網走市農業は、寒冷地の厳しい気象条件と重粘土、火山灰などの特殊土壌を克服し、畑作三品を中心とする独自な技術・機械体系を確立し、北海道の中でも有数な農業地帯として発展してきた。特に、営農集団組織は先駆的な役割を果たし、農家の所得も高水準を維持し、担い手も他地域と比較して分厚く形成されてきており、網走型畑作地帯の中核としての役割を果たしてきた。
しかしながら、近年の農業環境の変化、とりわけWTO体制や新農基法体制の下で、地域農業はドラスティックな変化を余儀なくされようとしている。とくに、網走農業の基幹である畑作四品(含大豆)・乳製品という政府管掌作物の価格政策の転換(市場原理の一層の活用)は、この地域に大きな変化をもたらすことになる。
このような状況の中で、JAオホーツク網走から平成12年度を初年度とする第2次振興計画策定のための基礎調査の依頼を受け、平成10年度と平成11年度の2ヵ年にわたり共同研究として取り組んでいる。なお、JAオホーツク網走は平成3年に南網走・網走市中央・西網走の3農協が合併して発足、更に平成11年8月に網走市農協と合併する予定になっている。
今年度は、現状及び課題の把握と農家の意向確認のための現地調査・アンケート調査を重点的に進めた。来年度は、今年度の調査で明らかになった課題について細部の検討を含めて掘り下げ、課題ごとの相互関連を中心に分析検討を行っていく予定である。
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WTO体制下で、酪農経営は低コスト生産を要請されているが、その方向はこれまで農政で示されてきた経営体による多頭数飼養の方向と、酪農家レベルで模索されている「低投入型」等、多様な方向が考えられる。どのような方向が選択されるかは、経営主の意向はもとより、個別経営の労働力保有(後継者問題)、草地保有の実態、借入金額と今後の投資可能性等が関連してくる。また、多頭数飼養に伴って飼料調達部門を外部化するといった動きも見られ、酪農経営単独の条件だけでは展開方向を考えられなくなってきている。
こうした中で、農協は個別経営レベルの営農指導とともに地域レベルでの農業生産の維持・発展をいかに図っていくか、そこでの営農指導のとあり方が問われている。また、酪農経営のコスト低減のため飼料を主体とする生産資材の調達をどのように行うか、乳価低迷下での販売戦略をいかに行うか等、農協経営のあり方を左右する問題を抱えている。
このような中で根室酪農の今後を考えるため、農協経営の現在の諸問題を把握するとともに、農協を中心とした地域農業戦略を検討することが求められている。本調査研究では今年度、根室管内の農協営農部長とも連携を取りながら、8月に農協調査、11月に流通調査、2月に農家アンケート調査を実施した。来年度は、4月に農家調査を実施し、アンケート調査の解析と農家調査のまとめを行うとともに、8月には現地中間検討会を実施して、現地での議論を踏まえて詰めの作業を行い、最終報告書を作成する予定である。
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