畑作に酪農を加え順調に発展してきた十勝清水町も、様々な外圧とともに後継者不足、農地分散問題、畑作・酪農・肉牛経営改善対策等、様々な内的問題に取り組まなければならない転機を迎えている。
清水町は地形的には大きく十勝川流域の沖積地帯・日高山脈の山麓地域・その中間の高台地域とに分かれ、歴史的にもかつて3農協に分かれていた経過があり、多様な条件を内部に含む地域全体の計画の策定が求められている。
このため、北海道地域農業研究所振興計画策定委員会が開かれ、農協内にもプロジェクトチームが作られ、意思疎通に努力がはらわれてきた。農家へのアンケートの項目選定のために農協・役場職員に広く意見集約が行われ、農協・役場職員の努力でアンケートは95%の回収率となった。アンケートや農家調査の分析結果の報告会は、策定委員会の範囲を越えて行われ、農協の係長クラスを含めた職員を対象とした報告、農家の部会代表を含むビジョンの審議委員に対する報告等が行われた。また農家の交流グループ「清水町経営者懇談会21」が設立されて、月1度の勉強会を始めている。
本年度は、昨年度「十勝周辺部混合経営地帯における農業構造の現局面と振興の課題」と題して実施した調査研究の補足として、1)農地集積と利用調整、2)畑作・酪農の経営改善、3)乳牛の生産・流通対応、4)農振計画の策定と実践、5)機械利用組織化にテーマを絞り込んで実施した。これらについて具体的な取り組みの提案を含めて取りまとめ、11月21日に最終報告会並びに検討会を現地にて開催した。
かつて道内屈指の炭鉱を有した芦別市は、時代の推移の中で、鉱業(石炭)、林業といった素材型産業の縮小を余儀なくされ、残った基幹産業である農業に活路を見出そうとしている。現在、市の農業は稲作が基本となっているが、平成8年から実施される農業振興計画の策定にあたっては、「稲作を基礎に野菜、花き、畜産の飛躍的発展」をはかり、農業粗生産額並びに農業所得の向上を前提とした「高収益型農業」の確立を目指そうとしている。共同研究では、現地のこうした意向を踏まえ、以下に見る視点から芦別市農業の発展方向について検討した。
具体的には、まず、芦別市農業の現状と課題について、経営形態別(稲作、畑作、野菜作、酪農・畜産)に明らかにした。次に、これらを拠り所として、芦別市農業の発展方向とそのための諸条件の整備について検討した。また、最後に芦別市農業の発展にとって重要な鍵を握る、市農協の現状と課題について検討した。
これら内容について平成7年8月に最終報告会を現地にて開催し、報告書の内容については「研究叢書No.21」としても発行した。
かつて豊富酪農は「放牧型」といわれた低コストでの酪農経営であったが、草地改良、酪農施設や農業機械大型化の実現で短期間に規模拡大を進めてきた。その過程で農地が分散化したこともあり、次第に放牧地の割合が低下している。さらに、現在豊富町の酪農家は機械の過剰投資、濃厚飼料の多給、ふん尿処理など経営上多くの問題を抱えている。少なくとも中小規模酪農家に関しては従来の規模拡大一辺倒のコースを再考する必要が生じており、緊急に適切な処置を講じる必要に迫られている。その打開のための具体的な課題設定を行うことが豊富町の農業振興計画策定に向けた基礎調査の目的である。
本共同研究では、農家意向アンケート、農家聞き取り調査をはじめとして個別の経営データをもとに現状分析を行い、今後の方向性としていくつかの政策課題とその支援方策について提言を行った。それらの結果については本年2月に「研究叢書No.23」としても発行を行い、業務を完了した。
美瑛町では、基幹産業である農業の活性化に向けてこれまで多くの農業振興事業等諸施策を実施し、農業振興に努めてきた。この間、生産基盤の増大や作物別生産部会活動の推進、加工調製施設の整備等、総合的な生産性の向上を図ってきた結果、1戸当たりの農家所得は全道的にも高い水準にまで向上し、特にここ数年で野菜などの導入による複合生産体制が着実に進展してきている。
一方、農業構造の推移をたどってみると、ここ十数年間で営農実戸数の減少、労働力の高齢化の急速な進展、60歳以上の経営主における後継者不在等から、労働力の確保や効率的生産システムの確立が大きな課題となってきている。とりわけ高齢農家の後継者不在、農業労働力不足、離農の増加等によって農地の放出が将来ますます増大することが危惧され、これら農地の効率的な利用をどう進めるかが新たな課題になっており、地域農業全体の問題として考えていく必要に迫られている。
このため、共同研究では実態調査等から現状分析を行い、今後における個別農業経営に対する支援体制の確立等の提言を行った。それら内容について現地報告会を行うとともに、本年2月、「研究叢書No.22」の発行をもって業務を完了した。
全地の90%以上を林地が占める音別町では、音別川を主とした3つの中小河川流域に沿って、狭小な耕地を基盤として酪農が展開されてきた。面積的な制約から1戸あたり経産牛頭数は約40頭と中小規模になっているが、乳検固体乳量は8,000kgを越え、ここ数年間根釧地域において首位を守り続けてきた。また、第2次構造改善事業によって設立された「社団法人音別町農業振興公社」は、農家の機械を一手に保有し、共同作業の要となり、粗飼料生産の経費削減に大きな役割を果たしてきた。
しかし、ここ数年の多頭化と乳量の増大に対応した形で、農家間には様々な課題が発生している。例えば、農家アンケート調査によると、負債の償還、労働時間の増大、ふん尿の利用・処理、雑草の発生などが緊急課題とされている。また、農業振興公社では、農家の規模拡大に呼応して自走式ハーベスタが導入される等、機械作業体系のあり方に変化がみられるようになってきている。本共同研究ではこうした課題を詳細な実態分析から洗い出し、音別町農協の次期農業振興計画策定に向け、今後の音別町農業の発展方向について検討した。
