農業者の自主的研究会は、これまで各地で数多く設立されてきた。その中には地域農業に積極的な影響をもたらした例も少なくない。研究会活動は農業技術の普及や経営改善を進めるためのオーソドックスな手法であった。
しかし、情報の伝達ルートが狭かった時代に比べ、今日では地域を基盤とする研究会活動を行うことは次第に難しくなってきている。農業経営活動の個性化、情報ソースの多元化といった傾向のなかで、研究会活動に対する関心は低下している。
その一方で、最近目覚ましい成果をあげている研究会がある。そうした研究会は、従来の栽培試験や簿記記帳を中心とする研究会と異なる特徴をもっている。本年は別海町の「マイペース酪農交流会」の成果と経過を現地研究者から聴取した。また、他の一部の研究会について、次年度計画を視野に入れた聞き取りを実施した。
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今日の農協は、WTO体制下での農畜産物貿易の自由化、金融の自由化の中で経営基盤を掘り崩されており、収益性の向上が焦眉の課題となっている。金融自由化への対応として、農協は合併により貯金を中心とした事業規模の拡大を図っているが、「日本型ビッグバン」導入後、金融事業による収益確保は困難になることが予想される。さらに組合員の多様化と一部上層農家及び中堅農家の「農協ばなれ」による系統利用率の低下も大きな課題である。こうした課題に対し、農協の収益基盤を経済事業にシフトさせ、農業振興の成果が農協経営に反映する事業方式のあり方を検討することが求められている。こうしたことから、道内の優良農協の事業内容と経営構造を検討することで、農協の対応方向、ひいては在るべき姿を検討し、方策を提言するため「農協問題研究会」を組織した。
初年度は、稲作、畑作、酪農の地帯別に各指標を用い、農協経営、事業構造の統計分析を行った。また、現在農協の抱える諸問題に対し、主体的・積極的に対応している農協をいくつか抽出し、事例的に調査を実施した。昨年度は5回の研究会を開催し、前年度の統計分析及び各種統計指標に基づき稲作、畑作、酪農、野菜・他の地帯区分別に北海道内の優良農協を選定した。それをもとに信用・共済事業の収益性や、購買・販売事業の収支構造、営農指導事業も含めた各事業の関連について調査を実施した。本年度は9回の研究会を開催し、昨年度の調査結果の分析及びこれまでの研究成果の総括から「北海道における農協問題の特徴」を析出するとともに、事業構造を中心とする農協経営対応について取りまとめを行った。
なお、研究成果については、地域農業研究叢書として公開する予定である。