これまで本研究所では、北海道農業に関わる基本問題・基本対策についての研究を蓄積し、それらを政策提言に活かすことを目的に自主研究に取り組んできた。具体的には「北海道農業の生産構造」、「農村の生活・文化及び環境整備」、「農協問題」といったテーマを設定し、調査・分析を行い、その成果を著作物・報告書として公表し、関係機関が策定する諸施策に影響を与えてきた。
平成19年度も、その一環として2つの研究課題に取り組んだ。その1つが、研究会の開催を通じて実施した「北海道農業の課題とその発展方向の検討」である。現在、北海道農業が直面している緊急課題に係るテーマを設定し、そのテーマに精通している研究者を道外から招聘してご報告いただき、研究会出席者とともに議論を深めながら各テーマに関連する課題並びに今後の展望について検討した。研究会への出席は道、北農5連、その関係機関、研究者の方々にお願いした。
研究会は4回開催した。この研究会の記録は、機関誌『地域と農業』への掲載、並びに『地域農業研究叢書』への取りまとめを通じて公表する予定となっている。
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北海道の農業は、都府県のそれとは異なり、基本法農政の施行以降、一定の規模拡大を実現した。しかし、他方で農産物の輸入自由化、それに伴う農産物価格の下落の影響を受け、農家数の激減、過疎化の進行、農地面積の減少(耕境後退)等といった厳しい局面にも直面している。
また、平成17年には品目横断的経営所得安定対策の担い手要件が明らかにされたが、大規模経営の形成が進まない水田地帯や「限界地」を含む中山間地域においては、この要件を満たす経営が必ずしも多いとはいえない。そのため、このような市町村では、農業のみならず地域そのものの存続さえ危ぶまれているのが現状である。一般に北海道は品目横断的経営所得安定対策の担い手要件を満たす経営のシェアが高いといわれているが、中にはそうではない市町村も存在するのである。
一方で、地域農業の再構築を図り、こうした危機を乗り越えようとしている市町村が道内においても散見されるようになってきた。その多くは「限界地」に位置しており、作業受託組織、農地保有合理化法人、農地の受け皿となる農業生産法人等といった様々なシステムを構築し、何とかして地域農業ひいては地域を維持しようと努めている。
本自主研究では、こうした地域農業の支援に関与するシステムの構築にいち早く着手している市町村並びに農協に着目し、その意義と課題について整理し、後退局面にあり、かつまた「限界地」を含んでいる北海道における地域及び地域農業の維持・発展の方向について考察することを目的としている。具体的な研究課題として、1)農業構造の変動の把握、2)地域農業維持・発展システムの発掘調査、3)地域農業維持・発展システムの現状とその類型化、4)地域農業維持・発展システムの実態調査、5)地域・地域農業の維持・発展方向の検討という5課題について、平成19年度から3ヵ年かけて取り組み、平成21年度末までに一定の研究成果を取りまとめる予定である。なお平成19年度は上記の中から2)について既に着手している。平成20年度は1)・3)・4)の3課題、平成21年度は5)及び全体の総括について実施する予定である。
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