(1) 「活力ある新たな北海道農業を創造するためのチャレンジ」(委託者:北農5連)
[概要]
本事業は3ヵ年を1期として進めてきており、本年度は4期目の最終年にあたる。平成23~25年度までの3ヵ年間に大きな基本課題の下で5つの小課題を設定し取り組んできたが、本年度は、以下の3課題に取り組んだ。
「研究課題1:センサスデータに基づく北海道農業の将来予測とその対応方向について」では、平成22年1月開催の食糧農業農村審議会企画部会で公表された、センサスデータに基づいた平成32年の全国の農業生産力の推計を受け、同様の手法により北海道の農家戸数・作付面積・家畜飼養頭数や農業生産力の推計を試みた。
「研究課題2:農協組合員意向調査」では、担い手不足と高齢化の進展で農業生産力や農村コミュニティの維持が困難な地域が増加していること、TPP交渉問題が将来不安を高めていることを受け、全道の組合員を対象にした営農・販売・購買・共済・厚生各事業に対する要望・意向調査を各連合会の共催により実施した。
「研究課題3:国際化の中での食料基地北海道の地域戦略と東アジアの食のネットワーク化について」では、グローバル化が激化する国際情勢の中で北海道が進むべき道として、東アジア諸国の農業・食料加工と共存する体制を構築することを目的に、計量的な調査・試算を行った。
政府は食料自給率向上のため米粉用米の生産を現状の4万トンから50万トンに、小麦を88万トンから180万トンに拡大する目標を設定しているが、北海道は小麦の大産地のため米粉用米の生産は必ずしも積極的に取り組まれていない。
本研究は、米粉を活用した米の需要拡大と北海道産小麦の需要を減らすことなく両者のWin-Winの関係を模索することを目的とした、平成24~25年の2ヵ年事業である。平成24年度は米粉の生産から流通にわたる構造的な基礎的分野の実態調査(ヒアリング調査を取り進め、中間報告書を提出した。本年度は道内外の米粉製品の生産・流通調査を継続し、米粉を活用した米消費拡大の展望について整理を行った。
平成25年、政府は「日本再興戦略」(6月閣議決定)や「農林水産業・地域の活力創造プラン」(12月閣議決定)において、農林水産物・食品輸出を倍増させ平成32年までに1兆円を達成する目標を掲げたが、農業分野では、輸出事業への取り組みの歴史が浅く、ノウハウやスキルが乏しいのが実態である。
本研究はロシア極東地域を対象にした調査研究であり、初年度はロシアの歴史、気候、民族、産業構造等の概要とサハリンの農業・食料・食品の流通事情や人々の暮らし、及びサハリンへの輸出手続きや税制度、輸出支援組織、府県の先進事例等を整理した。25年度は、沿海地方とハバロフスク地方を調査した。次年度はアムール州を加えた極東地域全体への輸出拡大の可能性について調査を行う予定である。
JA共済連では、平成25年からJAの支所・支店地域ごとに共済商品の推進施策を策定する「エリア戦略」に取り組んでいる。エリア戦略の地域区分は、普及指標・農家比率・高齢化比率の3つの指標から分類化されているが、必ずしも北海道の実情に合わないため、本研究ではJA正組合員の指標を用いて北海道の大規模広域農協を対象に、3ヵ年の継続事業として新たな地域区分の設定と検証を行う。
初年度である昨年度は、JA共済のデータ及び農業・社会経済関連指標に基づく旧市町村のセグメンテーションを基に、混合分布型クラスター分析によるエリア区分を試みた。本年度の分析結果については、対象JA各支店の営業動向と地域特性との間に不突合が見られたが、この結果は今後のエリア戦略を構築する上で有益な出発点になると考えられる。
これらの結果について平成26年2月に報告会を開催し、3月末に中間報告書を提出した。
本事業では、バイオエタノール製造過程で発生する残渣液(DWG)の利用拡大のため、北海道立総合研究機構畜産試験場及び十勝農業試験場と連携し、草地及び小麦後緑肥への施用法を確立するとともに、道の指導参考事項認定後の円滑なる実用化推進に向けて町や生産者との連携強化のための各種調査・情報収集を行っている。
24年度は残渣液の窒素分解特性等の各種分析調査を実施し、効果が確認された。25年度は採草地と一般畑地に残渣液を施用し、肥料効果や接触障害の有無等について道総研と連携して調査した。今後、草地及び小麦後緑肥への施用法を確立して道の指導参考事項認定を得るとともに、その円滑な実用化に向けて、関係機関・生産者との連携強化、情報収集を進める予定である。
JAカレッジではこれまで、JA北海道中央会の定めたJA組織・事業・経営を担う人材育成のための方針や研修体系に従い、JA職員となる学生の養成教育や農協役職員の資質向上、及び農業後継者の育成に努めてきた。その結果、JAカレッジの研修参加実績は近年増加傾向にあるが、依然としてJA間には格差がみられる。また、JA段階の組合員・役職員の学習・教育活動の実態を十分に把握できるデータも少ない。
