北海道においても農業構造の基本的な枠組である「担い手」と「農地」が変貌している。全道の総農家戸数が5万戸を下回る状況にあって、この問題は、全道平均的に広く存在しているのではなく、地域によってかなりの温度差を生じながらも、農家の急激な高齢化と世代交代の時期を迎えつつある。一例をあげれば、総じて高齢化が進行し後継者が少ない(農地の出し手が多く、引き受け手が少ない)空知や上川の稲作地帯がある一方で、後継者が比較的確保され、農地の出し手の少ない十勝や北見の平坦部等とでは大きく様相を異にする。
人と農地の問題は、農家継承や農地の流動化による規模拡大を基調の問題としながらも、作物選択や営農技術、農機の開発等のさまざまな課題が内包されている。そして、この問題は、家族労働・家族経営に支えられながらも、法人経営や第三者継承による新しい経営形態の展開も見られる。
政府は「人・農地プラン」や「六次産業化」に続き農地中間管理機構や日本型直接支払制度の設定に加え米政策の大幅な見直しを実施した。新しい農政が本道農業の担い手育成や産地形成にどう影響するか、今後、検討を要するところであり、本道農業の持続的な発展の観点から、政策提言の糧となるよう、以上の状況をも視座においた研究が必要である。
本研究課題については3年間の研究で、過去2か年は道南地域や上川北部地域を対象に調査研究を進め、担い手への農地集積や輪作体系の確立、農作業支援組織の活動状況を整理し、その報告内容は学会誌に掲載された。本年は、それら対象地域の補足調査を行い、3年間の調査研究の成果を報告書に取りまとめた。
高齢化と人口減少は日本社会の抱える非常に困難で深いテーマであるが、それに加えて北海道の場合、府県とは違った農村社会形成の歴史を踏まえる必要がある。府県の農村集落問題と同じ対応策のアプローチを取るのではなく、北海道の農村社会の独自性を強く意識した対策が必要である。高度成長期の北海道の農村は農業開発を推進力に様々な問題を解決し農村整備を進めてきた。農業を中心とした環境整備によって電気や道路、除雪等の基本的な生活条件の整備が進み定住空間が整った。しかし、こうした北海道型の農村の開発モデルの有効性は失われている。農業生産の急激な伸びは難しく、生産物の多様化が増している。農村社会の混住化が進み、農業開発で全ての課題を解決することは困難となり、高度で豊かな農村生活をしたいという住民の希望にも十分に応えられない。加えて、北海道の農村の特色である散居性を今後も維持できるのかという問題もある。
本研究はこうした問題意識に立ち、北海道の農村集落の定義や集落コミュニティの内容を分析・整理しつつ、府県の農村集落対策の取組みや道内の先進事例を調査・分析して、北海道の農村実態に即した対応策を明らかにすることを試みるものである。
平成25年度は北海道の集落問題の専門家による研究班を設けて、府県の専門家、実践家を招きその取組みを聴取し意見交換を行った。また、道内の先進事例調査を行った。平成26年度は北海道の集落問題に根本的課題として自治的機能の欠如があることや、その解決には「農事組合的」体質の改革が必要であること、及び集落の生活環境創出に向けた道総研の対策手法の開発計画について認識を深めた。調査期間を1年延長して平成27年度も調査研究を継続し、府県の農村集落対策の内容を北海道の農村集落の実態にあった対策へと再構築し、北海道の農村集落問題の解決策の提言を試みる予定である。
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今年度は、平成26年2月28日現在、北海道における六次産業化総合化事業計画が認定された件数は丁度100件となっている。その後もこれまでに逐次認定されてきているが、とりあえず平成23年度から25年度までの100件について、申請者の農業経営内容及び六次産業化のあり様についての分析を試みた。
総合化事業実施主体の組織内容についてみると、個別農家は18件、会社形態は72件、あとは農事組合法人2件、農協8件となっている。会社形態72のうち株式会社が41件、有限会社等その他法人経営が31件となっている。
とくに株式会社について各社のHP等を参照すると、半数強がすでに大手の農畜産物加工販売業者とみられるが、あとの半数弱については実質的に一戸一法人とみられ、有限会社などその他法人経営も一戸一法人の形態が多いといえる。
このように、六次産業化という切り口で北海道農業の動きを探ると、大手の農業生産法人にみるように事業規模や事業部門の拡大を意図した展開と、個別経営展開の延長上で、家族労働力プラス雇用あるいは地域の有志同士で有限会社化などを図り、単品ながら良質化でブランド化によって、いくぶんマイペースではあるが、消費者に直接働きかけていくような農業展開という、二つの動きのあることを把握することができた。
今後は、六次産業化に取り組もうとする農業経営者及び支援者に資するべく「六次産業化参入」に関する事例の紹介、参入モデル提示などに取り組む予定である。
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TPPが国内農業に及ぼす影響については、公的機関や大学教員の会の試算が公表されている。また、北海道の関連産業への影響では、産業連関表以外の手法によるシミュレートを受託研究で実施した。
他方、液状乳製品への影響では公的機関と異なる見解が道内の農業団体や当研究所の受託研究の中で指摘されている。道産飲用牛乳でさえ府県への流通システムが未確立なら負の影響が広がる等、本道の農畜産物へのTPPの影響の全体像は必ずしも定まっていない。
TPPは古典的な国際分業論に基づく関税撤廃ではなく、グローバルな企業に事業環境を整備・保証する新たな貿易・資本のルールづくりといわれている。あまりに野心的で全加盟国の国益を高めるわけでもないため合意は容易でない。日本では政府・与党が秘密裏に行った重要5品目等の関税撤廃の影響検証や、重要5品目の586品目の全ては守れないとの担当閣僚の発言、牛肉・豚肉一層の関税削減、ミニマムアクセス米の米国向け特別枠の設定報道など、危機感が高まっている。
そのため、本事業では関税撤廃が本道農業と関連産業に与える多大な負の影響について他の研究の知見から情報収集するとともに、食品の安全・安心基準やTPPによる農業政策への影響などの情報収集と整理を進める。また、平成26年度は、関税と関割制度はあるものの経営所得安定対策の対象外の雑豆を事例に十勝における生産実態調査を実施した結果、豆作は、農作業面では作付を後押しする条件が整いつつあり、価格面でも他作物の収益低下に伴い作付選択される条件が増しているものの、金時の色流れ等、生産面の安定性評価、品質・流通・価格問題とその評価が必要である。そして、輪作作物として雑豆の作付安定を図るには生産振興のための政策支援、特に雑豆関税の維持が重要になる。以上の調査内容について報告書を整理作成する予定である。