日高支庁管内の中核都市である静内町は、軽種馬の大産地であり、町農業粗生産額に占めるその割合は80%を超える。したがって、米をはじめとするその他部門の農業粗生産額に占めるウエイトは低い。ところが内陸部には、稲作・野菜を基幹とする地域も存在しており、農業構造の様相は地域ごとにかなり異なっている。
ここでは、そうした特徴点を踏まえ、さらには「軽種馬モノカルチャー」からの脱却を目指す意味も込めて、稲作、野菜、酪農・畜産といった主要な経営形態を網羅した「総合産地の形成」を目指すべく地域農業振興策を提起している。
振興策は以下3つの柱からなる。第一に、軽種馬以外の部門(稲作、野菜、酪農・畜産)の発展方向の検討である。第二に、軽種馬部門の発展方向の検討である。第三に、農協の組織・事業体制の課題を明らかにすることである。これらの検討・提起に関し現地側に対する最終報告は平成6年8月に終了し、調査結果については「研究叢書No.18」として公表している。
平成5年度の基礎調査によって知内町農業の問題点と「ゆたか」で「ゆとり」と「うるおい」のある農業・農村発展ビジョンを提言したところであるが、平成6年度調査分析業務では中核的農家100戸の経営データ分析、後継者意向調査結果等を基に、営農類型モデルを策定した。なお現地では、平成6年度も前年度同様専門家を招聘し農家・関係機関担当者で構成された検討委員会においてビジョンの具体的検討が進められた。
2ヵ年間に渡る調査分析及び方向付けについて、平成7年3月に報告を行い、業務を完了した。
かつて道内屈指の炭鉱を有した空知支庁管内中部に位置する芦別市は、石炭、林業といった素材型産業の縮小を余儀なくされ、残った基幹部門である農業の発展に活路を見出そうとしている。現在、市の農業は稲作が主体となっているが、平成8年度からの農業振興計画を樹立するにあたって、農業所得の向上を目指すべく、複合経営の確立、並びに野菜農家の育成を果たそうとしている。
本共同研究は、現地のこうした意向を踏まえ、稲作を基幹としつつも畑作、野菜作などの拡大をも考慮に入れた、トータル的な農業振興計画を策定しようとするものである。なお、すでに現地調査は終了しており、現地検討会についてもこれまでに2回開催してきた。今後の日程については、平成7年の夏期中に最終報告会を開催し、同時に研究叢書を発行し、2ヵ年にわたる調査分析を完了する予定である。
東川町では先の5ヵ年計画「ステップアップ100」で有機栽培推進、ピーマン・ホウレンソウ他野菜生産拡大等を重点事項として掲げ、道外スーパー等との契約を主体とした取り組み、有機栽培米等活発な展開を行っているところであるが、最近は野菜販売額も停滞の傾向が見え始め、さらに高齢化・後継者不足の進行、農地余りの拡大などの課題もあり、平成7年度からの新5ヵ年計画策定にあたり新たな突破口を模索していた。
本報告では、アンケート調査並びに農家実態調査をもとに、水田作経営の今後の方向、野菜策の今後の方向、高齢化進行下における農地流動化問題を基本的な柱とし、それらを包括する東川町の農業システム化の方向としての農業振興センター構想の検討を行った。
以上内容について平成7年3月に報告を完了し、調査結果については「研究叢書No.19」にて公表している。
豊富町の酪農形態は、農地のほとんどが特殊土壌という劣悪な条件下にありながらも広大な土地資源を背景に農業構造改善事業等の実施により草地の改良、酪農施設の拡充や農業機械の大型化により経営の規模拡大を図ってきた。
ところが、生乳の計画生産や個体販売価格の下落等、輸入自由化に伴う急激な国内外の農業環境変化によって、経営の安定化に向け取り組んできた酪農家は大きな打撃を受け、規模拡大のための投資は大きな負債の重圧となって、借入金の償還に苦しむ農家も少なくない。
抑圧的な計画生産の今日にあって、酪農経営の安定的発展を図るためには、もう一度原点に立ち返り、徹底した生産コストの低減と生産性を高める技術を導入して高収益性の生産体制整備と良質粗飼料生産を基盤とした草地型酪農を確立することにある。
こうした農業情勢と農家経済を考える中で、この度、豊富町の農業振興に関する今後の方向について、これまでの実績推移と組合員意向調査をもとにして将来展望を拓いていくため、これまで数次にわたって策定した農協の中期5ヵ年計画の推進経過を踏まえ新たに農業振興計画を策定することとなった。
すでに平成6年7月に農家調査、8月にアンケート調査、11月に第1回の現地報告会・補足調査を実施し、その後平成7年2月に中間検討会を開催するとともに3月に補足調査を行っている。今後、4月に2回目の現地補足調査及び中間報告を行って、6月に報告書を完成させて、2ヵ年間の調査・分析、方向付けを行う予定である。
「生産性の高い農業経営の実現を図るには農業構造の再構築が不可欠である」との視点から、美瑛町農協では「地域農業の振興計画」を策定した。これまでに昭和55年の第1次中期計画から第4次中期計画までを終了し、現在は第5期中期計画を推進中の段階にある。
