北農5連の事務局とテーマを決定し進めている本事業では、見出しのテーマを基本課題として、本年度は地域の農業経営を支える労働力支援に関する調査や、今後も中核を担う複数の経営形態の調査等、4課題に取り組んだ。
「研究課題1:担い手不足・高齢化による労働力低下への対応策に関する調査研究」では、外国人技能実習生並びに酪農ヘルパー、コントラクター組織について引き続き実態調査を行うとともに、コントラクター組織の再編と同時期に稼働したTMRセンターや、近年注目されつつある農副連携の取組についても実態調査を行い、労働力低下・高齢化への対応策に関する課題や方向性、提言について取りまとめた。
「研究課題2:人・農地プランを踏まえた将来の農業経営形態の展望に関する調査研究」では、平成27年3月に国が公表した「食糧・農業・農村基本計画」に基づいた道の方針の見直し・策定作業が始まることから、それに先立ち、北海道における将来の中核を担うと思われる経営形態に焦点を当て、その経営体が取り組む特徴的な内容について事例集として取りまとめた。また、北海道農業が先進地域型の農業経営継承問題により早期に直面している実態や、その問題解決のために、引退計画・経営継承計画の策定やそれを支援・助言する体制整備の重要性の提言を行った。
「研究課題3:今後の地方創生におけるJAの果たすべき役割に関する調査研究」では、「まち・ひと・しごと創生法」に基づく地方創生に際し行政とJAが協力・連携している事例について、府県や他の協同組合・企業の取り組み事例を調査・分析し、今後の北海道における地方創生の在るべき姿やJAの果たすべき役割について取りまとめた。
「研究課題4:担い手の育成・確保に関する調査研究」では、就農後概ね3年経過した既存の担い手や新規就農者に対する人材育成や教育研修システムについて事例調査を行い、事例集として取りまとめた。
本研究は、専業経営地帯である北海道において、六次産業化の取り組みをどうとらえるかを念頭に置きながら、具体的な六次産業化の動向を府県の事例調査及び他産業との関連から分析し、六次産業化の今日的意義と展開方法について明らかにする。
2ヵ年事業の最終年である本年度は、昨年度の中間報告書の内容に加えて、六次産業化事例の詳細な分析と新たな取り組みの展開について取りまとめ、最終報告書として委託者に提出した。
近年飛躍的な進歩を遂げたICT(情報通信技術)は、様々な産業に導入され、大きな影響を与えている。農業分野においても、農業機械の自動走行による超省力化・大規模生産、様々な育成データ等の計測・分析に基づく精密な管理による多収化・品質向上、栽培環境の自動制御や自律的な環境対応による作物生産等、従来型の農業の限界を超えた新しい農業が想起されている。これらは、「スマート農業」と呼ばれ、産官学による推進が展開されており、今後の普及状況によっては農業生産や商流に多大な変革が予想される。また、高齢化や人口減少による労働力不足という構造的な課題解決や、農業という産業の強化をも期待されている。
本調査研究では、近年急速にICT化の進展がみられる領域に焦点を当て、事例実態調査による動向や進展状況の把握を行い、次世代農業のあり方と今後の展望を平成27~28年度の2ヵ年事業で明らかにしていく。本年度は予備調査としてスマート農業の具体例や進展状況等全体像の整理と、事例調査を行い中間報告書に取りまとめた。
近年、でん粉原料用馬鈴しょにおいて収量の低下傾向がみられているが、この原因としては地球温暖化等気象要因の影響や土壌肥料的な要因、更には病害・生理障害等も含めて種々の要因が複雑に絡み合っており、いまだ不明な部分が多く効果的な対策を講じるうえでの障害となっている。このような状況から、本調査研究では効果的な対策技術の構築を目的に主要生産現場より10件のモニター生産者を抽出し、生産栽培履歴、病害虫の発生状況、土壌化学性及び土壌構造等を調査して、それらの関連性について解析を行った。
本調査は、JA段階の組合員・役職員の学習・教育・研修活動の実態を把握するとともに、JAカレッジの位置づけや評価等の検証を行う調査である。
