本研究では、近年の農畜産物流通における新たな動向を包括的にとらえ、道内外の先進事例を調査し、農業者やJAが六次産業化・農商工連携を展開する際の留意点の整理、提言に繋げていく予定である。
本年度は、計5回の研究班会議を開催した。初年度は具体的な事例調査を行い、その情報共有に努めた。農畜産物流通における近年の動向について、各分野の研究者・実務者より事例報告を受け、メンバー間で協議・分析した。具体的には、米流通構造の変化、北海道有機農業協同組合の活動経緯、観光と農業の関わり、道内における小麦事業の展開経緯、学校給食における食材調達構造等である。
いずれの報告も本研究テーマに関連の深いものであり、次年度以降のより詳細な分析につながる基礎調査として位置づけられる。今後は、引き続いて個別事例の調査を行うとともに、分析視点の検討等の協議を進める予定としている。
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本研究の目的は、第1に北海道の農村開発に対応した農村の生活様式を生活史として明らかにすること、第2に、そのなかで様々に展開を見せてきた農協の生活関連事業の成果(生活インフラの蓄積)を「運動」の側面にも注意を払いながら明らかにすることである。
北海道農村において生活インフラが整備される過程を見る視角として、本研究では、1)農協による事業(ハード・ソフト両面)、2)生活改善事業、3)公民館形成史の3つを設定した。本年度は各視角に関連する事例について、計3回の研究班会議を開催し、研究班で情報を共有した。具体的には、農協の生活購買事業の展開、北海道における農業改良普及事業の展開、北海道における生活改善事業の推移とその社会的役割、富良野東山地区における農事組合の性格の変化、北海道(特に置戸町)における公民館形成史についての報告のほか、参考事例として、韓国における農村生活改善事業の活動経緯等が報告された。また、12月に札幌市内で開催された第66回日本農村生活研究大会にて、本年度の成果の一部を報告した。
次年度は、これまでの事例調査を検討するとともに、上記3つの視角を有機的に結び付けるために現地調査も視野に入れて取り進める。
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本調査研究では、道内でも特に准組合員数の多い農協の実態調査を通じて、准組合員の実相把握を図るとともに、農協の准組合員対応の現状と課題を明らかにし、さらには、准組合員の利用規制の違法性・不当性に関する識者の主張を整理・提示することで、これからの准組合員対応のあり方のほか、総合農協の強みや地域社会・経済におけるJAグループの役割を明確化することを試みた。
その結果、今後の准組合員対策の方向性と課題として、1)サポーター550万人づくりと准組合員対策の必要性、2)准組合員の実態把握と「声」を集める仕組みづくりの必要性、3)准組合員向けの広報誌やイベントの意義、4)総合事業利用の推進と「農協らしさ」の追及、5)「参加」の意味と「参加」の仕方を考える必要性、6)JAグループ総体で准組合員対策を行っていく必要性、7)20~30代を中心とする若い世代への対策を行う必要性、を指摘し、北海道の農協だからできる、正・准組合員の新たな関係づくりに関する提言を取りまとめた。
本調査研究では、これまでに展開されてきた消費者交流事業の実例を調査し、その類型区分を行うとともに、事業が農業生産者やJAの農業生産や流通、並びに消費者や地域住民に与える影響等を分析し、今後の交流事業の方向性を考察することとしている。
2年目となる本年度は、昨年度のコープさっぽろに引き続き、富良野地区のA農園、ホクレンくるるの杜、札幌市内で有機農産物の販売に取り組むB社が行う交流事業について報告を受ける等、事例研究を行い、これらの事例から交流事業の取り組みの効果やその要因、今後の展開に向けてのいくつかの課題を整理した。
次年度は、現地調査等も含め報告事例の効果分析等の検討を深める予定である。
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本調査研究では、特徴的な取り組みを見せるJAふらの管内を調査対象とし、野菜作主幹経営における雇用労働力の実態と経営内での位置づけを明らかにし、雇用労働力の変化に伴う経営展開の方向と地域農業維持のための示唆を与えることを課題とした。
その結果、1)雇用労働力は、施設野菜経営では管理・収穫作業を行う重要な労働力であるものの、畑作主幹経営にとっては、選別・箱詰め作業など、品目・作業を限定して利用されている。2)特に大規模畑作経営においては、農業経営の労働力配分において、作業委託が重要な意味を有している、ことを示唆した。
また、収穫作業を委託することにより、家族労働力の労働負担が緩和されたり、機械投資にかかるコストが削減されたりするといったメリットが存在しており、既に経営の重要な柱となっていると考えられるとともに、これらの作業委託が行われる作物の多くは加工用途となっており、JAによる加工事業の展開は、収穫作業請負と連動して、農家側の労働軽減と安定した価格での取引による経営の安定、JA側の原料野菜の確保というWin-Winの関係を構築していると考えられることを指摘した。
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