県、福島県)と道内を対象として先進的に輸出に取り組むJA、企業、関係機関等へのヒアリング調査を実施し、その取り組み実態と課題等の把握を行った。また、その結果を基に、輸出拡大を図る上でのブランドづくり、流通チャネルの形成、輸出阻害要因とその解決策、また道産品をどうアピールしていくか等、輸出に向けた実践的手法・手順等を検証・総括した。
「研究課題2:北海道における農村福祉問題の構図と農協福祉活動の展望」では、北海道内の畑作地帯である訓子府町、水田地帯である栗山町、酪農地帯の浜中町の3地区の生産調査に基づく基礎構造(家族構造)の分析を行い、それぞれの地区の福祉問題の対応策や課題について提起し、課題解決のための支援体制のあり方について言及すべく取り進めた。
世界の食料需給は、人口増加とBRICs等の新興国の経済成長を背景として、緩和から構造的な逼迫に急転換する情勢下にある。一方我が国をみると、将来的には人口の減少による構造的な需要減退(経済縮小)の方向へと移行することが予測されており、特に農業等内需型産業の将来にとって深刻な供給過剰状態へと移行することが危惧されている。
そこで本調査研究では、平成21~23年度の3ヵ年を目途に、新たな道産農畜産物の需要創出に向けた輸出拡大の可能性を検証することとした。調査対象地域(候補:台湾、香港、シンガポール、タイ等)の輸入検疫条件等検査手続き・手順や売買取引上の法的規制・要件等、既往の関係資料・データを収集するとともに、現地輸入卸売会社等へのヒアリング調査によって、売買取引に関する取引要件や阻害要因等を把握することを主な目的としている。初年度は台湾について、本年度は香港について調査を実施した。
昨今の農業を取り巻く情勢が厳しさを増すなかで、JA共済は特色でもある「ひと・いえ・くるま」の充実ラインアップを充実させ、生活総合保障を提供し、保障提供活動を通じて地域社会づくりに寄与し、組合員・利用者をはじめとした地域の人々との信頼関係を構築しようと努めている。この信頼関係をさらに強くし、また次世代層等のニューパートナーとの仲間づくりを積極的にすすめる方針は、農協のLAを中心とした3Q訪問活動にみられ、新規契約・新規加入を獲得、あるいは准組合員対策や組合員次世代対策を大いに意識した取り組みであると考えられる。しかし、地域間、あるいはJA間における取り組みの格差等、いくつかの課題が指摘されている。
そこで本調査では、JA共済において昨今取り組まれている、3Q訪問プロジェクトの次世代対策としての有用性を検証することを課題として、LAへのアンケート調査や昨年度の目標達成農協へのヒアリング調査から接近を試みた。
JAグループ北海道が中心となって設立した「北海道バイオエタノール株式会社」は、平成21年度より十勝管内清水町で、道産の交付金対象外てん菜(糖質原料)と規格外小麦(でんぷん質原料)からバイオエタノールを製造する工場の操業を開始した。このプロジェクトは、余剰農産物の解消だけでなく、環境改善、耕作地の利用率向上のほか、産業連関的な地域経済活性化にもつながるものと期待されている。
LCA(Life Cycle Assessment)とは、原料生産・加工・製品生産・製品使用・廃棄までの、製品ライフサイクル全体のエネルギー収支や温室効果ガス排出量から、環境影響評価を行う分析手法である。本事業ではこのLCAを用いて、バイオエタノールとその他副産物の原料生産から消費までのエネルギー収支・温室効果ガス排出量について、平成22年度1月期の工場実測値をもとに原料のてん菜と小麦の比率をさまざまに設定して算出し、同機能の製品(従来のガソリン等)の原料生産から消費までとの比較を行った。また、最新の産業連関表を用いて、想定される2種の原料比率でのバイオエタノール生産が地域経済に及ぼす効果についても算出した。
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青果物輸送においては近年、空き包装容器の削減や省力化等の環境負荷低減が求められており、産地側としてもこれらのユーザーニーズに対応していく必要に迫られている。
本事業は、こうした状況を踏まえ、環境対応型包装資材の導入にあたっての検討材料として包装資材ごとに1)コスト・作業効率に関するもの、2)青果物の生化学的変化からみた品質差異に関するものの2方面からの比較分析を2ヵ年度にわたって行い、両者から総合的な検討を加えるものであり、本年度はその2年度目である。