このため、JA段階の組合員・役職員の学習・教育・研修活動の実態を把握するとともに、JAカレッジの位置づけや評価等の研修を行うことを本事業の目的として、継続して事業を行っている。平成23~24年度はJA職員の教育研修活動の調査を実施し、24年度の調査のまとめとして、1)組合員との強いつながりが職員を育てる、2)好評なJAカレッジの研修、3)JAトップのリーダーシップが重要、4)職員育成にはボトムアップが大切、5)JA運営のルールを文書化、6)部下育成のための必要資料、という6点を整理した。平成25年度は、「協同組合の人材育成」を目的にした一般組合員、青年部、女性部、新規就農者、担い手等を対象にした学習活動の先進事例を調査し、報告書を作成した。次年度も組合員学習活動の調査を継続する予定である。
これまで当研究所では、系統燃料自動車事業に関する調査として、顧客満足(CS:Customer Satisfaction)の向上を目的に、既存の利用者へのアンケート、提携するほくでん生協組合員及びホクレンSS未利用の潜在顧客を含めた道内の一般ユーザーへの各種アンケート調査を実施してきた。
このうち道内の一般ユーザーへのアンケート調査については、平成22年度に調査委託元が系統であることを秘匿した上で、マクロミル社の一般消費者モニターを利用したWebアンケート形式で第1回調査を実施している。この前回アンケート調査から3年が経過し、その間、EV・HV等の本格普及及び低燃費の軽自動車の販売増による自動車燃料需要の減少、新車ディーラーのメンテナンスパックの販売拡大、不採算SS・新法令基準を満たさないSSの閉鎖によるSS数減少等、SSをめぐる経営環境は大きく変化してきている。さらに、SS数の減少により「SS過疎地問題」が懸念されており、社会問題として取り上げられるようになってきた。
これらを背景に、本事業では平成22年度と同設問・同条件の対象者による調査を行うことで、一般的な国内・道内の燃料自動車事情の変化と、ホクレンSS及び系統外SSの好感度に関する変化等について分析を行った。また、テキストマイニングによる自由記入欄分析を導入し、分析者の主観に左右される従来の手法と比べ、より客観的・迅速な分析を試みた。
道内における米生産をめぐる生産構造の変化に対応するため、平成23年3月に作成された「第4期北海道農業・農村振興推進計画」では、「農家戸数の減少に伴う中核的農家の規模拡大に対応した直播栽培技術、無代かき栽培技術等、省力・軽労化技術の確立・普及」が掲げられている。
この計画を踏まえ本調査では、既に直播栽培に積極的に取り組んでいる対象地域について、直播栽培技術導入の経過や関係機関の直播栽培に関わる取組状況、生産者が組織する研究会の活動状況、取り組み農家が抱える現状での問題点・課題を明らかにした。
北海道の農業・農村では、若い担い手が急減する一方で、高齢化が着実に進んでおり、農業就業人口の減少による農業生産力の減退と北海道農業の縮小が懸念される。
当研究所ではこうした問題意識に基づき、効率的な農業・農村の担い手育成・確保システムのモデルづくりに寄与するため、平成23~24年度は道内の新規参入者や関係機関の支援策に関する事例集を取りまとめた。本年度は、これまでの調査で新規参入の事例が少なかった水田作と畑作の新規参入事例を発掘するとともに、水田作・畑作の新規参入促進に必要な政策提言を行うべく政策検討委員会を開催し、国の政策の動向や現地調査を通じて問題点や課題の把握につとめた。しかし、時間的な制約から政策論議が不十分となり、また新しい農政の影響を見極める必要もあり、論点整理に留まった。そのため、次年度さらに検討を継続する予定である。
近年、でん粉原料用馬鈴しょでは早期枯凋により収量やでん粉収量の低下が生じている。原因としてはカリ過剰等の土壌肥料的要因や排水不良等の土壌物理性的要因、半身萎凋病やシストセンチュウ等の病害虫要因、生理的高温障害等が推測されている。本調査研究では、この早枯症状原因のさらなる究明や対策検討を目的に、発生実態解析調査を実施した。
調査は清里町・小清水町より早枯症状発生レベルの異なる10件を選定し、収量・ライマン、土壌分析結果、栽培履歴等を調査し、各種環境要因と早枯症状発生及び収量低減との関連性について解析を行った。併せて、近隣である斜里町より63件の馬鈴しょ生産実績と土壌分析データの収集解析を行い、土壌肥料的要因との関連性について多変量解析を実施した。
JAおとふけ管内で産出される家畜ふん尿等の有機物を土づくりに積極的に利用し、地域環境の保全と環境にやさしい効率的な処理方法を調査検討するため、本事業では各種調査・専門家を交えた助言・指導を行った。
9月にJAおとふけ畜産振興事業調査検討会が設立され、十勝の主要堆肥センターやバイオガスプラントを調査し、その中で情報収集支援と助言・コンサルタントを実施した。また、10月に現地調査と堆肥センター情報確認を完了し、JAおとふけ畜産振興事業調査検討会にて有機物資源の有効活用を推進すべく早急にプラントを推し進める方向付けがなされた。この具体的なプラント化に向けて、JAおとふけ畜産振興事業調査検討会からの情報収集・指導助言の依頼に基づき適宜情報提供を行った。