オホーツク網走農協から平成12年度を初年度とする第2次振興計画の策定のための基礎調査の依頼を受け、平成10年度より2ヵ年にわたり共同研究として取り組んだ。
1年目は現状及び課題把握と農家の意向確認の現地調査・アンケート調査を重点に進め、今後の基本課題として大きく5点にまとめ中間報告書とした。2年目には、地域農業の活性化と生活・環境問題の課題について、新たに酪農及び肉牛農家に対するアンケート調査と、振興計画に関する農家調査を実施した。報告書は、これら膨大な調査資料に対して分析・検討を進めた成果を中心に据え、また総括においては報告会や網走市振興計画策定業務(別稿)をも踏まえて、網走市農業の基本課題と地区別課題、及び長期的視点からの提言について集約した。
UR農業協定による国際化時代を迎え、農畜産物の自由化や価格の低迷、農業従事者の高齢化、後継者不足、環境問題や食品の安全性に対する関心の高まりなど、農業・農村をめぐる情勢はますます厳しくなっている。このような中で網走市は、平成7年度を初年度とし平成11年度を目標とした「第7期網走市農業振興計画」を推進してきた。市内においては、今年度8月に網走市農協と合併し1市1農協となった新生JAオホーツク網走が、合併前年度から平成12年度より5ヵ年間の振興計画を立案すべく策定委員会を設置し策定を重ねてきた。網走市としても、この委員会に参画していく中で農業者の意向、あるいは農協の方針を把握し、更に国の「新農業基本法」、道の「北海道農業・農村振興条例」及び市の総合計画等の考え方を基本とし、地域の現状と実態に即した新たな次期農業振興5ヵ年計画を策定する時期にあった。
このようなことから網走市は、平成11年6月、第8期農業振興計画の基本目標と課題及びその具体的方策の策定を、JAオホーツク網走農業振興計画基礎調査を手掛ける本研究所に共同研究として委託した。当研究所は、当該基礎調査業務の中心メンバーである札幌大学・岩崎教授と北海学園北見大学・松木助教授に更なる労をかけて、「第8期網走市農業振興計画案」として網走市に提案を行うことができた。
WTO体制下で酪農経営は低コスト生産を要請されているが、その方向はこれまで農政で示されてきた経営体による多頭数飼育の方向と、酪農家レベルで模索されている「低投入型」等、多様な方向が考えられる。どのような方向が選択されるかは、経営主の意向はもとより、個別経営の労働力保有(後継者問題)、草地保有の実態、借入金額と今後の投資可能性等が関連してくる。また、多頭数飼養に伴って飼料調達部門を外注化するといった動きも見られ、酪農経営単独の条件だけでは展開方向を考えられなくなってきている。また、全体としては多頭数飼養が進展している反面、地域レベルで見るならば飼養頭数は停滞的に推移しており、育成牛等は減少する状況も見られる。地域農業レベルで乳牛のサイクルと変動要因を個別経営のレベルで把握することも必要になる。
こうした中で、農協は個別経営レベルの営農指導とともに地域レベルでの農業生産の維持・発展をいかに図っていくかが問われている。また、酪農経営のコスト低減のため飼料を主体とする生産資材の調達方法や、乳価低迷下での販売戦略など、農協経営のあり方を左右する問題も抱えている。このような中で根室酪農の今後を考えるため、農家の移行や農協経営の諸問題を把握するとともに、農協を中心とした地域農業戦略を検討することが求められている。
本調査研究では、昨年度の農協調査、流通調査、農家アンケート調査に続き、本年度は農家調査を実施し、アンケート調査の快適と農家調査結果をもとに6月に現地中間検討会を実施した。さらに現地での議論を踏まえ、最終的な提言を行った。なお、本事業の研究成果については「地域農業研究叢書」として公表する予定である。
千歳市の現在の農業振興計画(グリーンライフ千歳)が平成12年度をもって完結するので、平成13年度以降における千歳市農業の振興を図るための「(仮称)新千歳市農業振興計画」と5ヵ年の実行計画の策定が求められている。このため、関係機関調査、抽出農家の個別聞き取り調査及び営農意向アンケート調査を実施し、これらの結果を基に、千歳市農業の現状分析、問題点の把握、解決すべき課題の抽出、及び新たな展開方向の整理を行った。