少子高齢化を背景とした、生産年齢人口の減少により、様々な業種において労働力確保対策が大きな課題となっている。働き方の多様化により、労働力人口は増加しているものの、人手不足の解消には到っていないのが現状である。このような状況の中、これまでの技能実習制度に加え、2019(平成31)年4月には「出入国管理及び難民認定法」が改正され、新たな外国人材受け入れのための在留資格(特定技能)が創設された。
そこで本研究では、農業分野における外国人材、特に特定技能人材の道内での就労実態、雇用者のニーズ等を調査研究し、雇用に際しての課題等を整理したうえで、JAグループ北海道としての対応策の検討の資とすることを目指した。具体的な柱は以下の通りである。
(1) 北海道における農業分野での特定技能外国人(技能実習制度からの移行者含む)の就労実態の把握
(2) 雇用主、就労者のニーズおよび課題の抽出
(3) JAグループ北海道としての対応策の検討
本調査研究の目的は、農業高校等の農業系学校における、生徒の農業に関する意識や就業状況を調査することを通して、生産現場ならびに農業関連産業が今以上に活気付くような人材の育成を、JAグループ北海道としてどのように支援していけるかを問うことである。JAグループ北海道がこれまでに行ってきた様々な支援をより効果的に進めていくための資料となることを目指した。本調査研究で明らかになったことは次の通りである。
第1に、農学系学科の高校生の農林業への就職率は、男子生徒は下降傾向、女子生徒は上昇傾向にあるということである。
第2に、道内の公立農業高校に限ってみると、ここ5年ほどの傾向としては、全就職者のうち、「直ちに就農」する生徒は約2.5%であった。一方、全進学者のうち、4年制大学や短期大学へ進学し、「卒業後に就農を希望する生徒」は約10.4%であった。
第3に、農業系学校の中でも特に農業高校への調査を総合すると、JAグループ北海道による支援の形には、①高校入学前の段階の生徒・児童に対する農業の魅力の発信、②農業高校の学課活動への支援、③農業高校における就農・就職支援、そして、④JAグループ北海道と農業高校のネットワーク構築の4点が考えられるということである。
現在、JAグループでは農作業委託や援農ボランティアといった労働力確保の取組みが打ち出されている。本調査研究では、近年あらたに開始された取組みのうち、特に農業求人サイトを活用した労働力対策に注目する。そのうえで、連合会・JA等のユーザーの活用実態やシステム開発者の意向を把握するとともに、現場での要望、運用上の課題等を調査し、現在JAグループ北海道が取組む労働力対策が更なる進展を遂げるための資となることを目指した。本調査研究を通して明らかになったことは以下の通りである。
1) 農業系求人サイトの類型化
第1に、「リストの閲覧から応募までがオンラインで完結するサイト」について、農協系統の都道府県レベルにおいてはある程度整備されているが、行政・公共団体、単協レベルにおいては極めて少数である。
第2に、独自でシステムを構築するのではなく、一般的な企業・団体向けの求人サイト作成サービスを利用することで労力を軽減する例が多くみられる。
第3に、府県の単協では、独自に求人サイトを設けるのではなく連合会の設置したものに集約するところがあるが、道内の一部の単協においては「1日農業バイト daywork」を利用する動きがみられる。
第4に、「1日農業バイト daywork」と同様の仕組みであるその他の農業求人サイトがいくつか存在するが、なかには方針を転換して派遣会社のように事業内容を改めたところ(シェアグリ)がある。
2) 農業職業紹介事業と農業求人サイトの活用
事例とした愛知県では、JAが行う職業紹介事業の「募集」の段階にのみ求人サイトを導入していた。以降の、「面談」、「マッチング」、「帳票管理」については、JA職員がじかに対応するという形態であった。
同じく事例調査をした秋田県では、「募集」から「面談」への段階については、自前のHPを実質上の求人サイトと位置付け、求人情報の公開に限定していた。「マッチング」、「帳票管理」に対する業務支援として、地元事業者の開発した「労働力マッチングシステム」を活用していた。