農業全体の問題として考えられていることでもあるが、美瑛町でも、高齢農家の後継者不足、労働力不足、離農の増加等によって農地放出が将来ますます増大することが危惧されており、これら放出農地の効率的な利用をどう進めるかが新たな課題となっている。このため、農地流動化、負債、集落出入作、耕作放棄地の実態調査などの現状把握と分析を行い、農地の高度利用と生産性拡大の観点から経営耕地の分散化を回避し、所有権の移転、賃貸借、作業の受委託、交換分合等、総合的に斡旋・調整ができるようにするため、今後における土地利用型農業支援システムのあり方並びに関係機関の役割と連携がどうあるべきなのかをテーマに調査・検討を進めている。
農業振興計画の樹立を平成7年度とし、第1年目の平成6年11月にアンケート調査を実施、第2年目の平成7年3月・4月に農家調査を行い、5月に中間報告、8月までに報告書を完成させる予定である。
八雲町は古くからの酪農地帯であり、経営形態は中規模が中心であるが、種子馬鈴しょを組み合わせることによる収入確保、堅実な経営姿勢と相まって安定した経営を確立している。しかしながら、乳価・個体販売価格の低迷等の情勢のもとでは、このままの方向では地域の農業発展は望めないことから、現地ではプロジェクトチームを設置し、第4次八雲農業振興計画の見直し作業を進める中で、野菜等新規作物を取り入れた複合経営の導入、農業者の意識改革など、農業情勢の変化に対応した長期的所得確保対策の検討を行っているところである。
対策検討の基礎資料として、平成6年11月に全農家の経営意向調査をアンケート調査方式で実施し、頭数規模別、経営形態別、面積規模別、経営主年齢別等の集計分析を行い、後継者の状況、乳牛頭数の増減計画、育成牛飼養計画、機械施設の計画、畑作野菜策の労働力状況、水稲作付の計画、共同作業・作業委託等について、現状及び将来計画に関する農家の意向を集約し、第1年目の報告を行った。第2年目の平成7年度には具体的な検討により方向付けを行い、平成8年3月までに最終報告書をまとめる予定である。
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これまで町と農協が別個に立案してきた振興計画を、より実効性のあるものにするため、平成6年度から2年間の計画で開始した。
清水町は地形的には大きく十勝川流域の沖積地域・日高山脈の山麓地域・その中間の混合地域とに分かれ、歴史的にもかつて3農協に分かれていた経過がある。多様な土地条件と歴史条件を内部に含む地位全体の計画の樹立となる。
これまで混同経営が高い比率で存続していたことがこの町の特徴と言われてきたが、近年は規模拡大に伴って、畑作での作付単純化、酪農の新しい施設投資、圃場の分散化が進み、収穫機械の作業受託組織も作られつつあり、地域の土地利用のあり方は大きく動きつつあるようにも思われる。
本年度は農協内にもプロジェクトチームが作られ、既に5回の現地関係機関による策定委員会が行われた。農家へのアンケート調査項目の策定のために職員に対するアンケートが行われるなど、緻密な取り組みを進めた。農協・役場職員によってアンケートが95%の回収率で行われた。研究者が8集落の悉皆調査を行ったが、これらをもとに課題の洗い出しを行い、12月に中間報告会、3月に最終報告会を行った。報告会は策定委員会の範囲を越えて農協の係長クラスを含めた職員層への報告、さらに農家の部会代表を含む審議委員に対する報告等、階層別の報告を行った。また農家の交流グループ「経営者懇談会21」が3月に60人の参加で設立され、毎月の交流会を始めているが、そこでも報告書の内容が講演された。引き続き平成7年度も個別課題に取り組む予定である。
町の90%以上を林地が占めるこの町の酪農は音別川を主に3つの中小河川領域に沿って狭小な耕地に展開した。面積の制約から平均経産牛頭数は40頭と中規模であるが、乳検の固体乳量は8,000kgを超え、ここ数年間根釧地域で首位を守り続けてきた。第2次構造改善事業によって設立された「音別町農業振興公社」は農家の機械を一手に保有し、共同作業の要となり、粗飼料生産の経費削減に大きな役割を果たしてきた。しかしこの間の多頭化と乳量の増大は公社のあり方にも変化をもたらし、公社による自走式ハーベスタの導入が始まり、テッターなどの作業機の個別導入も見られるようになっている。
しかし、これまで農協としての農協振興計画は明確ではなかったことから、本研究では公社の将来像と個別経営のあり方について、基本的な計画の考え方を幅広く検討することが課題となる。取り組みは10月の予備調査を皮切りに始まったが、12月にはアンケートの配布と回収、農家聞き取り調査を行い、アンケートの集計内容を中心に既に農協事務局への中間報告会を実施した。
平成7年度は若干の補足調査を実施するとともに、農家を含めた策定委員会が設立されることが決まっており、町全体の動きとして振興計画の策定が進みつつあるので、具体的事項の検討を行いながら方向付けをして、最終報告を行う予定である。