本年度は、平成22年4月に道内JA・全国卸会社へのアンケート調査を実施し、包装資材の見直しに関する各関係者の取組・考え方の現状について整理するとともに、8月にJA新しのつ産ブロッコリーを対象に現行品を含めた4種類の包装資材を用いて名古屋市への実地輸送試験を行った。
JAオホーツク網走管内は、土地利用型の大規模畑作・酪農そして青果物等多様な農畜産物を有し、恵まれた気象条件の中で効率的な農業が営まれている。しかし、近年の農業を取り巻く環境変化により、農家戸数の減少や高齢化等もあり、経営基盤の脆弱化が懸念されている。
このような厳しい状況を背景として、JAオホーツク網走は管内の農業所得の維持・確保、農畜産物の生産安定化を目指しており、平成20年度から農業振興策の一環として黒毛和牛を対象とした「農林水産物・食品地域ブランド化支援事業(国の補助事業、3ヵ年)」の取り組みを開始した。JAとしては、この事業を軌道に乗せることにより、他農畜産物への波及効果をも狙っている。
当研究所は、JAがこの事業に取り組むにあたりプロデュースを担当し、地域ブランドを確立できるよう地域段階の事業実施主体(JAオホーツク網走)に、ブランドコンセプトの設定、生産・品質管理、商標管理、マーケティング等の一貫した取り組みについて助言を行った。
当研究所が平成19~20年度に行った「稲作最適規模の試算と稲作生産コスト低減の方向に関する調査・研究」では、稲作付規模が10ha以上では生産費の低減傾向が横ばいとなり、規模拡大のメリットが発揮されない要因の詳細な解析を進める必要があった。
そこで本年度は、1)大規模水田作経営における経営管理手法の高度化を図るため、JA等による経営管理指導の実態解析、生産管理と原価・収益情報の連動、経営情報活用法の実態解析等を行い、経営管理指導法に関する提言を行うとともに、2)水稲直播栽培導入経営の現状把握のため、直近10年の研究成果を整理、水稲直播栽培の導入状況の調査・整理、水稲直播栽培の生産費経済性分析等を行った。
JAグループ北海道が中心となり平成19年6月に設立した「北海道バイオエタノール株式会社」は、十勝管内清水町で道産の公費金対象外てん菜(糖質原料)と規格外小麦(でんぷん質原料)からバイオエタノールを生産するシステムを稼働した。この事業は、北海道の農畜産物からバイオエタノールを製造することにより、基幹産業である農業の基盤強化と地球温暖化の防止、農業・農村の活性化等を目的とするもので、併せて、産業連関的な地域経済活性化につながるものとして期待されている。
本件に関する研究は通算3年目となるが、今回の研究の目的は、過去2ヵ年にわたる研究の成果を踏まえ、北海道農業におけるバイオエタノール生産の取組意義、バイオエタノール製造工場の立地・創業の経済効果、地球温暖化防止への寄与等について検証するものである。
本研究の成果については、「報告書」と「普及啓蒙資料」として取りまとめ委託者に提出し、平成22年度事業を完了している。
本事業では、農業及び農業金融における環境変化(担い手の法人化・大型化、大手企業の農業参入、担保不足、保証問題等)に対する、JA北海道信連、JA(組合員)の農業融資における融資推進・体制・管理のあり方、情報提供等の問題点に対する解決方策について、意向調査等により研究した。特に、他行が近年徐々に農業界に参入し始めており、法人を軸としてその動向と影響等を探るとともに、JA北海道信連からの融資に係るJAへの機能還元のあり方についても継続して研究している。
JAたいせつは、平成21年9月に旭川市の補助事業(3ヵ年事業)により国道40号線沿いに直販施設を取得し、運営しているが、一方において関連する事業として次の8課題について調査報告が求められている、8課題の内容としては、1)店舗の広さ調査(売上による適正面積)、2)店舗の場所的な立地調査(都市部・農村部比較)、3)販売品目の時期的な売れ筋調査、4)消費者ニーズ(消費者が求める商品アイテム等)、5)直売所の運営における課題調査、6)顧客の年代層調査、7)リピーター顧客調査、8)継続実施が可能な運営費調査、等である。本研究所はこれら8課題のうち、4)・6)・7)の3課題について調査・分析を担当した。
調査方法は、本研究所が前掲3課題を設問に網羅したアンケート票の設計を担当するとともに、店舗がアンケート票の必要枚数を印刷・常備し、年間(平成22年5月~平成23年8月)を通じた顧客の協力によって回収した回答票を基にデータ集計・分析を行った。