十勝では、管内24JAのうち18近いJAが「1日農業バイトdaywork」を導入し、JAの主要な労働力対策としてdayworkを位置付ける流れが生まれていた。この仕組みでは、dayworkの利用を求人者(組合員)と求職者双方に呼びかけたり、操作利用のサポートをするほかは、JAとして直接関わることはない。ただし、JAは利用を希望する組合員から利用申込書の提出を受け、管内の組合員の利用状況を把握している。JAは求人者(組合員)と求職者のやり取り(募集・応募状況、両者間のチャット)を常時確認することができ、何かトラブルがあった時に対応できる状態にあった。
経営規模拡大にともなう労働力不足、労働環境対策等に対応するため、農業支援組織の整備とその利用が進んでいる。北海道では、作業受託のコントラクター組織やTMRセンター、酪農ヘルパー等が整備され、所得確保、生産拡大、後継者確保等が図られており、今後とも、その組織の継続的拡充が生産基盤の維持に必要になると思われる。
そこで、本研究では、酪農ヘルパー利用組合、コントラ組織など、農業支援組織の従業員の労務実態を調査し、今後解決すべき課題等を整理したうえで、JAグループ北海道としての対応策の検討の資とすることを目指した。具体的な柱は以下の通りである。
(1) 関係団体調査 (北海道コントラクター組織連絡協議会等)
(2) 農業支援組織の従業員の労務実態の把握 (労働時間、社会保険、退職金等)
(3) 農業支援組織の従業員の労務上の課題の分析
(4) JAグループ北海道としての対応策の検討
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JAグループ北海道が決議した「次代につながる協同組合の価値と実践」の一環で、系統組織の新たな事業展開にむけて、関連分野においてサービス事業を開始・運営している事業体について、その事業内容と運営実態を明らかにし、調査内容を報告書に取りまとめた。
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北海道では育成時点における品種の特性をそのまま備えているとともに、良質な種子を供給することで、北海道米の安全・安心を担保してきた。水稲種子の生産は、防除の徹底や異品種混入防止の徹底など、一般米の生産以上に厳格な管理が求められている。現在、道内の水稲採種組合は、良質な種子の供給に努めているところであるが、水稲種子の経済データは平成9年に行われたのを最後に実施されていない。このため水稲種子の生産支援体制の検討に資するために、北海道立総合研究機構中央農業試験場との連携のもと、全道の水稲採種組合を対象に経済データに関する調査を令和元年度~令和2年度の2ヵ年で実施した。
本調査研究ではもち米を含む7地区(栗沢、秩父別、中富良野、江部乙、当別、芦別、大野)を調査対象とし、各地区当り3戸について調査を実施した。調査では各地区3戸の経営者へのヒアリングを通じて、作業名、作業時期、使用資材と使用量、使用機械、使用燃料、作業人員、投下労働時間を記した生産技術体系を整理し、これを基に全算入生産費を計測した。農業経営統計調査(統計値)との比較から、農業薬剤費や労働費が統計値を上回るなど、水稲種子生産の特性が明らかとなった。また農業経営統計調査を参考に設定された現状の種子価格は妥当な水準にあると考えられるが、将来の機械取得・更新が難しい状態にあることも示唆された。本調査は今年度の報告書提出をもって終了とした。
てん菜は地域農業・地域社会・地域経済を支える重要な作物であり、圃場の地力維持のため輪作体系上欠くことのできない基幹作物である。しかし、農家戸数の減少、担い手の高齢化により作付面積の維持確保が困難な状況となってきており、様々な場面において各種取り組みがなされている。
平成27~28年には20JAに対して、農業者による共同利用組織による共同作業、協業法人による作業、育苗センターからの苗供給など、個人作業を離れた組作業や、専門業種への外部委託などの調査を実施した。令和2年度調査では、この調査結果を再度精査し、北海道における農作業受委託組織の動向について整理を行った。また、北海道内の民間コントラクター、JAが関与する農作業受委託組織等を調査し、農作業受委託の取り組みの現状と課題を明らかにした。
合わせて、作業機械の損益分岐点分析を行い、てん菜の農作業受託に関する、料金収入と受託作業経費の収支について検討を行った。