本研究は北農5連の事務局とテーマを決定し進めてきており、見出しのテーマを基本課題として、本年度は、次の3課題に取り組んだ。なお、昨年度研究課題の農協組合員意向調査については、本年度も調査票の回収作業を継続し、集計分析を行い8月末に一次集計結果を、3月末にクロス集計結果を報告した。
「研究課題1:担い手不足・高齢化による労働力低下への対応策に関する調査研究」では、コントラクタやTMRセンター、外国人労働者等地域の農業経営を支える労働力支援組織を中心に事例研究を行い、畑作・酪農の各地帯別の労働力低下に対する対応策(法人化、受託作業、施設園芸、次世代農業等)の調査・研究を進め、現地の実態を把握しながら、今後の課題や方向性について取りまとめた。
「研究課題2:人・農地プランを踏まえた将来の農業経営形態の展望に関する調査研究」では、国が近日中に新「食糧・農業・農村基本計画」を提示する予定であり、これに基づいた道の方針の見直し・策定作業が始まることから、北海道における将来の中核を担うと思われる経営形態に焦点を当て、その経営体が取り組む特徴的な内容について事例集として取りまとめた。
「研究課題3:府県JAと北海道JAの事業運営の特色に関する調査研究」では、府県JAにおける生活事業や教育文化事業、高齢者福祉活動等、地域くらし活動や大きな役割を担う女性部活動の特色ある取組状況を調査し、専業地帯、兼業地帯の差異を踏まえながら、JA事業の今後の方向性や北海道のJAが参考にすべき事項について報告書に取りまとめた。
現在、六次産業化が注目されている点としては、次のことが考えられる。一つには、企業的農家というビジネスの視点である。二つには、地域資源を再評価し、そこに価値を創出するという地域作りという視点である。
この「地域作り」という視点については、府県の取組事例においてより強く確認できる。平成25年3月には六次産業化を推進する新たなスキームとして(株)農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE-J)、いわゆる六次産業化ファンドが立ち上がり、各地域において六次産業化を進めるためのサブファンドに出資し、そのサブファンドがそれぞれ地域の六次産業化の取り組みに対し出資支援するという、各部門と連携する仕組みも整えられている。
このような動きのなかで、「地域作り」の視点に立つならば、農業生産力主義で発展してきた北海道の農村地域をもう一度別の視点から捉え、新たな付加価値を見出していくための、より根源的な転換として捉えることができるのかどうかを検討することは、今後の北海道農業の展開にとって重要であると考えられる。
本調査研究は、専業経営地帯である北海道において、六次産業化の取り組みをどう捉えるかを念頭に置きながら、具体的な六次産業化の動向を府県の事例調査及び他産業との関連から分析し、六次産業化の今日的な意義と展開方法について明らかにするものである。
本研究事業は2ヵ年の調査研究事業であり、本年度は六次産業化に係る統計的整理と、府県事例調査、及び道内調査を数か所実施し、その調査内容について整理して、中間報告を行った。
農業分野では、輸出事業への取り組みの歴史は浅く、ノウハウやスキルが乏しいのが実態である。国は、平成25年5月の「攻めの農林水産業」において、農林水産物・食品輸出を平成32年までに倍増の1兆円規模に拡大するとした。
本調査研究は、ロシア極東地域への国産農畜産物の輸出の可能性を3ヵ年継続で実施している。初年度の24年度はロシアの歴史や気候、民族、産業構造等の国の概要とサハリンの農業・食料・食品の流通事情や人々の暮らし、さらに、輸出手続きや税制度、輸出支援組織、府県の先進事例等を調査した。25年度は、沿海州とハバロフスク地方へ調査拡大し、26年度は、アムール州での調査を実施し、極東地域全体における輸出拡大の可能性について取りまとめた。
JA共済連では、JAの大型化・広域化に伴いJA一律の共済推進施策では効果が限られるため、JA支所・支店単位で細分化した地域特性を分析し、それに応じた推進施策の策定、いわゆる「エリア戦略」の取組みを平成25年から3か年の計画で掲げている。
エリア戦略における地域区分では、普及指標・農家比率・高齢化比率の3つの指標から6つの地域に分類化し、その分類に応じて生命・建更・自動車の商品推進が検討されるが、各種指標は対象地域全体の人口構成の中で試算されており、府県のように兼業経営が大勢を占め都市型農協が多い地域では効果的な分析方法であっても、北海道のように専業経営地帯で郡部農協が多い場合は、農協組合員(正組)に対象を絞り、JA支所・支店ごとの分類を行う方が、最も地域特性に合ったエリア戦略の展開につながると考えられる。
本研究では、広域合併に伴い地区単位できめ細やかなエリア戦略が必要と考えられる北海道の大規模広域農協(具体的には、JA共済サミットJA・12JA+大規模・3JA)を対象に、JA正組合員という新たな指標から本道の実情に合わせたエリア戦略の地域区分の設定と検証を行うものである。
昨年は、JA共済契約データ及び農業・社会経済関連指標に基づくセグメンテーションを基に、混合分布型クラスター分析によるエリア分析を試みた。本年は、さらに農業所得のデータを基に主成分分析によるJA支所・支店の分類を行い、地域区分の設定と検証を取りまとめ、報告書を提出した。
本事業はバイオエタノール製造過程で発生する蒸留残渣液の利用拡大を目的に、3ヵ年の事業として取り組んでいる。