「担い手育成」という視点から当研究所では組合員学習活動の実態調査を平成25年度に実施し、その中で「地域の教育力」が低下している実態から「組織活動による教育」の必要性について指摘している。今年度は特にその点に焦点を当て、具体的に「組織活動による教育」に取り組む青年部にアンケート調査・聞き取り調査を実施し、その実態を明らかにするとともに、JAカレッジに求められる役割について検討を行った。
本事業は平成25年度からの継続事業である。
平成25年度は、水田作・畑作の新規参入事例の現地調査を進め、検討課題の抽出を行った。平成26年度は、有識者による政策検討会議・現地検討会の開催を通じて、酪農や野菜経営に比べて水田・畑作経営への新規参入が少ない要因の解明と政策提言を行った。今年度事業では、これまでの内容について各方面への配布用の要約版を作成した。
てん菜は地域農業・地域社会・地域経済を支える重要な作物であり、圃場の地力維持のための輪作体系上、欠くことのできない基幹作物である。しかしながら、近年は地方からの人口流出が加速し、併せて高齢化による農業労働力の不足が切実な問題になっている。特にてん菜栽培は育苗作業等多労・重労働が多く、このことがてん菜作付面積減少に一層拍車をかけていることが過去の調査からも明らかになっている。
本調査はより効率的なてん菜作付支援体制の構築を図り、今後のてん菜作付の安定化を推進するため、JAが関与する各種てん菜作業支援事例を調査した。
調査は全道のてん菜を作付しているJAに対し、てん菜作業支援実態・事例・取り組み状況に関するアンケート調査を実施し、てん菜栽培に係る各種作業軽減・効率的作業支援策について情報を取りまとめた。さらにアンケート結果に基づき、代表事例として10ヵ所のJAを選定し、現地に赴いて作付動態、作業支援のあり方等を聞き取り調査した。
今般の農協法改正では、JAの理事の過半数を認定農業者とすること、JAへの公認会計士監査の義務付け、全中の一般社団法人化、そして農業委員の公選制廃止を含む農業委員会法、農業生産法人の要件を緩和する農地法の改正案が盛り込まれた。懸案であった准組合員利用規制は含まれなかったものの、今後5年間の実態調査を行うこととなり、不安は払しょくされていない。
そこで本調査では、農協法改正の引き金となったこれまでの農協改革論議の狙いや背景、改正された農協法の問題点を明らかにするとともに、准組合員のJA共済事業利用の実態把握と利用規制の影響分析を試みた。
北海道農業においては、農家戸数の減少に伴い農業就業者の減少や高齢化が進んでおり、労働力確保対策が喫緊の課題となっている。安定雇用に向けた環境作りを進めて、多種多様な人材を安定的に確保・育成する取り組みの一層の強化が必要である。そのため、地域に潜在する退職高齢者や学生、未就労女性(主婦)、障がい者等、現状では社会的に十分に能力が活かされているとはいえない人材についても、新たな労働力としての掘り起こしが必要であると考えられる。
そのため本事業では、1)道内在住の求職者を対象にした農業雇用への就職意識に関するアンケート調査、2)道内シルバー人材センターや障がい者施設・団体を対象にした農業の現場への仲介状況等の聞き取り調査、3)道内個別農家や集出荷施設での労働力需要・調達方法等に関する聞き取り調査という3方向からの調査を行った。それらの結果を報告書として取りまとめ、平成27年12月に報告書を提出、業務を完了した。
地域農業・農村戦略策定推進事業は、北海道の農業・農村の持つ潜在力を最大限に発揮し、農村地域における所得向上を図るため、地域の潜在力の調査と総合的な評価を行い、取り組み方策を策定することが主たる目的である。そのため、本事業は具体的に地域資源調査と道内市町村の農業地域区分、道内市町村の農山漁村とそれ以外の区分を行った。そして、1)地域農業を支える人材の確保・育成、2)先端技術を活用した省力的・効率的な生産体制の確立、3)六次産業化と農畜産物の輸出拡大等に関して、6農業地域の取り組みを評価するとともに、農業者・集落構成員が自ら将来像を描き、関係機関がそれに沿った技術支援や施策を検討・推進することの重要性を提言した。