これら内容について平成7年10月に最終報告会を開催し、報告書の内容について本年3月に「研究叢書No.24」として発行を行って、業務を完了した。
八雲町は古くからの酪農地帯であり、経営形態は中小規模であるが、種子馬鈴しょを組み合わせ、安定した収入と堅実な姿勢を背景として確固とした経営を確立している。しかしながら、乳価・個体販売価格の低下等、このままの方向では地域農業の発展が望めない状況にある。そこで本共同研究では、現地側と農業振興プロジェクトチームを結成し、第4次八雲農業振興計画の見直しを進めるなかで、野菜・畑作の新規作物を取り入れた複合経営に方向修正する等、農業者の意識を図りつつ、所得確保対策を講じていこうとしている。
これまでの取り組み経過として、まず対策検討の基礎資料を作成するため、平成6年11月に全農家を対象としたアンケート調査を実施し、その結果を踏まえた第1回中間報告会を平成7年4月に開催した。また農家及び機関調査を平成7年6月に実施し、その結果を前提とした第2回中間報告会を平成7年11月に開催した。今後、補足調査等を実施した上で、平成8年夏季を目途に最終的な方向性を明らかにしていく予定である。
※ 未登録
現在、石狩町では農業経営基盤強化促進法に基づく農業経営改善計画の認定制度を進めているが、石狩町農業はいま、水田作経営依存型から野菜を導入した複合経営への転換や、農業生産組織の見直し、農用地の有効利用、農地の流動化等、農業構造の再編が緊急の課題となっている。
このため共同研究では、都市近郊という立地条件の優位性を発揮できる農業振興をはかるため、地域の実態に即した土地利用・営農類型のあり方、担い手育成対策、労働力市場・販売流通問題に関する事項のほか、生産対策問題・作業受委託・農業支援体制に関する事項について基礎調査を実施し、石狩町農業振興計画に反映させようとするものである。
既に、農家の意向を把握することを目的に、平成7年10月にアンケート調査を実施している。併せて農家の経済実態を把握することが必要不可欠なことから、平成7年12月に農家調査を、平成8年1月には補足調査・機関調査等を実施した。今後は、平成8年6月に現地での中間報告を行って、平成8年8月末に最終報告会を開催、11月には調査報告書を作成する予定である。
※ 未登録
常呂町は近年、離農を主たる要因として年率約2%の農家数の減少がみられるが、残った拡大指向の強い農家層によって4,800haの農地は、継承(売買、賃貸借含む)と保全・保持が行われてきた。その結果、平成7年の農家戸数は210戸であり、その平均経営面積は22haを越えるに至った。また、畑作3品(小麦・てん菜・馬鈴しょ)が全体作付面積の80%以上を占める専業主体(平成5年専業農家割合72.2%)の地域農業を形成してきた。
しかし、WTO体制への移行によって、今後、政府管掌作物ですらも「作れば売れる」時代の終焉が予想され、経営を維持するため生産コストの低減や、野菜など集約作物の導入による農業所得の向上対策が常呂町農業の重要な課題となってきた。
一方、規模拡大と集約作物導入の両面から農業労働力不足が深刻化してきており、労働過重等から、精神的にも肉体的にも「ゆとり」を喪失しかねない、農家生活のあり方に対する課題も浮き彫りになってきた。
本調査研究ではそうした問題意識に基づき、「ゆたかな農村生活の実現と農豪経営の安定」を探求して、常呂町農業をよりよい姿で次代に継承するために、新しい農業振興計画に具備すべき目標と実践課題について調査を行った。具体的には、町内の全農家(経営主・配偶者・後継者)及びフレッシュミセスを対象としたアンケート調査と関係機関を対象とした面接調査により、町内農家の生活と経営に関する課題を導き出し、『常呂町第4次農業振興計画』(平成8~12年)制定に対する助言を行った。
これらの結果について報告書を作成・提出するとともに、「研究叢書No.25」により公表を行った。
今金町の農業は、後志利別川沿いに水田地帯、台地上の部分に畑作地帯、山間・高地を中心に酪農地帯が形成されるという多様な構成になっている。そのため農家の経営形態は地域により、また経営規模階層によっても異なっている。農家の経営形態は水稲作と畑作を行う複合経営が一般的であり、そのことにより多様な担い手層が形成されている点が今金町農業の最大の特徴である。
本共同研究では、以上のような多様な地帯構成、農家経営形態を整理し、各作目振興という視点から作目ごとに分析を行い今後の方向を明らかにした。
十勝平野は帯広から南にくだり太平洋沿岸地方に近づくに従い、夏の濃霧の影響を強く受け畑作に向かなくなり酪農中心に移行するが、更別村は畑作から酪農への移行地帯に位置づけられる。農家1戸当たりの経営耕地面積は顕著に拡大し、現在では35ha規模にまで達している。
近年の作目動向における1つの問題点として、「第5の作物」として導入が進んでいた野菜作が停滞的に推移していることがあり、このことが農協の野菜施設投資を躊躇させる要因となっている。また農地問題に関しては、経営主50歳以上で後継者がいない50戸ほどの農家の経営する約1,200haの農地が放出されたときの対応があり、農家の規模拡大意欲が停滞的に展開している関係で、農地の需給対策が必要になる。さらに生活面では、農業経営における金銭面以外のゆとりの必要性も指摘されている。
本共同研究では、以上の問題点を農家がどのように認識しているかを明らかにするためアンケート調査を実施し、その結果を踏まえて本年3月に農家調査を実施した。