平成24年度は残渣液の窒素分解特性等各種分析調査を実施し、その肥効性が確認できた。25年度は、採草地と一般畑地において、残渣液を施用し、道総研と連携し、肥料効果や接触障害の有無等を調査し、化学肥料の代替利用を確認した。本年度は、草地及び小麦後緑肥への施用効果を継続調査し、残渣液は化学肥料の代替として利用可能とする報告書を取りまとめた。
JAカレッジでは、JA北海道中央会の定めたJA組織・事業・経営を担う人材育成のための方針や研修体系に従い、JA職員となる学生の養成教育や農協役職員の資質向上、及び農業後継者等の育成に努めてきた結果、JAカレッジの研修参加実績は近年増加傾向にあるが、依然としてJA間には格差がみられる。また、JA段階の組合員・役職員の学習・教育活動の実態を十分に把握できるデータも少ない。
このため、JA段階の組合員・役職員の学習・教育・研修活動の実態を把握するとともに、JAカレッジの位置づけや評価等の検証を行うことを本調査事業の目的として設定した。
平成23~24年度はJA職員の教育研修活動の調査を実施し、24年度の調査のまとめとして、1)組合員との強いつながりが職員を育てる、2)好評なJAカレッジの研修、3)JAトップのリーダーシップが重要、4)職員育成にはボトムアップが大切、5)JA運営のルールを文書化、6)部下育成のための必要資料、という6点を整理した。
平成25年度は「協同組合の人材育成」を目的にした一般組合員、青年部、女性部、新規就農者、担い手等を対象にした学習活動の先進事例を調査した。
今年度は、女性職員の活動促進に関する実態調査を行い、アンケート調査、JA聞き取り調査を実施し、3月に委託者に報告書を作成し提出した。
系統燃料自動車事業では、昨年度より既存コンセプト(セルフSSではあるが、顧客対応等を拡充し利便性やイメージアップを強化)のSSを試験的に設け、それに対する顧客の満足度調査の結果を今後のSS移設・新設に生かすことが計画されている。本事業では、この新コンセプトSSの顧客満足度を、利用者へのアンケートにより調査した。
アンケート用紙は平成26年5月24日より恵庭セルフSSにて給油所スタッフが利用客に手渡しで配布し、料金受取人払郵便で当研究所まで返送いただいた。配布数は2,000票、回答数は518票である(回答率25.9%)。
この結果について、平成26年9月に報告書を提出、業務を完了した。結果については、委託者の希望により関係者以外には公表していない。
系統燃料自動車事業では、平成21年より会員情報を一元化して給油・洗車・オイル/タイヤ交換・修理/整備・車検・自動車購入・金融・共済すべてが利用できる「ワンストップ型拠点」としてSSを活用し、同時に系統に顧客を囲い込むことを目的とした「アロック(ALLOK)会員制度」を導入した。平成26年4月現在、16JA・1関連会社の計17事業体が保有する46箇所のSSにてアロック会員制度を行っているが、平成22年度以降新規加入するJAはなく、またアロック会員制度導入によりその事業体での燃料自動車事業の収支が向上したか、顧客は囲い込めているか等については、はっきりとした成果が見えにくい状況である。
そのような中で、本委託事業では現役の会員から見たアロック会員制度の生の評価を把握し、顧客の囲い込み効果を確認することを目的に、株式会社ホクレン油機サービスのアロックVIP会員(有料会員)へのアンケート調査を行った。具体的には、株式会社ホクレン油機サービス本社よりDM形式でアンケート調査票を各会員に送付し、プライバシー・ポリシーに同意した会員のみに当研究所へ料金受取人払郵便にて返送してもらう形式を取った。実施期間は平成26年12月12日~12月31日、対象者は6,197名であり、2,742 名より回答があった(回答率45.4%)。
以上の調査について、平成27年3月に報告書を提出、業務を完了した。結果については、委託者の希望により関係者以外には公表していない。
農業の担い手問題が深刻化するなか、本事業では特に土地利用型農業における担い手育成確保対策に焦点を当てて、平成23年度から継続して調査を行っている。
23~24年度には、道内の新規参入者や関係機関の支援策に関する事例調査を実施した。平成25年度には、新規参入の事例が少ない土地利用型農業である水田と畑作の現地調査を進め、検討課題の析出を試みた。本年度は、これまでに見てきたような現地の実態を踏まえながら、有識者による政策検討会議での議論や空知管内の行政、JA部課長との意見交換を通じ、酪農や野菜経営に比べて水田・畑作への新規参入が少ない原因の解明と政策提言を取りまとめた。
近年、でん粉原料用馬鈴しょにおいて収量の低下傾向が見られているが、この原因として、地球温暖化等気象要因の影響が大きく、また土壌肥料的な要因や生理障害等も含めて種々の要因が複雑に絡み合い収量低減を引き起こしていると考えられるが、未だ不明な部分が多く効果的な対策を講じる上で障害となっている。
本研究では、今後のでん粉原料用馬鈴しょの安定的な生産振興に向け、効果的な対策技術を構築推進するために、生産現場における早枯症状や各種病害虫の発生、湿害や干ばつ等の生理障害の発生状況、土壌養分に起因する酸性障害や栄養障害の発生状況等、収量低減の構成要因について調査・解析し、報告書に取りまとめた。
道では、水稲の省力化栽培技術の普及拡大を目指し、技術講習会等の各種の取組みを行っているが、その一環として平成24年度は水稲直播栽培の先進地である美唄及び岩見沢地域、平成25年度は、北空知地域の妹背牛町の直播栽培取組み農家や非取組み農家に対する調査とJA等関係機関調査を行い、直播栽培普及の課題の整理と提言を行った。本年度は旭川地域への調査を実施して、過去2か年の調査内容を整理し、今後の直播導入の可能性と展望について取りまとめた。