白老町の農業は、夏場の海霧の発生による日照不足と火山灰土壌のため、稲作・畑作は生産性が低く、戦前から漁業・林業との複合経営として畜産が振興されてきた。戦前盛んであった馬産に代わる兼業的複合部門として始まった肉牛の導入は、昭和29年北海道で初めての黒毛和種「島根和牛」の導入を契機として道と町が奨励した子返しによる貸付制度によって普及の基礎が据えられたが、その後の農業行政の激変によって後継者の大半が農外に流出し、高齢化と離農跡地問題を抱える和牛生産地域になった。
このような白老町農業の現状を踏まえつつ、課題解決に向けてアンケート調査を含めた現状分析と肉牛生産・流通の実態調査、並びに黒毛和牛のブランド化に取り組む先進事例調査等を2ヵ年にわたり実施してきた。
この一連の調査について平成10年3月に現地にて最終報告会を行い、報告書の提出をもって終了した。この報告書については「研究叢書No.32」として発行する予定である。
紋別市農業は、昭和30年に「北海道集約酪農地域」に指定を受けて以来、酪農の将来が政策的にも確約されたことを契機に、畑作経営から酪農経営へと転換が図られ、酪農畜産生産地として発展してきた。
平成6年に紋別市が策定した「農業基盤強化の促進に関する基本構想」では、紋別市農業の将来の目指す姿は描いているが、地域農業の現状などの徹底調査・分析・今後の具体的な実施計画などは示されておらず、今後の課題とされていたのが現状である。
本共同研究では、「紋別市農業構造政策推進会議」との連携を図り、2ヵ年にわたり調査研究を行ってきた。平成8年9月の階層別農家聞き取り調査、平成8年12月の農家アンケート調査、平成9年7月の農家悉皆調査のほか、在札検討会・現地検討会、さらには2回の中間報告会を現地にて開催した。
本年6月に現地にて最終報告会を実施し、調査研究結果から関係機関の業務分担も含めた具体的な提案を行うべく、最終報告書及び現地農家向け普及版を現在執筆中である。この最終報告書の内容については、当研究所より「研究叢書No.33」として発行する予定である。