本事業は、馬鈴しょ萌芽防止剤としてのエチレンについて、北海道馬鈴しょ協議会が所管する農水省に特定農薬登録申請するにあたり、農水省から新たに所定の様式が提示されたことから、前年に引き続き策定支援依頼を受けたものである。
主な委託業務の内容は、エチレンを対象物として登録申請に必要な試験成績書・文献・資料等の入手・整理である。なお、平成22年10月に「エチレンによる馬鈴しょ萌芽抑制効果試験の概要」として、馬鈴しょ協議会より農水省に提出しているが、安全委員会、審議会等の会議において最終承認に至るまでは、まだまだ時間がかかるところである。当研究所としては、継続して登録が正式に承認されるまで新たな資料作成等支援を行うこととしている。
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北海道農政部では、経営感覚に優れた効率的で安定的な農業経営体を育成するための経営指導資料の作成、及び農業経営対策にかかる施策検討を行うための、経営形態別・経営階層別の農業経営動向の分析に基づいた基礎資料の作成が求められている。
本業務は、こうした資料の作成に寄与するため、全道の農業改良普及センターを通じて収集された簿記記帳を行っている農家約300戸の経営データ(経営概況や経営収支等)を素材として、調査農家を7つの経営形態(水稲、畑作、酪農、野菜、肉牛、花卉、果樹)に区分し、経営概況、財務状況の年次変動について集計・分析を行った。さらに、調査農家のうち稲作、畑作、酪農について12か月継続調査農家を対象に、地域別、規模別、野菜作導入有無別等による収益状況の差異について分析を行った。
平成23年度から実施される農業者個別所得補償制度は、輪作体系の維持確立を図り、持続可能な畑作農業を展開するために、米だけでなく、小麦、大豆、てん菜、でん粉原料用馬鈴しょといった我が国の主要畑作物を対象に加え、これらの生産性及び品質向上に努力した生産者に対し、円滑な生産が実施できるよう助成措置を講じることとしている。しかし、これら以外の畑作物は、輪作体系を維持し、自給率の向上を実現する上で重要な役割を果たしているにもかかわらず、その対象とはならなかった。小豆、いんげん、そらまめ、えんどうに代表される雑豆はその典型といえる。
一方で、本道における雑豆の生産状況は決して安定しているとはいえない。例えば昭和55年に46,700haあった小豆の作付面積は、ここ数年23,000ha前後で推移しているものの、減少傾向にある。また、中国、カナダ、アメリカといった国々から、乾燥豆だけでなく加糖餡をはじめとした製品が輸入されており、その数量が年々増加傾向にある。現在、その価格は関税割当制度(TQ制度)の適用により高い水準で維持されているが、仮にWTO交渉の合意、あるいはTPP等の協定への参加が決定した場合、大幅に引き下げられることが危惧される。
こうした環境の変化に直面している雑豆生産の今後の生産振興のあり方について検討するのが本調査業務の目的である。具体的には、1)主産地に対する意向調査、2)雑豆生産環境の変化等の予測、3)今後の雑豆の生産振興の対応方向、4)今後の雑豆の経営安定対策のあり方等について検討し、平成23年末を目途にこれらの分析結果を取りまとめ報告する。
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本調査研究では、系統燃料自動車事業におけるCS(顧客満足度:Customer Satisfaction)向上を目的として、外部調査会社の登録モニター(道内一般消費者)を対象としたWebアンケートを実施した。その際、道内を6つの地域に区分して地域別回答傾向を示すとともに、関連する設問間のクロス集計及び性別・年齢階層別集計を行うことによって、どのような消費者がどのように燃料・自動車関連サービスを利用しているかを明らかにした。
この分析結果について、平成23年1月に報告書を提出し、業務を完了した。
日本の牛乳乳製品の1人当たり消費量はドイツ・フランス・アメリカ等の主要先進国の中では最も少なく、特に牛乳の消費量については関係機関の懸命な努力にもかかわらず依然として長い間減少傾向が続いている。そのため、本調査研究では酪農が主要な産業の一つである留萌振興局管内の消費者動向を小・中・高校の児童・生徒とその保護者へのアンケートから調査し、過去の(社)日本酪農乳業協会の全国・全道アンケート結果と比較した上で、地域的な牛乳消費拡大方策を検討した。
結果については、平成23年3月に報告会を開催、報告書を提出して業務を完了した。